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隠れたキーマンを探せ! データが解明した最新B2B営業法

著者:プレント・アダムソン、マシュー・ディクソン、パット・スペナー、ニック・マーソン

訳者:三木俊哉
日本語版監修者:神田昌典/リブ・コンサルティング

発行元:実業之日本社

 

 

隠れたキーマンを探せ!まとめ

B2Bマーケティングというか、B2Bの営業で何よりも重要になるのは会話をする相手を見極めるということと、「ワタシが貴方に提案できる価値は、貴方の課題を解決します!とアピールして、現状維持を求めるお客様の心を変えるってことなんだな。

 

隠れたキーマンを探せ!この本を読んだ目的

What:最新のB2B営業法を知りたかったから
Why:日本でB2Bマーケティングの話が一般的になってきたけれど、本場アメリカではどんな事が行われているのか?を知りたかった
How:モビライザーをターゲットにして、コマーシャルインサイトを触れるようにコミュニケーションを行うダネ

 

隠れたキーマンを探せ!目次

監修者まえがき(神田昌典
序文
はじめに
第一章 顧客コンセンサスの「暗部」
第二章 モビライザー
第三章 「忘れさせること」の効能
第四章 コマーシャルインサイトの構築
第五章 コマーシャルインサイトの活用
第六章 モビライザーへの「指導」
第七章 2重類の「適応」
第八章 コンセンサス想像の「支配」
第九章 集団的学習(コレクティブラーニング)の実践
第十章 チャレンジャー・コマーシャル・モデルへの移行

 

隠れたキーマンを探せ!感想

営業とマーケティング不都合な真実

本書のキーワードは「モビライザー」と「コマーシャルインサイト」なのだ。

「モビライザー」とは、購買決定に関与する人であり、「コマーシャルインサイト」とはモビライザーを突き動かすモノなのです。

 

そんなモビライザーとコマーシャルインサイトについて教えてくれるのが本書ですが、営業やマーケティン宇に関する不都合な真実を教えてくれるという裏目的もあります。不都合な神事てゃ、ドキドキしますよ。

 

たとえば、フリーミアムモデルでは、市場の約20%程度しかカバーできないことが、わかってきた。しかも、その領域は、契約単価が低く、またサービス提供するための労働があまりにも煩雑。だから忙しくなるのに、儲からない。

 

大きな企業と取引を行い、大きな利益を上げるためにABMがブームになっている。

だからなんですね~と。

 

で、そのABMもうまくいっている話をなかなか聞かない。なぜかと言えば、購買決定に関わる人が想定より多く、アカウント単位でターゲットを絞り込んでも、やることが非常に増えてしまうからです。

 

ちなみに、いま購買決定に関わる人数は、平均5.4人。つまり、DMUは平均5.4人もいるということなのだ。コンプライアンスや、株主利益のために、購買意思決定に関わるメンバーが増え続けているのである。そして、購買プロセスに介入する人の数が増えていることが、「客が買わない理由」の大きな1つとなっている。

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参考:隠れたキーマンを探せ!

購買意思決定に関わる人が増えたと言うこともあり、最近のB2BマーケティングはB2P(Business to People)マーケティングに移行してきている。たとえ、B2B購買の世界であっても、購入するのは企業でなく人なのだと。しかし、B2Pマーケティングをしっかりと実行しようとするのであれば、ターゲットとある人たちのことをもっとよく理解し、彼らともっと上手につながる必要がある。そして、今日のB2B業界において、購入するのは人の集団であるという考えも正しいのだと。

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参考:隠れたキーマンを探せ!

