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マンガ「グラゼニ」が大好きな、ウェブ系の何でも屋さんが綴る、仕事とか、読んだ本のこととか、日常とか、世の中に関する忘備録。

プロフェッショナル 仕事の流儀 長崎尚志  漫画編集者・原作者 愛と覚悟のヒットメーカー  

編集:茂木健一郎NHKプロフェッショナル制作班
発売元:NHK出版

 

目次

「愛と覚悟のヒットメーカー」漫画編集者・原作者 長崎尚志
人気漫画の陰の仕掛け人
ターニングポイント 一人の男から受け継いだ漫画への愛と覚悟
長崎尚志にとって「プロフェッショナルとは」
クオリアコラム 本気で作れば神は応える 茂木健一郎

感想

 

長崎尚志といえば、ビックコミックスピリッツが絶頂期にあった時代の編集長で、浦沢直樹を発掘し、育て上げた漫画編集者ですね。そして、長崎尚志名義以外、リチャード・ウーや東洲斎写楽(これは、初めて知った!)名義でも漫画の原作を様々書いていたりするのですわ。

 

当然ですけれど、浦沢直樹の「プロフェッショナルの流儀」とともに読んだほうが、倍面白い。

 

でもね、漫画を愛して、マンガに愛された男の話、単独で読んでもかなり面白いのですよね。

 

もう、この御方、マンガの編集者というよりも、マンガのコンサルタントというか、なんというか、ありとあらゆる表現を分析分解して、組み直すことができるわけで、もしかしたら他の編集者もできるのかもしれないけれど、そういうことをフツーにやってのけてしまう事に驚いてしまったりするわけですよ。

 

例えば、泣くという事位に関しても

●どういう化学変化で人が泣くかということを、構造としていくつも覚えている
●Aという人とBという人が、どういう状態にあって、それがどうなると泣けるかというパターンは、どちらかというと数式みたいな形で覚えている

と答えているのですわな。

 

これってある意味すごいことで、最もロジカルに説明しづらい「泣く」という行為をロジカルに説明してしまっているわけで、つまり、「泣く」という行為自体をロジカルに説明できてしまうのであれば、どんなできごともロジカルに説明できてしまうのではないかと思うのですわな。

 

そして、このような「あまりロジカルで説明できないものをロジカルに説明する行為」にかんしてなのですが、実は雛形があるということで

 

物語の形というのは大昔の神話や伝説に始まって、ほとんどパターンは出尽くしているということです。新しい物語って、ないんですよ。それを違う角度から見ることによって、新しくしているだけなんです。

 

とな。

このへんに関しては、ドラマや映画の脚本を語る上でも同じだったりしますな。

 

でも、その雛形を教えてくれなかったりするわけだ。

 

で、この本を読んで一番驚いたこと、得たことといえば長崎尚志にも師匠と呼べる人がいて、その人は林洋一さんという人で、『釣りバカ日誌』や『あぶさん』を生み出した人で、長崎尚志浦沢直樹と組んで連載を始めた『パイナップルアーミー』を守り続けてくれた人なんだということなのだな。

 

林さんの

 

ある歳までは、自分は漫画に食べさせてもらったし、楽しませてももらった。だから、あるろころまでいったら漫画に恩返しをしなければならない。

 

というセリフが身にしみますなぁ。

 

こういう仕事人、かっこいいですわ。