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手戻りなしの要件定義実践マニュアル[増補改訂版]

著者:水谷哲郎
発売元:日経BP

 

目次

【第1章】 要件定義を成功させるポイント
     < 1-1 > 手戻りをなくすカギは要件定義
     < 1-2 > 要件定義を成功させる進め方とスキル

第2章】 業務分析の進め方 ~方針定め真の問題を特定する~
     < 2-1 > ステップ 1:方針と実施計画の策定
     < 2-2 > ステップ 2:現行業務と問題の把握
     < 2-3 > ステップ 3:問題分析と課題の設定

【第3章】 業務設計の進め方 ~解決策を考え要件決める~
     < 3-1 > ステップ 4:課題解決策の決定
     < 3-2 > ステップ 5:システム要件の整理(前半)
     < 3-3 > ステップ 5:システム要件の整理(後半)

【第4章】 既存システム改善における要件定義の進め方
     < 4-1 > 既存システム改善を成功させるポイント
     < 4-2 > 既存システム改善における要件定義の手順

【第5章】 情報を漏れなく集めるヒアリングのスキル
     < 5-1 > ヒアリングの準備
     < 5-2 > ヒアリングの実施
     < 5-3 > ヒアリングのクロージング

【第6章】 全員が納得する合意形成のスキル
     < 6-1 > 会議の準備
     < 6-2 > 会議のオープニング
     < 6-3 > 議論の進行(前半)
     < 6-4 > 議論の進行(後半)
     < 6-5 > 会議のクロージング

【第7章】 BABOK を実践する方法
     < 7-1 > BABOKとは何か
     < 7-2 > BABOKを活用する

 

感想

好きだわ、こういうマニアックな本。

著者は日立の人で、きっと様々なプロジェクトの要件定義を数多く行ってきたのでしょうね、ということがよくわかります。

それも、いろんな人と組んでね。

本の仕立てが若手に先輩が教えるって目線になっているからわかりやすいんだわさ。

 

要件定義というのは

  1. システム化方針
  2. 解決すべき課題
  3. 課題解決策
  4. 新しい業務の仕組み
  5. システム要件
  6. 後続作業決定

からなるのだそうな。

 

で、これらをミーティングベースで決めていくのだけれど、その時に重要になるのが「聞く力」と「合意形成術」なのだと。

ヒアリングや、インタビューで関係各者のやりたいことを聞き出して、それをまとめる力が必要ってことですな。

 

で、失敗してしまう要件定義の多くは「あいまいなままで終わってしまうシステム化方針の決定」なのだと。

まぁ、「営業業務の見直し」とか「基幹業務の見直し」とかいうザクッとした取り決めだと、そりゃうまくいかないでしょうって話ですわな。

 

で、このざっくりとしてしまう最初の方針検定を、しっかりしたものとするためにはヒアリングが重要となってくるわけですよ。

 

その5つのヒアリング内容とは
1)対象範囲
→システムを適用する事業、業務、部署
2)取り組みの背景
→システム化の背景となる好ましくない状況とその原因
3)目的-達成項目
→システム化の直接的な目的とシステムの概要
4)期待成果
→財務、顧客満足、業務プロセス、技術・ノウハウの観点による期待成果
5)制約条件
→時間、費用、技術・方式、改善条件の観点による成約

 

ここをもれなくしっかり、具体的に聞くことが重要なわけですよ。

 

できれば定性的でなく、定量的にな。
〇〇%を〇〇%に改善するとかね。


で、もちろんこれだけでは手戻りのない要件定義にはならないわけで、
著者はさらに追い打ちを掛けるように

 

  1. システム化の目的にとって必要・有効な要件を明らかにする
  2. システム活用の前提となる業務プロセスや組織、制度、設備・機器の条件を整理する
  3. 定義した要件に対して利用部門から十分な合意を得る

ということが必要なのだそうな。

まぁ、そりゃそうだわね。

 

スコープがぎゅぎゅぎゅっとなってきたら、実際に新しく構築するシステムを使う人間にレビューを行って「そーじゃねーよ」とか「そーだよね」という意見を先にもらいましょうって話だわね。

