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マンガ「グラゼニ」が大好きな、ウェブ系の何でも屋さんが綴る、仕事とか、読んだ本のこととか、日常とか、世の中に関する忘備録。

マーケティングとは「組織革命」である。

著者:森岡
発売元:日経BP

 

目次


はじめに ひとりでも会社に変化はおこせる!
第一部 組織に熱を込めろ!「ヒト」の力を活かす組織づくりの本質
第一章 USJを劇的成長に導いた森岡メソッド
第二章 マーケティング革命とは「組織革命」である
第三章 理想の組織とは「人体」である
第四章 人間の本質とは「自己保存」である
第五章 社員の行動を変える「3つの組織改革」
第二部 社内マーケティングのススメ 「下」から提案を通す魔法のスキル
第六章 自分起点で会社を変える個人技
第七章 あなたは一体何を変えたいのか?(目的の設定)
第八章 成功のカギはターゲット理解が九割(WHO)
第九章 何が相手に響くのか?(WHAT)
第十章 伝え方の技術(HOW)
第三部 成功者の発送に学べ! 起点となって世の中を変えた先駆者たち
鈴木敏文
秋元康
佐藤章
佐藤可士和
終章 マーケティングの力で日本を元気に!

 

感想

USJを再生させた凄腕マーケターである森岡さんの本。森岡さんの功績を見て「マーケティングだけでなく、アトラクションまで手を入れているのだから成功するよな」なんて陰口を叩く人もいますが、そんなことを言っているから、陰口を叩いている人のマーケティングは成功しないのですよ。

 

事業会社側からプロフェッサーサービス側に転職してきて、もうすぐ8年。この8年でわかったことは、プロファイルサービス側が語るマーケティングというのは、森岡さんの言う狭義のマーケティングがメインなのよね、と。宣伝とか、プロモーションとか、ツールの導入とか。そこだけやっていては成功するわけないよね、と。転職して1〜2年は言われたとおりの狭義のマーケティングばかりやって失敗してましたから、余計に納得できるわけですよ。

 

そんな状況を指して、森岡さんはこのように現状を憂いています。

 

マーケティングは、マーケティングのノウハウだけでは機能しません。専門性に優れたマーケター個人を雇えば、あるいは強いマーケティング触れているのがさえあれば、マーケティングができるようになると多くの人は考えます。しかし現実はそうではないのです。その原因は組織の構造や意思疎通回路が、マーケティングを機能させるようにできていないことです。

 

そして、狭義のマーケティングしか語らないプロフェッショナルサービスの人間を指して「使えないコンサル」とか「理想論だけ語るコンサルはラクで良い」なんて毒づいていた事業会社時代を思い出しましたね。

 

最初はECサイトのウエブマーケターでしたが、気がついたらウエブマスターになってましたからね。全部、自分で面倒を見ないと、自分のやりたいマーケティングができないことに気が付きましたからね。

 

事業会社側でマーケティングを行ってきた森岡さんの真髄が下記のようにまとめられていますよ。

 

マーケティング機能とは何か? これは企業存続に欠かせない「売上を獲得する能力」です。会社におけるこの一連のマーケティング機能の繋がりのことを、本書では「マーケティング・システム」と呼称します。マーケティング部はそのほんの一部に過ぎず、市場調査部や営業部はもちろん、売上獲得に関わる全ての重要機能がマーケティング・システムとして統合的に運用されなければなりません。
ちなみに多くの企業が誤解していますが、商品開発(基礎研究を除くR&D機能)もマーケティング・システムに含まれるべき重要機能です。

 

だから、ハリーポッターUSJに誕生させることができたわけですよ。そこまでやらないと、組織まで変えないとホントのマーケティングはできないわけですよ。

 

組織をいじることの重要さを森岡さんは、再度、ワタシに教えてくれました。

 

無駄な組織論は嫌いなのですが、メンバーにはそれぞれ役割があるという真実を知ると、ちゃんとした組織はちゃんと機能すると信じるようになるのです。全員がエースで4番じゃ勝てるチームはできねーよ、と。

 

組織力とは、個人技とシステム(仕組み)の掛け算

森岡さんの組織論、素敵です。

でも、「そんなのCMOって立場じゃねーと、実現できないんじゃなかろうか?」なんて思ってしまったのですが、森岡さんて、最初は部長だったのね。マーケティング部長。そのポジションでマーケティングの重要さを解き、結果を出して、CMOになり、組織を変えたのね。

