著者:土屋哲雄
発行元:ダイヤモンド社
ワークマン式「しない経営」のまとめ
ワークマンが凄いと言うよりも、カインズグループが凄いんだよな。そして、土屋一族が凄いのですよ。イオンや、セブンアンドアイ、ファーストリテーリングの影に隠れていた超優良小売りグループが、一気に注目を浴びるようになった。その中心人物が、著者の土屋哲雄さん。そして、ワークマンだ。なんだろう?外資系企業の管理方針とも、国内資本のイケイケどんどん野会社とも違う。成長をするけれど、軸足をぶらさない。歩みはゆっくりだけれど、歩みは停めない。同族企業で、未上場企業だからなのか?真似しやすそうで、なかなか真似できない深い世界。
ワークマン式「しない経営」を読んだ理由
「面白いよ」って、職場で勧められたので
ワークマン式「しない経営」で仕事に活かせるポイント
手段を目的化しないってことだな。顧客管理をするとしても、何のために顧客管理をするのか?しっかり考えないとダメだということね
ワークマン式「しない経営」の目次
第1章 「しない会社」にやってきたジャングル・ファイター
第2章 ワークマン式「第2のブルーオーシャン市場」のつくり方
第3章 「しない経営」が最強の理由
第4章 データ活用ゼロの会社が「エクセル経営」で急成長した秘密
第5章 なぜ「エクセル」経営で社員がぐんぐん成長するのか
第6章 興味こそがやりきる経営のエンジンである
ワークマン式「しない経営」の感想
ワークマンプラスを立ち上げた、ワークマンの土屋さん。カインズホーム&ベイシアという企業集団を率いる土屋一族の方ですが、大学卒業後は商社で働いていたこともあり、理論的でかつ、馬力があって、最高です。
とはいえ、商社で新しいビジネスを立ち上げると言うことは、土屋家宗家から見ると「小さなビジネス」であるというのが面白いね。
ワークマンのブルーオーシャン市場の拡張(客層拡大)戦略と企業風土の改革(「しない経営」+「エクセル経営」)は、いま思い返せば、この言葉から始まった。
言葉の真意の一つは、「小さな仕事はするな」ということで、はなかったか。
「おまえがこれまでやってきたような、小さな事業をやられては迷惑だ。やるならもっと大きな事業をやれ。そのためにもしばらく腰を据えて勉強しなさい」」
嘉雄会長のひと言によって、私は商社時代にたたき込まれた”ジャングル・ファイター気質”と決別することになった。
でもさ、土屋さんは、商社時代に色んな経験を積んできたのだよ。その時代の経験に基づくフレーズも面白いのだよ。
「コンサルは知らないと言ってはいけない」「コンサルは言い切れ」と社員に繰り返し言っていた記憶がある。
結果として同じ社員の時間単価が2倍強になった。肩書きが代わっただけで(もちろん多少のスキルアップはしているが)、これほど評価が変わるのかと驚いた。
とか
経営戦略の古典として名高い『新訂競争の戦略』で「ファイブフォース分析」を提唱したマイケル・E・ポーターは、「戦略とは捨てることだ」と言った。
経営資源には限りがあるため、何かを選んだら何かを捨てなければならない。
とか、ね。
この辺の商社的な考え方と、土屋一族の考え方(というか、ワークマン独自性)がミックスされて、オリジナルの経営哲学が生まれてくるのですよ。
史上での戦い方は大きく2つある。
市場を広くとらえて浅く進むか、市場を狭くとらえて深く進むかだ。
ワークマンは後者だ。作業服の市場規模は約4,600億円。内訳は法人相手が6割、個人相手が4割と、規模だけを見れば法人の方が大きい。
しかし、大きな市場は競争相手も多い。そこへあえて行かないのがワークマンだ。
なかなかこんな考え方しませんよ。
さらに、値段についても、次のように考えている。
値引きはお客さまへの裏切り行為と考えている。前に値札を見ないで定価で買ったお客様に対して失礼だ。
と
値引きしなくても売れる製品を作ることが基本だ。値引きは手間がかかり、一部の個客だけが得をして不公平だ。
これはアパレル業界では考えられないこと。てか、作業着を扱う、ホームセンターでも、考えられないことなのでは?ワークマンにしか当てはまらない考え方にも思えますな。
で、ワークマンと言えば作業着から、アウトドア業界に参入していったわけですよ。ワークマンプラスを立ち上げて。で、そのワークマンプラスをどのように立ち上げたかというと、このように立ち上げたのだとな。
(以上がワークマンプラスの概要だが)出店までのプロセスに次のような流れがあった。
①自社の強みを見付ける
②なければ、強みを育てる
③進出市場を選定する
④市場を細分化してみる
⑤社員のやる気を引き出す
⑥小規模でテスト参入する
