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日本軍兵士 アジア・太平洋戦争の現実

著者:吉田裕
発行元:中央公論新社

 

 

日本軍兵士 アジア・太平洋戦争の現実のまとめ

日本人は「戦争は悪いもの」ということで、戦争に関することは、すべて思考停止してしまうクセがある。戦争中どんな悲惨なことがあったのか?検証も、せずに。本書に書かれている内容は、まさに、その戦争中の検証である。が、読み進めているうちに「あれ、これって今の日本のことなんじゃないか?」と思ってしまう。会社にしろ、地域社会にしろ、政治にしろ、何も戦争中から進化していない。なんでも、神頼み。精神論が大好きで、科学を軽んじて、空気に流される。いや、ほんと、何も変わってないですよ。戦争の時から。そして、日本のサラリーマンは、日本帝国陸海軍の兵隊さんと同じですよ。そりゃ、戦争について学校できちんと教えることなんてできませんよね。なにしろ、学校の仕組みや、中身が、戦争中の兵隊さんの組織と同じなんだから。

 

日本軍兵士 アジア・太平洋戦争の現実を読んだ理由

HONZでおすすめされたので

 

日本軍兵士 アジア・太平洋戦争の現実で仕事に生かせるポイント

神頼みと、運頼みを辞める。科学を軽んじない。現場の練度を重要視しすぎない。短期決戦と、作戦重視を辞める。

 

日本軍兵士 アジア・太平洋戦争の現実の目次

序章 アジア・太平洋戦争の長期化
第1章 死にゆく兵士たち 絶望的抗戦期の実態I
第2章 身体から見た戦争 絶望的抗戦期の実態II
第3章 無残な死、その歴史的背景
第4章 深く刻まれた「戦争の傷跡」

 

日本軍兵士 アジア・太平洋戦争の現実の感想

この本に記載されている日本軍兵士の様子は、リアルなのです。戦争映画や、ドラマで描かれる悲惨さは、嘘っぱちなのです。この本を読めばそれが、よく分かります。

「何が嘘っぱちなんだよ」と、思う人は、是非とも本書を読んでください。

もう、1944年以降は、立派な体格をした兵隊さんも、二十代の元気な兵隊さんも、立派な軍服も、武器もなかったのですよ。よく、左側の人々が「軍靴の音が聞こえる!」なんて、21世紀の今でも騒ぎますが、歩いて音が鳴るような軍靴なんて、その頃は作られなかったんですよ。動物の皮で革靴が作れないので、サメの皮で革靴を作る。鍋釜を民間から集めて武器を作る位なのですから、軍靴を補強するために鉄なんか作れない。そんな軍靴で行軍をすると、そこに穴が開く前に、皮がすり切れる前に、糸が切れて、靴がバラバラになってしまう。

もう、戦争する以前の状況、そんな悲惨な状態を描いた、ドラマや、映画は、わたし、見たことありません。

もう、戦争する前から負けていた。そういうダメな状況だと分かっていても、精神を入れ直せばなんとかなると、頑張った。頑張ることしかしなかったので、病人や、けが人を回復させようなんて考えは、花から無かった。

最悪だな、日本軍。

著者は、このように悲惨な日本軍を生み出した理由も、冷静に述べています。そのなかで、私も「ですよね~」と思えたのが次の4点。

①短期決戦、作戦至上主義
②極端な精神主義
③米英軍の過小評価
④体当たり戦法

短期決戦が大好きな日本軍は、長期戦になることなんか一切考えていなかった。短期決戦であれば無理を通せるので、ロジスティックや、工業力なんて完全に無視した、作戦を立てて、実行しようとした。で、その作戦がヤバいことになると、根性だけで乗り切ろうとした。そもそも、短期決戦の作戦を考えつく時点で、英米軍(だけじゃないけれどね)を過小評価していたわけで、科学的であるとか関係ない世界であった。そんな中で長期戦になってしまうと、出てくるのは体当たり戦法だけだったという。

もう、死ねばいいレベルですね。

なお、このような状況が生み出されてしまった背景も、著者は述べているのですが、その中で、私の心にグサグサ刺さったのが、次の3つですね。

①多元的・分権的な政治システム
②罪とされない私的制裁
③軍機の弛緩と退廃

この3つは戦場ではなく、政治や、行政の世界のお話なのですが、これって、戦後75年が経過した21世紀の日本でも、まるっと当てはまるんじゃないでしょうか?そして、政治や、行政だけでなく、日本の組織運営にズバッと当てはまるんじゃないでしょうか?

日本の失われた何十年という話が、よく出てきますが、戦争をきっちり総括しないんだから、そりゃ、どうだよねと思うのですよ。

日本組織のダメなポイントは、日本軍だけでなく、21世紀、すべての日本的組織に当てはまるなぁ…と思いながら、本書を読み進めたのでした。

 

 

タイトル:日本軍兵士 アジア・太平洋戦争の現実
著者:吉田裕
発行元:中央公論新社