WEB銭の読書やグラベルロードのメモなど

マンガ「グラゼニ」が大好きな、ウェブ系の何でも屋さんが綴る、仕事とか、読んだ本のこととか、日常とか、世の中に関する忘備録。

予定通り進まないプロジェクトの進め方

著者:前田考歩・後藤洋平
発行元:宣伝会議

 

目次

第1章 なぜプロジェクトは失敗するか
第2章 プロジェクトの道具箱
第3章 プロジェクト工学
第4章 プロジェクト請~プ請を使ってみる~
第5章 プロジェクト・エディティングの技術
第6章 プロジェクトの感想戦
終章

 

感想

イキナリ否定形からはいる「プロジェクトを成功に導くための」秘訣本です。
タイトルからして、「あぁ、この人わかってるなぁ」という空気が伝わります。
そうなんですよね。プロジェクトというのは、往々にしてうまくいかない。

 

「えええ!プロジェクトは成功させてなんぼでしょう」なんて思う人は、あまちゃんです。

 

そこは著者もわかっておりまして

 

そもそも計画を立てる段階で、ああらかじめ情報が充足しているということはありません。そのため、要点については関係各所の確認をした上で、多少のバッファをもたせたり、「ここが実現したら、次のステップに進む」のように日次を指定しない形で組んだりします。しかし、そこまで注意をしていても、想定外のトラブルに巻き込まれることも珍しくありません。このようにして、ほとんどの計画は、遅れていくものです。プロジェクトに手慣れた人は、こういうときには「順調に遅れている」と歎くものです。遅れやトラブルを想定し、その範囲内で遂行できた計画は「成功した計画」です。多くの場合は、進めるに従って新たな課題が浮上し、計画そのものの見直しに直面することになります。

 

と、説明しております。
この下りを読んだだけで「だよね~」となってしまいます。


で、この手の本を読んでいると「とはいえ、絵に描いた餅じゃね???」と思ってしまうのですが、そうならないようなロジックが知っかかり定義されています。

 

工学的なアプローチ、という言葉について補足します。これは、筆者(後藤)の大学での専門課程の恩師、ロボット工学分野の権威である新井民生先生の「観測ができること、記述ができること、制御ができること、この3つが可能でなければ工学は成立しない」という言葉に基づくものです。プロジェクトという姿形のないものをより確かに進めていくためには、警句やノウハウの集積ではなく、確かな体型に基づく方法論が必要です。人工物工学の対象は、従来の「モノ」の領域を遥かに超えて、情報システムyさーびすといったものにまで及んでいますが、プロジェクトもまた、その対象たり得ると考えています。

 

工学って、そういう意味だったのね。
知らなかったけれど。

 

で、この本の中で、「これは若者に読ませたいな」とか「お客様に知ってほしいな」と思えた箇所はここ。

 

要望、要求、要件、仕様、設計。プロジェクトにおいてはこうした別々の階層にある話が、ごちゃまぜ人って始まり、互いに影響を与えながら進むものです。筆者が経験してきたなかで、これらの何がどのように作用して、認識の食い違いや手戻りにつながってしまうのか、整理してみました。

要望…プロジェクトを開始する根本となる動機
要求…要望をもとにして、正式に依頼する側とされる側の間で明示される情報
要件…要求をかなえるために、製造・実現する内容を明確にすること
仕様…製造するものに要求する形状、構造、寸法、精度、性能、製造・試験方法等を規定設計…仕上がりの形や構造を図面などによって具体的に表現すること

 

これだけだと、まだ、わかりにくいので、ここまでブレイクダウンしてくれるのが嬉しい。

 

要望
→とても空腹なので、家族5人、出来るだけ早くお腹いっぱいになりたい
→ただお腹を満たすだけでなく、食事としての楽しみも求めたい

要求
→がっつりとしてボリューム感のあるメニュー
→メインディッシュだけでなく、デザートも食べたい
→子どものアレルギーに対してケアをすること

仕様
→大人用にエビ風味あんかけチャーハンを、大盛り2人前
→子ども用には卵を用いないメニューを普通盛り3人
→デザートに、アイスクリームを5人前(原材料に卵を含まない)

 

プロジェクト定例会の目的を考えると、アジェンダは基本的に次のような形式しかありえません。
・現在守ろうとしている計画はどれかということの確認
・それに対する現状確認(=ギャップや課題)が何であるのかの共有
・課題への対処方法のすり合わせ

 

あと、これね。
無駄にかっこよい、カタカナは使わないようにと。

 

ウォーターフォール型とは、プロジェクトにおける要求、要件という上流の部分を事前に確定させて、しかる後に、それを満たす仕様、設計に落とし込んでいく、そうすれば必ず、必要十分なものができる、という考え方です。一方の、アジャイル型とは、いきなり全体を考えるのは難しいので、ひとつひとつの機能に分解して、問題をときやすいものにして、順次ひとつずつ仕上げていきましょう、ということです。これはシステム開発用語ではありますが、出版プロジェクトであっても、販促企画であっても、はたまたマイホームや旅行であっても、これらの概念を参考に物事を考えるのは有効です。

この本の最後には参考図書がズラッと並んでおりまして、その中から、こんな本が読みたくなりました。

 

問題解決の心理学―人間の時代への発想 (中公新書 (757))

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仕事に必要なことはすべて映画で学べる

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歴史とは何か (岩波新書)

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「学び」の構造

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教養としての認知科学

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名将たちの決断 (中公文庫)

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デザイン思考が世界を変える (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

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決定学の法則 (文春文庫)

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