⑦問題なければ本格的に参入する
ほほう。
凄くベーシックなやり方。
これも、ベーシックなやり方だな。
自社が誰に、どのような価値を提供してきたか。誰が、どのような価値に対してお金を払ってくれたのか。それを確認することが重要だ。
しかし、これはベーシックではない。
「目標は少なく」」「人をかけない」「お金をかけない」「期限を定めない」の4つの「しない」でスタートし、目標を達成するまでやりきる。
4ない運動だなんて、高校生にバイクの免許を取らせません的な話に似ているじゃないかw
なんというオリジナリティ。
ノルマに対する考え方も素敵です。
目標が達成できずにボーナスが減るとわかれば、事前にボーナスが減ったときに対応するような生活レベルにする。非現実的な目標や期限さえなかったら、普通にできていた仕事を早めにあきらめてしまう。頭のいい人ほど先読みするから、途中であきらめるケースが本当に多い。
と
短期目標をいくつも掲げる会社ほどダメになる。
社員に過度なプレッシャーをかけても、いいことは1つもないし、社員も絶対に伸びない。
ノルマや納期がない方が、自分の頭で考え、順序立てて仕事ができる。
それがいい結果につながる。
会社という組織に対する考え方も素敵です。こういう考であれば、やりがい搾取にはなりませんね」。
小手先で売上が上がっても会社は全然嬉しくない。
誰にでもできる仕事に標準化するからこそ、30年、40年と続くダントツ経営ができる。
それにはまず、絶対に勝てるポジション取りをすることが重要で、次に誰がやっても売上が伸び続ける仕組みが重要となる。
会社は個人の頑張りには頼らない。
ワークマンが顧客管理をしないポリシーも素敵だ。
ワークマンはOne to Oneマーケティング(顧客管理)はしない。
マスマーケティングが基本だ。要するに「名前のないお客様に売れたら十分」と考えている。
お客様を名前で管理しようとすると費用がかかる。
もちろん、顧客管理をしないからと言って、何も調べないわけじゃない。
顧客一人ひとりを管理しなくても、店舗面積やレイアウト、製品の品揃え、売価の標準化を進めているので、ワークマンとワークマンプラス855店舗のうち約30店舗で各100人程度のお客様を対象に5項目だけの簡単なアンケート調査をすると、的確なデータが取れる。5項目とは①性別、②年齢、③職業(プロ客、一般客)、④年間来店回数、⑤用途(自分用、家族用)。
上司に対する考え方も、素敵だ。うちの会社の上司にも聞かせてやりたいぞw
幹部が思いつきで何かを始めることほど会社にとってマイナスなことはない。社員はやらなくていい仕事に時間を取られて迷惑だ。
このフレーズから「しないこと」はUX向上に繋がるのだな、ともおもう。
社員のストレスになること、自分の強みではないこと、価値を生まない無駄なことは徹底的に排除している。特に相手のストレスになることを「しない」は重要だ。
「しない」とは、相手の立場で考えると「されない」ということだ。
エクセル経営の神髄はここだ。
単にエクセルのデータを突き合わせるだけでなく、エクセル卯を使って自由に議論することで、社内の知恵を集められる。普通の人の知恵を集めてできる「エクセル経営」こそワークマンの目指すものだ。非凡な人はいらない。頑張らなくてもいい。
と
勘と経験による意思決定を、データに基づく意思決定に変え、誰でも参加できる経営にする。
属人的な経営は危ない。
私を含めて昭和、平成時代に成功体験を持つ経営者が、いままでのカント経験を頼りに舵取りしようとすると、ネットワーク型社会の変化に対応できない。勘と経験による意思決定は会社の大きなリスクポイントだと認識する必要がある。
とはいえ、土屋さんは、データサイエンティストについて、手厳しいw
多くの会社が外部からデータサイエンティストや、数学や理論物理の研究者や専門家を迎え入れる。
私に言わせれば、それは最悪のイッテだ。確実に組織をダメにする。
彼らは研究に興味はあっても、企業の意実務にはまるで興味がない。そこをわすれてはいけない。会社のつまらない数字を分析したいなんて、はなから思っていない。
そして、会社を伸ばすことは、社員の給料を伸ばすことだと言いきる土屋さん。かっこよすぎる。
新規事業にしろ、経営改革にしろ、社員に負担を強いる。負担を強いるなら必ず報酬は必要だ。
多くの会社は業績や事業の夢については雄弁に語るが、社員の夢や報酬については語らない。
売上げ目標はあっても社員の報酬目標はない。
これ、うちの会社の経営陣に、そのまま伝えたいわ。
タイトル:ワークマン式「しない経営」 4,000億円の空白市場を切り開いた秘密
著者:土屋哲雄
発行元:ダイヤモンド社