 

で、要件定義の時にはインタビューとか、ヒアリングが重要になるのだけれど、いきなり「では・・・」なんてはじめていたら、その回は紛糾まちがいなしなわけですよ。

 

予めヒアリングの依頼状を送っておく必要があるわけだ。

 

その依頼状には

  1. ヒアリングの目的
    プロジェクトの目的
    ヒアリングの役割
  2. お聞きしたいこと
    情報を提供する立場
    情報の内容
    情報の量
  3. ヒアリング時の留意点
    気をつけて欲しい点
    誤解を避けたい点
  4. 日時・場所
  5. ヒアリングまでのお願い事項
    考えておいてほしい意見

が完結にまとまっている必要があるのダワサな。

 

で、ヒアリングの時に、こちらから色々と質問をするわけですけれど、その質問には【オープン質問】【クローズ質問】があるのだそうな。

 

それは何かってーと

 

【オープン質問】
What,Who,When,Where,Why,How,How toから始まる質問ですな。お客さんがそれぞれに対して、自分の言葉で答えることができるような質問。

【クローズ質問】
エス・ノーでの回答や、選択肢から回答を求めるような質問のことを言うのですな。

 

オープン質問で始めつつ、反復質問をはさみ、意味を明確化させ、最後にクローズ質問で終えるというのが王道の流れなのだそうな。


で、ヒアリングを終えたら、すぐに

  1. 議事録の作成
  2. 議事録の送付
  3. ヒアリング結果の整理

を行うのだと。

1)と2)はヒアリングを実施するたびに行い、3)はすべての対象者へのヒアリングが終了した時点で行うのだと。


で、要件定義にはヒアリング以外にも、合意形成という重要なタスクがあるわけでして、この合意形成を成功させるためには7つの技があると、著者は言っているのですよ。

 

その7つの技とは

  1. 会場正面に立ち、発言者の方に移動する
  2. 参加者の発言機会をできるかぎり均等にする
  3. 発言の意味を全員がわかるように確認する
  4. 進行役が自分の意見をいうのを控える
  5. 意見が対立したら理由は根拠を確認する
  6. 問題を指摘された側の意見を聞く
  7. 議論が行き詰まったら休憩を入れる

のだと。


で、要件定義の知識・スキルを整理しながら磨いていく。そのことに役に立つ、ビジネス分析の知識体系「BABOK ( Business Analysis Body Of Knowledge )」というのがあるのだと。

 

BABOKには7つの知識エリアがあり、それは

  1. エンタープライズアナリシス
    企業・組織レベルの視点で要求を分析し、プロジェクトの方向性・範囲を決める活動
  2. 要求アナリシス
    利用部門から引き出した要求を分析し、要求の優先順位を評価する活動
  3. ソリューションのアセスメントと妥当性確認
    要求の妥当性を評価し、それを実現するための体制・スケジュールなどを定義する活動
  4. 引き出し
    利用部門のユーザーから個別に要求を引き出し、文章化する活動
  5. 要求のマネジメントとコミュニケーション
    要求についてステークホルダーから合意を獲得し、成果物を作成・管理する活動
  6. ビジネスアナリシスの計画とモニタリング
    ビジネス分析の実施計画を立案し、その実施状況を管理する活動
  7. 基礎コンピテンシ
    ビジネス分析を実施する担当者に求められる基礎的な知識・能力

なのだと。

要件定義というものを、ここまで体系づけて教えてくれる本って、なかったわな。

すごいく助かった。

そして、この本、版元のサイトに行くと、「要件定義の成果物」をダウンロード出来たりする。

 

手戻りなしの要件定義実践マニュアル 増補改訂版

手戻りなしの要件定義実践マニュアル 増補改訂版

 

タイトル:手戻りなしの要件定義 実践マニュアル[増補改訂版]
著者:水谷哲郎
発売元:日経BP
おすすめ度:☆☆☆☆☆(すごいわすごい)