 

そんな森岡さんは社内でマーケティングを行う際のフレームワークも教えてくれます。

 

①組織文脈の理解 まずゲームのルールを理解する
②目的 勝つ確率の高い戦いを設定する
③WHO ターゲットは実は2つある
④WHAT 便益も二つそれぞれ明確にする
⑤HOW 言いたいことは相手が聞きたいように話す

 

外資系企業でマーケティングやってきた割には、けっこう、泥臭いことやってきたのね、と感度してしまいました。が、ワタシの知ってる外資系企業も、中はけっこう泥臭いな、と。上司にどう思われるのか?という判断基準でしか動いていない人だらけだな、と。

 

そんな外資系企業とは真逆の企業なのですが、最後の対談でセブン&アイグループの鈴木敏文さんが良いことを言っています。

 

POSデータは、明日のお客様のニーズについて自分で立てた仮説を検証し、売れ行きの速さなどから新しい売れ筋商品についての仮説を持つことに使うものであって、手段と目的を混同してはいけない。

 

流石ですね。鈴木さん。鈴木さんが日本の小売業を一気に進化させましたからね。

 

そんなデータ化について森岡さんは次のように語ってます。

 

私はUSj時代、強烈に消費者から好かれる、相対的なブランドの強さを測定していました。「ブレファレス(好感度)」と呼んでいますが、これを定点観測して、何をやるとどう変化するのか、全部モデル化したのです

 

素敵すぎます。

 

そして、この本にはマーケティング的視点以外にも、ワタシの背中を押してくれることがたくさん出てきます。

 

ひたすら感動と感謝です。

 

チームの生産性を最大化するためには、新人であろつが猫であろうが、戦力として最大能力に応じてその力を空っぽにするのがリーダーとしての役割。必ずその新人の最大に合致する意味のある役割を充ててください。
新人は仕事を知りませんし、失敗するものですから、戦力にカウントしないことは最も安易です。しかしそれではいつまでも新人は戦力になりません。早期投資で早く育成することが、長い目で見ると最も効率が良い。新人の失敗や滞りがチーム全体のボトルネックにならないように、仕事のやり方をしっかり教えることで能力の天井を上げていくのです。

 

 

この考え方は、ワタシに勇気を与えてくれましたね。ワタシの新人育成方法と同じです。「カンダさんは、新人に無茶させすぎですよ」と、たまに言われますが、無茶じゃないんですよ。この方法が最適解なのですよ。

 

また、ワタシがこの世の中で一番嫌いなのが、会社の飲みニケーションなのですよ。酒飲んで仲良くなるとか、ありえないから。酒は仲良い人と飲むものだから。なので、森岡さんのこの意見には、思いっきりAgreeです。

 

さらに、飲みニケーションにも気をつけなければなりません。これも想像力の問題です。部下を理解するために酒を酌み交わすという人は、酒なんて飲まなくても部下は理解できると知るべきです。そもそも仕事は昼にするものです。

 

 

あと、日本企業によくある、作ることに意味がある無駄な議事録についても、気持ちよく切り込んでいるのが、素敵。無駄な形式にこだわって、完成するのが会議終了から1週間とかあり得ないからね。で、森岡さんはそんな議事録ではなく、会議のアクションサマリーを会議終了の当日に出すことを義務付けているのもステキ。私と同じ。ただ違うのは、対応してくれる人と対応してくれない人がいるということ。そのアクションサマリーのないよとは次の通り。

 

①その会議の目的が何だったのか?
②そして結論はどうだったのか?
③結論に至る議論された主な理由は何だったのか?
④結論に基づき、関係者が次に取るべきアクションの明示(誰が、何を、いつまでにするのか?)

これだけをそっこうでまとめて、他部署や上司など一切忖度することなく、自分の理解に責任を持って書いてそのまま一気に関係者全員に出せば良いのです。「内容が皆様の理解と異なる場合はご一報ください」と一行だけ最後に書き添えて。<

 

マーケティングフレームワーク的話は一切出てきませんが、自身の考えたマーケティング戦略を実行するためのヒントがたくさん書かれている本です。