まとめ
丸山眞男の兄・丸山鐵雄の半生を追った本だけれど、ラジオという進行メディアの立ち上がりについても、よくわかる内容だったりしますな。そしてContents is Kingという考え方は戦前、昭和一桁時代から変わりはなかったんだな。
この本を読んだ理由
昭和の芸能史に関する本ですもの。私のライフワーク的な世界なの。そりゃ、読みますよ。
仕事に活かせるポイント
上から、会社から与えられた前提条件をそのまま鵜呑みにしちゃ駄目ってことだよな。自分の意思を通す必要がある。ただ、その通し方にも筋を通す必要がある。
目次
序章 〈サラリーマン表現者〉の精神史
第一章 「筆一本」の時代の終わり
第二章 チンピラの実像
第三章 新たなメディアと不機嫌の時代
第四章 大衆の「声」の発見
第五章 バラエティ番組はこうして生まれた
第六章 「大衆のラヂオ」の帰趨
終章 「われらが時代は去りぬ」
感想
丸山眞男はもちろん知っていた。しかし、丸山眞男は4兄弟で、そのうち三人がメディア産業を縄張りにしていた、なんて知らなかった。父親の名前が丸山幹ニと言って明治・大正・昭和の時代を駆け抜けたジャーナリストであった、なんていうことを知らなかった。
それ以上に知らなかったのが、長男・鐵雄がNHK、つまり日本放送協会の職員となり、「のど自慢大会」を生み出した人だなんてことは、もっと知らなかった。
私の興味は戦前、昭和一桁時代の文化や、生活というところに集まりましたわ。武蔵から、成蹊、そして京大へと進むながれは、21世紀と同じように大学受験をうまく切り抜けるためのテクニックだった、とか。軍靴の音が聞こえるような時代であったにもかかわらず、自由な校風があった、とか。鬼畜米英な時代がもうすぐやってくるにもかかわらず、若者はアメリカの文化を愛していた、とか。ラジオに加入する(今の受信料を払う的な話だな)人も多くいたけれど、辞める人も多かった、とか。
フリーのカメラマンや、監督、作家は、生活が保証されていないなか、安いギャラで自分の表現したいものを求める一方…という流れが本書の本筋だけれど、私には昭和一桁時代の文化の話が、グイグイと心に入ってきた。