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モビリティシフト

 

著者:木南浩司
発行元:東洋経済新報社

 

目次

はじめに
第1部 激動の自動車業界とKSFの変化
第1章 自動車の付加価値の変化
第2章 モノづくりからサービスの創造・社会との融合へ
第2部 KSFを実現するマネジメントとは
第3章 KSFの実現に必要な基本的な考え方
第4章 新たなモビリティ社会のいつ源に必要となるマネジメントとは

 

感想

最近、自動車メディアがつまらない。雑誌でも、Webでも、テレビでもつまらない。
いや、面白いときもある。
それは、21世紀の基準、というか、「現代の価値観」で製造されたクルマを取り上げないときだ。わかりやすく言えば、スーパーカー世代のスーパーカー(1970年代のフェラーリとか、ポルシェとか、ランボルギーニ)を取り上げたときは面白い。

 

そう。自動車が持つ意味合いが変わってきているのだ。
「21世紀に間に合いました」というキャッチフレーズでトヨタプリウスが登場したときから、大きく自動車産業の流れが代り始めたのである。ちなみに、電気自動車自体は、ガソリンエンジン車より昔に登場している。歴史という点では電気自動車のほうが古かったりするのだ。

 

では、何が変わったのか?

 

プリウスの登場により、自動車に環境や、安全、複数のデータ・要素を組み合わせるというのが一般的になってきた。

 

速ければ良い。かっこよければ良い。

 

そんな時代がぷりうすの登場により終わったのである。

 

そこから始まるモビリティシフトの流れを紹介してくれたのが本書。いや、プリウスの時代から云々カンヌンという話は、ない。2020年以降、一般的となる安全技術(センシング技術)と、コネクテッド、シェアリングサービス、そしてEV化の流れと、それに対応するにはどうすればよいのか?をまとめ教えてくれるのが本書である。

 

ちなみに本書の巻頭で「ズバッ」とこのように言い切っている。

 

昨今の自動車を取り巻く変化として、センシングによる安心・安全な自動車の実現、インターネットに常時接続することによるコネクティッドカーの実現、AIなどのテクノロジーによる自動運転の開発、Uberに代表されるシェアリングビジネスの台頭、大気汚染物質排出規制の世界的な潮流とEV化の進展などがあり、いまや自動車メーカー・自動車サプライヤーは猛烈な変革の波にさらされている。 

 

自動車に安全技術はあったとしても(古くはタッカーや、ボルボが売りにしているからね)、コネクテッドカーや、AIの採用、シェアリングサービス、それに電気自動車という軸が、今まで自動車について「語られる」軸であったということはなかった。そもそも「いつかはクラウン」とクラウンを”所有する”ことが人生のステータスであるようなプロモーションをしていたくらいだから”シェアしましょう”何ていう発想があるわけなかったんだよな。

 

なので、そんな20世紀的な価値観で、21世紀的な自動車を紹介するような話が面白い訳がない。
もうさ、自動車の考え方自体が大きく変わっているんだよ。

 

ということも、本書にこうやって描いてありました。

 

自動車産業の方向性
【これまで】自動車大衆化と弊害の時代
モータリゼーション
・利用者へのサービスは非連続/バラバラ
・所有と制約が前提

【今後】自動車を核にした次世代のモビリティ社会
・安心/安全/サスティナブルな移動手段の提供
・いつでもどこでも誰でもの便利さの追求
・人がより豊かになるための移動サービスの普及 

 

いや、まぁ、そうだよね。フェラーリや、ランボルギーニ、ポルシェでさえ「安心/安全/サスティナブルな移動手段の提供」をっていいっ出しているんですが、いやぁ、エンツォ・フェラーリも、フェルッチオ・ランボルギーニも、フェルディナント・ポルシェも、そんな未来が待っているとは思っていなかったでしょうね。

 

単なる自動車好きであれば、「やっぱり、キャブ車がいいんですよねぇ。キャブ車でマニュアルミッションで、バイアスタイヤでってのが”運転している感”が高いですよね」と言えるのですが、仕事が絡んでくると、そうは行かない。

 

