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マンガ「グラゼニ」が大好きな、ウェブ系の何でも屋さんが綴る、仕事とか、読んだ本のこととか、日常とか、世の中に関する忘備録。

胆斗の人 黒四で龍になった男

著者:北康利
発行元:文藝春秋

 

目次

序章 全身これ胆の男
第一章 試練の割り鋲
第二章 稀代の経営者
第三章 怒らず焦らず恐れず
第四章 電気事業再編
第五章 関西の復興を担って
第六章 現代のピラミッド
終章 禹門

 

感想


NHKの人気TV番組「プロジェクトX」や、石原裕次郎主演の映画でとりあげられたことで、皆の記憶に残っている黒部ダム黒部ダムに貯められた水は地下の放水路を通り黒部第四発電所に送られることから黒四ダムと呼ばれている。

 

黒部ダムの建設は戦後復興期の日本において、指折りの難工事だった。だから、プロジェクトXに取り上げられたり、石原裕次郎が主演する映画になったりするわけで。

 

ただ、この本で取り上げられるの話は大破砕帯へのトンネル工事や、冬の黒部峡谷をブルドーザーで越える話ではない。それらはもちろん出てくるが、そんな大工事を企画し、成功の陣頭指揮をとった当時の関西電力社長太田垣士郎にスポットを当てている。

 

城崎生まれのわんぱく坊主であった太田垣。子供の頃、ちょっとした事故で健康を害すが、その後はまた、イケイケの性格に。

 

そんな太田垣がビザジネスの道に目覚めたのは阪急グループの創始者小林一三のもとで働いていたから。

 

小林一三、今となっては大実業家ですが、太田垣が出会った当初は、まだ、伝説の人間ではなかったのよね。生きていたし。

 

ただ、それまでになかったビジネス戦略を描き、実行に移すことで、大きな富を作り続けてきた。今で言うところの孫さんみたいな感じだったという事でしょうか。

 

そんな孫さん的な小林一三のもとでビジネスを学んでいながら、訪れる戦争の時期。統制経済の方が国のためにならない。競争あってこその経済だ、ということを主張しても、時代の流れを変えることはできない。

 

そして、敗戦。その後に迎える復興。

 

電力は国の基礎である。電力の鬼、松永安左衛門の日発分割計画とGHQの日発分割計画。その激しいやりとりよりも、阪急グループの中心人物としてきったはったを行っていた太田垣の生活がすごい。

 

労働組合法、共産主義との戦いの記述こそが、ワタシの目を引きましたね。出てこなかったのは戦艦だけといわれた東宝争議とか、学校の授業で教えるべきだよな。

 

そして、その後、就任する関西電力の社長。そして、迎える黒ヨンダムの建設。

 

太田垣のその胆の、そのど真ん中にあるのがビジネスと安定なんだよな。お金を稼いで、社会に還元する。その柱がブレてない。そして、そのためであれば、どんな状況でも、どんな相手でもひるまず交渉する。

 

そんなオトコに惚れてしまいそうですな。