著者:北康利
発売元:講談社
目次
独立記念日
「ワンマン」のルーツ
養父・健三とジャーディン・マセソン商会
気位は高いが間違ったことはしない
親の七光りは嫌いです
雪子と岳父・牧野伸顕
おれのようにやったら三〇くらいでクビだがね
パリ講和会議
夢に終わった高等官一等
満州某重大事件
立ちはだかる壁―GHQ民政局
新憲法たなのダルマも赤面し
鳩山追放
首相就任―「外交で勝つ」との気合を胸に
難航した組閣
米がない!―食糧非常時宣言
「不逞の輩」発言
外套をとれ!―参謀泣かせの選挙戦
昭電疑獄―ケーディス追い落とし作戦
広田弘毅の死
感想
読ませる文体で歴史の偉人を取り上げる、作家北康利の本。
今度は、戦後最高の宰相と呼ばれている吉田茂。その吉田茂の半生にせまる。
吉田茂といえば、白洲次郎を懐刀とし、戦後の日本を独立と導いたことが有名。また、池田勇人をはじめとした若手政治家を育てた吉田学校も有名ですな。
しかし、本書は吉田茂の人生の後半に目を向けたのではなく、吉田茂の人生、その前半にスポットを当てているのが面白い。
本書のタイトルのように、なぜ、吉田茂はポピュリズム=大衆に迎合して人気を煽る政治姿勢に背を向けたのか?
それは、生家の竹内家も養子先の吉田家も、資金的に恵まれていたというのもあるでしょう。
しかし、それなら吉田茂よりも金持ちだった近衛文麿が、おもいっきりポピュリストであることを考えると、その仮説は当てはまらない。
そのような性格は、吉田茂持って生まれての性格なのでしょうな。
「気位は高いが間違ったことはしない」
中見出しにあるように、それが吉田茂の性格であり、それ故にポピュリズムに背を向けていたのでしょうなぁ。
家にも、金にもこだわりはなく、自分の信じた道を進む。
それが吉田茂であり、その気位があったから、日本を独立に導いたのでしょうな。
それと、ものすごいリアリストであったというのもあるのでしょう。
世界中の国々と比較して、日本の国力がどれくらいだったのか?
世界政治の常識はどういうものであったのか?
その中で考えた時、はやりの共産主義や、ファシストはどういう位置づけとなるのか?
たぶん、当時の日本では数少ない、「戦争は外交手段の一種であり、その多交渉と同じである」と知っていたのも変えだけなのでしょうなぁ。
だから、勝ちっぷりと同じように、負けっぷりが大事であることを知っていた。
戦争に負けて、全面降伏をしたとはいえ、それで国家がなくなるわけではないことを知っていた。
本来的な性格と、徹底的なリアリストであったというのが、吉田茂の真髄だったのでしょうな。
そして、そんなリアリストは日本において、吉田茂以降登場していないのが悲しいことですな。