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コンテナ物語―世界を変えたのは「箱」の発明だった

著者:マルク・レビンソン
訳者:村井章子
発売元:日経BP

 

目次

最初の航海
埠頭
トラック野郎
システム
ニューヨーク対ニュージャージー
労働組合
規格
飛躍
ベトナム
港湾
浮沈
巨大化
荷主
コンテナの未来

 

感想

 

規格が作られる、規格が統一されることで、ビジネスのルールというか、世の中の常識が、瞬時に一変してしまうということを教えてくれる本ですわ。仕事をする上で、ものすごく参考になるお話が満載でございます。

 

コンテナ。よっぽどの山奥とか、それこそトレーラーが入っていくことが出来ないくらい細い道の先でもなければ、見かけないことはない鉄の箱。無論、港の近くでは、リアル倉庫番のようにうず高く積み上げられているコンテナ。

 

このコンテナって、すごい昔からあって、18世紀は木の大きな箱だったんです。その大きな木の箱を積んで、蒸気船は世界中の植民地を行き来していたのですよ…とおもいきや、そうではなかった。コンテナ自体、つい最近、誕生したものだったんですわ。

 

ここからびっくりさせられますよ。

 

サイズを統一したコンテナをトラックで運んで、クレーンを使って無蓋貨車、トレーラー、倉庫、船に積む・・・というアイディアをアメリカではじめて最初に取り入れたのはニューヨークのセントラル鉄道。1920年頃にはスチール製のコンテナを導入していたんですとな。

 

コンテナのはじめてが船ではなくて、鉄道であったのが、まず最初の驚きでしたな。

で、現在のように大きさが統一された鉄の箱に荷物を詰めて、こいつを輸送するという仕組みを作ったと言われているのがマルコム・マクリーン。マクリーンが、その仕組を使いはじめたと言われているのが1955年。20世紀後半の出来事だったのですわな。

 

で、本書によると、マルコム・マクリーンが凄いのは大きさを揃えた鉄の箱を船に積むということを見つけ出したということではなくて、海運業のゲームのルールを変えてしまったことだという。それまでの海運業が船を運行する産業であったけれど、マクリーンの登場によって、海運業はコンテナを運ぶ産業としてしまったのですよねって。

 

このルールチェンジによって、ゲームがガラリと変わってしまったと。コンテナが登場する前まで、港の主役はクレーンではなく、沖仲仕だったのです。

 

沖仲仕(おきなかせ、おきなかし、ステベドア/ステベ Stevedore)とは、狭義には船から陸への荷揚げ荷下ろしを、広義には陸から船への積み込みを含む荷役を行う港湾労働者の旧称。

 

船が港に入ると沖仲仕がブワッと集まって、荷物を陸地に下ろした。すべてが人力&積み荷によって必要な人数が日々変わるわけで、沖仲仕は港周辺にものすごいたくさん住んでいたわけですよ。そして、稼ぎはいいけれど、過酷な仕事だった。過酷だけれど稼ぎがいい仕事を求め、数多くの荒くれ者が港には集まってきて、それを仕切る団体が必要だった。日本の神戸で、その団体は山口組であった。

 

と、この内容は本に書いていないですが、コンテナ登場以前は、世界中、似たようなものだったのはたしか。

 

ニューヨークの治安が悪化するのは、コンテナ物流の広がりと比例しているのですわ。ニューヨーク港、沖仲仕の組合が強かったし、コンテナの荷揚げ・荷降ろしが出来る設備が弱かったし、近くにコンテナ物流に持って来いの港が用意されたニュージャージーがあったしね、と。

 

こういうハナシはまったく知らなかったので、かなりの驚き。しかし、言われてみりゃ、そうだな、と。

 

で、コンテナ物流は諸々の効率化がはかれるので「儲かる」ことが物流&開運関係者に知れ渡ってくるのですわな。しかし、だからといって、コンテナの規格がすぐに統一されることはなかったのですよ。

 

なんでか?

 

関係各社が「うちのコンテナが規格として採用されると、うちが儲かる」といって、争いあったから。まぁ、そうはいってもアメリカ国内では規格が統一され、ついでは世界規格として、今もよく見るあのコンテナが作られるようになったのですわ。

 

コンテナの誕生から、ここまでわずか10年ちょっと。それから40年ちょっとで、現代に。

60年前の常識は、今の時代まったく通じず、新たな企画が世の中の常識として、通じるようになっている。一生懸命時代に抗った沖仲仕の組合も、ゲームのルール自体が変わってしまったため、その存在自体が必要ではなくなってしまった。

 

コンテナの登場って、ネットの登場と同じくらいの衝撃だったのね、とこの本を読んで思うのですよね。

 

ちなみに、60年代後半~70年代前半のアメリカにおいては、まだ、「コンテナなんて・・・けっ!」と思っていた人が多数派だったとのことだけれど、ベトナム戦争によって、その考えは少数派になっちゃったんだって。なんでかって?コンテナがあることでロジスティクスベトナム戦争の場合、文字通りの兵站が効率化・合理化できたから。

 

そんな輸送の効率化とか、コストを図る指標として次の3つがあるのですと。①不定期船のチャーター料②ドイツ運輸省が作成するライナーインデックス(定期貨物指数)③コンテナ船の標準チャーター料。これらの指標を見れば、どれだけ効率化されたかというのがわかるのだとな。ベトナム戦争の効率化はわからないと思うけれどね。

 

規格が統一されると、世の中の流れが一気に変わるよね。そして、その流れはどんなに抗っても変えることが出来ないよね、ということがよく分かる本ですわ。

 

 

コンテナ物語―世界を変えたのは「箱」の発明だった

コンテナ物語―世界を変えたのは「箱」の発明だった

 

 

タイトル:コンテナ物語
著者:マルク・レビンソン
訳者:村井章子
発売元:日経BP
おすすめ度:☆☆☆☆☆(超おすすめ)