そして、購買プロセスが57%終わった段階で、企業担当者はサプライヤーの営業にアプローチする。そして、購買プロセスがスタートしてから37%の地点で、組織内の対立が最高潮に達するという。このタイミングでは、新サービスの導入を起案した人が、社内の各関係者に稟議や、根回しを始めるタイミングであったりする。私から私たちに問題が広がるタイミングだとも言う。

 

私から私たちに問題が広がるタイミングでコンフリクトが起きるのは、普通のことだという。心理学用語で「メンタルモデル」というのだと。異なる部門や地域に属する3人がおり、それぞれのメンタルモデルで各人が各人の目標、優先順位、手段、指標を持っている。そのため、それらが機能不全の原因となっているのだといいます。

 

私から私たちに。個から全体に広がるステップ、つまり顧客の購買ステップは、次のようになる。①顧客の現状→②新たな行動に挑戦しようとする個人の意向→③質の高い取引のための集団コンセンサス。個人の支持が集団の合意に進化しなければ、製品の購入はない。つまり、サプライヤーは関係者と協力して、他の4.4人へ橋を架け、私から私たち、個から全体に移行しなければならない。そのためには、メンタルモデルを克服しなければならない。これはサプライヤー企業側の営業担当者にも、全面的な変化を求める。営業担当者は個々の関係者と自社をつなぐのではなく、関係者同士をつなぐようなやり方に進化しなければならないのだ。

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参考:隠れたキーマンを探せ!
7つのタイプに分類された顧客タイプ

では、どうすれば自社をサプライヤー企業として採用してくれるのか?と言う話なのですが、その理由第1位は「サプライヤーに対する我が社での幅広い支持」なのだ。価格でも、ニーズに適追いしているでもないのだ。ここからも、購買プロセスに関わる5.4人からの支持が必要だと言うことがわかるのだ。

では、この5.4人にたいしてどのようにアプローチをすればいいのだろうか?本書ではアプローチ方法を行うために顧客関係者を7つのタイプに分類している。この分類が、1つの大きなポイントでもあるのです。

【ゴーゲッター】やり遂げる人
他者の良いアイディアを支持する
つねに求められる以上の成果を出す
ミスから学び、進歩する
[強み]
容赦ない実行力
曖昧さへの対処が上手(構造を築く)
チームプレイヤー
[弱み]
先見性に欠る
ストーリーを語れない
感情より合理性を重んじる
[どうすべきか]
組織のベネフィットを優先する
ビジョンを与え、そのビジョンを伝達させる

 

ティーチャー】ビジョンを売る人
新しい知見を求める
同僚や幹部から意見を求められる
他者の説得がうまい
[強み]
説得力がある
アドバイスを提供する
情熱がある
[弱み]
根拠がないと思われやすい
プロジェクト管理が苦手
気合のマネジメント
[どうすべきか]
彼らのビジョンに従う。必要に応じて微調整
明確な計画とスケジュールを提供する
暫定的な締め切りに従わせる

 

【スケブティック】証明を求める人
不透明なプロジェクトを危険と見なす
影響力の強い関係者を破壊的なアイディアに備えさせる
変革にはまず小さな成功が必要だと考える
[強み]
この人が賛同すれば、みんなが耳を傾ける
他者に変化への準備を促す
正確さを求める
[弱み]
曖昧なのが苦手
慎重居士
アイディアではなく計画がコミュニケーションの手段
[どうすべきか]
切迫感を持たせ、行動を起こさせる
確実堅固なプロジェクト計画を与える
説得力のあるストーリーを与え、他者と共有させる

 

【ガイド】何でもしゃべる人
ベンダーには手に入りにくい情報を提供する
ベンダーと話すときは真実を述べる
情報は公平に分配する
[強み]
会社のことをよく知っている
役に立つ
率直
[弱み]
行動的ではない
影響力が小さい
他のサプライヤーにも協力しそう
[どうすべきか]
できるだけ多くの情報引き出す
「モビライザー」と勘違いしない。「ガイド」は仕事をやり遂げない。

 

