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最高機密エージェント―CIAモスクワ諜報戦

著者:デイヴィッド・E・ホフマン
訳者:花田知恵
発売元:原書房

 

目次

新時代のエージェント
モスクワ支局の女性工作員
情報源“スフィア”は信用できるのか
接触
スパイ志願の理由
トルカチェフの要求
スパイ・カメラ
機密情報と自殺用ピル
一〇億ドルのスパイ
国外脱出作戦

 

感想

 

この本はアドルフ・トカルチェフというCIAのスパイに関する物語。いや、フィクションではなく、ドキュメントですわ。トカルチェフは実在しているし、トカルチェの肖像画がCIAの本部に掲げられているくらいなんだから、空想の人物ではなく、実在しているし人物だということだ。

 

トカルチェフがどのようにCIAのエージェントとなったというところから、この本は始まっている。書かれている内容は、「ゴルゴ13」や、「パイナップルアーミー」のような話ですわ。ハヤカワミステリーの世界が、この本のなかでは繰り広げられているけれど、その多くは事実なのだ。

 

トカルチェフに関する機密情報の公開期限が来たから。きっと、その期限が来なければ、日本人のワタクシがアメリカのスパイ、それも冷戦絶頂期にモスクワで、ソビエトの機密情報を盗み出すことを仕事にしていたスパイの生い立ちや、日常生活なんて、絶対に知ることなかったのでしょうなぁ。。。と思う。

 

トカルチェフがスパイとしてソビエトの最高機密情報をアメリカに流していたのは1970年代~1980年代。ベトナム戦争で疲弊したアメリカがソレントの緊張緩和を果たす。いわゆる、緊張緩和、デタントと呼ばれる時代ですな。1972年の第1次戦略兵器制限交渉(SALT・Ⅰ)、迎撃ミサイル制限条約、1973年の核戦争防止協定、1975年の全欧安全保障協力会議(CSCE)とヘルシンキ宣言。アメリカはソビエトに歩み寄ったというか、ソビエトアメリカに歩み寄ったというか、そういう時期が過ぎていった。

 

こんな政治の舞台裏で動いていたのがトカルチェフだったわけですな。この時期にソビエトからアメリカに情報をもたらした人物と言ったらミグ25で函館に亡命してきたベレンコ中尉が有名ですが、その影でトカルチェフが動いていた、と。ソビエトの核弾道ミサイルの性能や、ミサイル防空性能を盗み出し、アメリカに伝えていたことで、アメリカは自身の軍事力を削減しながらも、ソビエト以上の軍事力を保ち続けるという荒業を成し遂げることができました、と。

 

国家安全保障に関して情報というのは何よりも重要だということがよーく分かる本ですわな。まさに、事実は小説より奇なりですわ。そして、こういう超トップシークレットな情報であっても、ちゃんと時期が来れば公開するアメリカってすごいわ。

 

 

最高機密エージェント: CIAモスクワ諜報戦

最高機密エージェント: CIAモスクワ諜報戦