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最悪の予感 パンデミックとの戦い

著者:マイケル・ルイス
発行元:早川書房

 

最悪の予感 パンデミックとの戦いのまとめ

この本は、今なお現在進行系である新型コロナウィルスのパンデミックを扱った本である。しかし、この物語のスタートは2020年1月より、はるか前となっている。「マネーボール」で有名な著者、マイケル・ルイスアメリカを謎の感染症が襲い、パンデミックに襲われるであろうという仮説に基づいて、取材を始めていたのだ。一番古い話は2003年、ローラ・ダグラスという登場人物の話から始まる。すごいな。原稿を書き始めたのはもっとあとだったとは言え、しっかりこの状況を予想して、本書を書いていたのだ。いや、予想はしていなかっただろうな。トランプ政権内にも、パンデミックに対してどれだけ準備がなされているのか?をちゃんと調べている人がいる、ということを把握していたんだよな。そして、その予感が当たってしまった、と。本書はアメリカ政府内の出来事についてまとめられたものであるけれど、そのままそっくり、日本政府の出来事として考えることもできますよ。いや、そのままそっくりじゃないな。日本政府の対応のほうが悪いな。

 

最悪の予感 パンデミックとの戦いを読んだ理由

「今の時代こそ読むべきだ!」という、世の中の声に押されて

 

最悪の予感 パンデミックとの戦いで仕事に活かせるポイント

筋を通す、信念を通すことが何よりも重要なのかもしれませんね。

 

最悪の予感 パンデミックとの戦いの目次

はじめに 失われたアメリカ人
第1部
プロローグ グラス越しの景色
第1章 ドラゴン
第2章 保健衛生官の誕生
第3章 パンデミックを憂える人
第4章 止められないものを止める
第5章 千里眼
第2部
第6章 赤電話
第7章 アマアチュア疫学者
第8章 マン渓谷にて
第9章 LG
第3部
第10章 システムのバグ
第11章 偽りの花壇
エピローグ 不作為の罪

 

最悪の予感 パンデミックとの戦いの感想

パンデミック。この言葉が一般的になって2年以上の月日が過ぎている。まったくもって、一般的じゃなかった言葉も、新型コロナウィルスのお陰で、普通の言葉となってしまった。流行語大賞が取れてもいいくらいに。未知のウィルスが、世界中に広まり、何十万という単位で死者が出るなんて、3年前は、誰も考えていなかっただろう。

いや、考えている人々はいたのだ。本書に出てくる、登場人物は「アメリカを未知のウィルスが襲い、パンデミックが起きる」と準備をしようと、していた人々なのだ。100年毎に感染症の大流行が起こる。スペイン風邪の大流行から100年がたとうとしている今、パンデミックに備えていたほうがいいはずだ、と。

マネーボール」と同じように、一気に話に引き込まれる。なにもない時は何しているのかわからないというのは、縁の下の力持ち的なポジション、全てに通じるんだな。冒頭、何度も、自分でうなずいてしまった。

こんなことを書いている私だって、CDCなんて、新型コロナウィルスのパンデミックがなければ、知ることもなかった単語でしょう。そして、アメリカの公衆衛生が、どのような仕組みとなっているのか? なんて、気にかけることもなかったでしょう。

「でも、安心してね。日本も、負けず劣らず、ひどいから」

これも、本書を読んでいる期間中、何度も何度も、頭のなかに浮かんできたフレーズだ。CDCも大概だけれど、厚労省はもっとひどいよ、と。ファクトに基づいた判断、数字に基づいた判断、科学的な判断が、全くできないのだもの。それらが、できるだけ、アメリカはまともだと思う。

ただ、不思議に思うのは、核攻撃と同じくらい、生物化学兵器の攻撃を想定しているはずのアメリカが、こんな後手後手の対応をしていたってことだよな。天然痘ウイルスとかばらまかれたら、アメリカは、終わってしまうぞ。もしかすると、CDCとは別にアメリカが軍の中に感染症対策組織があったりするのかしら? そういうことが想像できるだけ、やはり、アメリカは、まともだよな。

そんな愚痴をこぼしても、なかなか新型コロナウィルスの大流行は収まらないのですがね。

しかし、すごいタイミングで発売され、すごいタイミングで日本語版が出版されたよなぁ。

 

 

タイトル:最悪の予感 パンデミックとの戦い
著者:マイケル・ルイス
発行元:早川書房