【フレンド】いっしょにいたがる人
接触しやすく、販売員との会話を愉しむ
販売員と同僚のネットワークを築く
販売員に惜しみなく時間を割いてくれる
[強み]
時間をとってくれる
他の人との打ち合わせを設定してくれる
[弱み]
めったに買わない。それでも電話に出る
いつも役に立つ話とは限らない
他のサプライヤーにも協力しそう
[どうすべきか]
「フレンド」に打ち解けすぎない。本当に重要な情報を見逃し、時間の無駄になりかねない

 

【クライマー】自分のことばかり考える人
プロジェクトから個人的利益を得る
リスクをとったことに対する個人的報酬を望む
成功談を話したがる
[強み]
野心的・意欲的
抜け目がない
欲しいものは必ず手に入れる
[弱み]
信用がない
何か企んでいると思われる
自分にリスクがあると思ったら、すぐ手を引く
[どうすべきか]
「クライマー」が必要だと思うときは、個人の成果にフォーカスする
慎重になる。信用のない人の企みに巻き込まれたら、裏目に出かねない。

 

【ブロッカー】
安定そのものが目標だと考える
改善プロジェクトは気が散ると考える
めったにベンダーを助けない

 

 

この中から、敏腕営業が探し求めているのは①組織全体で変革を推進し、②同僚の間で合意を形成することができる顧客関係者である。それは「ゴーゲッター」「ティーチャー」「スケプティック」である。この3タイプを本書ではモビライザー(動員者)」と定義しています。

 

モビライザーを惹きつけるコマーシャルインサイト

「では、このモビライザーにアプローチしよう」という話になるのですが、平均的な営業マンにとって、モビライザータイプの顧客は、とっつきにくい嫌な客になることが多いのだ。何しろ、話の中心は売る側のソリューションの話ではなく、顧客企業の課題が話題の中心になるのだから。会社から教えられたトークスクリプトを暗唱するだけでは、モビライザーと仲良くなれないのだから。

 

そして、モビライザーにモビライズ(動員しよう)という意気込みだけ会ってもうまくいかないのだ。合意形成プロセスを実質的に「支配」し、集団を合意に導く支援をする必要が出てくるのだ。マーケティングも、営業も、コンテンツや、アプローチの「適応」を通じて合意形成プロセスの「支配」をサポートし、個人から全体に合意形成が進む後押しをすることが重要になるのです。

 

モビライザータイプの顧客に「なかなかやるね!できる営業担当者だ!」と思わせる(思ってもらう)にはコツがあるのだ。以下4つのポイントを含むコンテンツを作るのだ。

①モビライザーの注意を惹きつける
②行動変革を指示したいと彼らに思わせる
③共通のビジョンのもと、他の4.4人の支持を集めさせる
④そのビジョンをきっかけに、顧客にサプライヤー独自のソリューションを想起させる

なお、この特別なコンテンツには「コマーシャルインサイト」という名前がついている。普通のインサイトじゃないと言うことに注意。

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参考:隠れたキーマンを探せ!

で、このコンテンツは、どこをきっかけに作っていけばいいの?と言う話なのですが、それもしっかりと本書では定義されているのです。この2つの観点からコンテンツを作りなさいと。

 

①顧客のビジネスについて新しい魅力的な情報を教える
②なぜ行動を起こすべきかについて、説得力ある理由を顧客に提供する

 

自社ならではのベネフィットを探るサプライヤーは、次の3つの問いに答えなければならない。
①我々は何が得意か?
②我々だけが得意なのは何か?
③我々独自の強みのうち、持続可能はモノはどれか?

 

優れた営業と優れた企業は、顧客の現在のメンタルモデルを、その行動を変えさせるためのレバレッジポイントととらえている。だから優れたサプライヤーは、自社のソリューションの利点について顧客と話し合うのではなく、顧客の現在の考え方について話し合うのだという。

 

そんな企業のコマーシャルインサイト設計に弾みをつける4つの質問はこれです。

問い1 我々ならではの持続可能な強みは何か?
問い2 そんな独自の強みの中で、顧客によく認識されていないものはどれか?
問い3 顧客が彼ら自身のビジネスについて十便に理解してない点(その性で我々独自の持続可能な強みに気づいていない点)は何か?
問い4 顧客のビジネスについて何を考えてあげれば、彼らの現在の認識を考えられるのか?