センシング(安全技術)、コネクテッド、AI化、シェアリングビジネス(というか、モビリティサービス)、EVという新世代の自動車技術の波の中で生きていかなければいけない。そして、これらが複雑に絡み合ってリウから、質が悪いw.もはやなんだかわからない。本書では新世代のモビリティ社会を実現するためのKSFは「キープレーヤーのちからを集結する」「関係性を高める」「異質なものを繋がわせる」だと言ってますな。

 

センシング(安全技術)、コネクテッド、AI化、シェアリングビジネス(というか、モビリティサービス)、EVのなかで、入っていけそうな領域はコネクテッドと、モビリティサービス。ただ、モビリティサービスはすでにレッドオーシャンと化しているので、参入障壁が高そうなコネクテッドカーの世界を考えてみる。

 

本書ではコネクテッドカーの特徴を下記のように述べている。

 

コネクティッドカーの付加価値は、繋がることでより安心・快適・便利になるということである。自動車がETCを搭載して利便性が認知されて急速に普及したことと同じように、利便性の高い新たなサービスがきっかけとなり、コネクティッド技術を搭載した自動車が急速に広がると考えられる。

 

安心・快適・便利が基本なのね。


いきなり、今いる周辺の広告とかが表示されても「安心・快適・便利」じゃないから、全く意味はないってほどじゃないけれど、ダメダメな結果になるってことなんですね。

 

ただ

コネクティッドカー/コネクティッドサービス開発に求められる要件
①車両とセンター間で通信を行うための通信機器の車両への搭載
②センターでの通信データの送受信
③センターでのデータの収集・分析・リクエストに応じた処理
④リクエストに応じた処理結果に基づき、車両へのフィードバックもしくはサービス活用

 

と、コネクテッドカー自体を開発する参入障壁は高そうので(そりゃそーだ)、つながったその先にあるサービスを考えるほうが現実的ってことですよね。わたし、自動車メーカー勤務でもなければ、通信会社勤務でもないですしな。

 

で、ではその乗っかるビジネスをどうやって考えればいいのかというと、その考え方も描いてある。

 

SNSなど個人の価値観を社会と共有するデジタル社会におけるマーケティングの考え方を踏まえると、新たな人間的価値観を訴求できるようなビジネスを想像することが、次世代の勝者になる可能性が高い。そのような動向の中で、新たなビジネス創造の手段としてUX DesignやHuman Centered Designは特に重要なアプローチである。これらは、顧客が製品やサービスを利用する際に感じる事柄や経験をあぶり出し、本質的な価値を解釈できるようにすることで、新たな製品やサービスを生み出せるようになる。

 

UXとHCD(Human Centered Design)な。

よし、この世界なら、ワタシ戦えるぞ。そして、ここでいうUXとかHCDは「クルマを買わせる」とか「サービスを使わせる」じゃないんだよな。ユーザが抱えている課題を解決するって視点でのUXとHCDなんだよな。

 

ということを、自分でも肝に銘じておきます。


で、最後に。この情報は日本中に広める必要がある。

 

国別に見たときには、安全対策が脆弱な低所得国で高い交通事故致死率を示している。安全に対する取り組みが協力に実施されているスウェーデンは、自動車に搭載する安全整備について世界で最も厳しい基準となっている国の1つであり、人口10万人当りの交通事故死亡者数は世界で最も低く2.7人である。日本は人口10万人あたり4.0人であり、アメリカや韓国の10人に比べると低いが、日本は歩行者の割合が30%を超え、高齢者の割合が50%を超えるという特徴がある。

 

悲しい事故が増えてしまうのは、日本の「道路」が駄目なのと、交通ルールを守る「道徳心」がないからなんだよ。ものすごい狭い道が一方通行でなく、さらに歩行者まで歩けるようになっているとかありえないよな。4メートルを切る道路は一方通行にするとか、必ず2メートルの歩道を設けるとかしないと駄目だよな。信号は最低限、歩車分離式信号機にするとかな。

 

そこは、新世代のモビリティ社会がやってきても同じだな。悲惨な事故がなくなるような時代になってほしい。

 

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