 

そして、コンテンツでモビライザーを指導するための3つのルールはこれになるという。

ルール1 すべてのコンテンツはコマーシャルインサイトに何かしらつながってなければならない。
ルール2 それ自体が型破りでないコンテンツは、型破りなコンテンツに直接結びつかなければならない。
ルール3 それ以外のコンテンツは破棄しなければならない。あるいはそもそも作成してはならない。

 

で、そんなモビライザーを見分ける方法こそ、本書のきもかもしれない。244ページに記されているチャートが、すごくいいですね。このチャートを知るだけでも、この本にお金を払う価値があります。ちなみに最初の質問は「刺激的なインサイトを提示する」こと。この提示した内容に対して「挑戦的・刺激的な質問を返してくるのか?」と言うことが重要。これで、すべてが見えてきます!

 

そして、さらにこの質問を投げかけるといいとのことです。

「御社の現状を調べて、見解を聞かせてください」といった宿題を出す。宿題をしなければ危険信号。できないか、やりたくないかのどちらかだ。

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参考:隠れたキーマンを探せ!

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参考:隠れたキーマンを探せ!


そうだよね。会社全体の問題を考えているという時点で「私たち」って観点があるモノね。そして、実行力があるともわかる。

 

残りの4.4人を巻き込むためのコレクティブラーニング

そして、こうやってモビライザーを見つけたら、どうやって他の4.4人に影響力を広げて、仲間にするのか?という話になります。その4.4人を巻き込む方法として、合意を得る方法として、本書では集団的学習(コレクティブラーニング)を提案してます。コレクティブラーニングとは「関係者がお互いの考え方について話し合い、これを参考にし、まだ認識されていない合意ポイントを探り、社会的規範を築こうとする相互作用プロセス」ですね。なんだか、ワークショップのようですね。質の良いワークショップが、コレクティブラーニングななのですね。そして、ワークショップと同じようにコレクティブラーニングの要も顧客です。しかし、そこにサプライヤーが加入してしっかりとファシリテーションをしないと、会は前に進まないのです。顧客サイドだけで、コレクティブラーニングを行ってもダメなのですね。

 

そして、モビライザーを含む5.4人の意識が同じ方向になったら、合意形成を促していくという。

 

計画を立てる→課題や行動に対する関係者の理解を確認する→関係者の残る懸念を明らかにして対応する→交渉可能な共通の土台を作る→関係者のコミットメントを確保する

 

で、本書のまとめでもある「チャレンジャー・コマーシャル・モデルへの移行」なのですが、どうすればいいのでしょうか?とりあえず、変なことをするなって話なのですが、キーワードは「需要をモビライズせよ」になります。

 

①「直面」と「結合」をもたらすコンテンツプロセスを作る
②「直面」と「結合」を考慮してリードスコアリング基準を調整する
③コマーシャルインサイトとコレクティブラーニングのためにリードを育成する

 

まぁ、購買プロセスに対して、営業がしっかりとサポートしろ。顧客の購買プロセス容易化の背中を押せって話につきるのですな。

もちろん、モビライザーを見つけて。

 

 

 

隠れたキーマンを探せ!  データが解明した 最新B2B営業法

隠れたキーマンを探せ! データが解明した 最新B2B営業法

 

タイトル:隠れたキーマンを探せ! データが解明した最新B2B営業
著者:ブレント・アダムソン/マシュー・ディクソン/パット・スペナー/ニック・トーマン
訳者:三木俊哉
日本語版監修者:神田昌典/リブ・コンサルティング

発行元:実業之日本社