著者:川上祐司
発行元:晃洋書房
著者は、元アメフト選手でオンワードワークスにいたんだよね。で、現役選手引退後、サラリーmなんとして頑張るという、日本の社会人スポーツ選手の多くが歩むセカンドキャリアを選んだのですよね。でもね、そこからが違う、筑波大学大学院修士課程でスポーツシステム・健康マネジメントを学び、アリゾナ州スコッツデール市グローバルボランティアスタッフとして、サンフランシスコ・ジャイアンツのスプリングトレーニングにフルタイムで参加したのだ。そういう経験に裏打ちされた、アメリカスポーツビジネスの本。MLB、NFL、NBA、NHLのビジネス形態について、詳しく教えてくれる。さらにゴルフや、MSL、そして学生スポーツについても教えてくれる。いや~アメリカってすごいですねという話と、「なんで日本のプロスポーツ界は広告代理店にプロモーションやマーケティングを丸投げするんだろう?」という怒りがわいてきます。スポーツの見方、クラブチームの経営の仕方について、いろんなことを教えてくれる素敵な本ですよ。
プロスポーツチームの経営について興味があったので
アメリカのスポーツ現場に学ぶマーケティング戦略で仕事に活かせるポイント
マーケティングやプロモーションを広告代理店にまれう投げするな!
Part Ⅰ アメリカ型スポーツ経営――スポーツをいかにマネジメントしているのか
1章 スポーツマネジメントとアメリカ市場の動向
2章 アメリカスポーツの歴史
3章 リーグのマネジメント
4章 チームのマネジメント
Part Ⅱ スポーツマーケティング――ファンを生み出し,駆り出す戦略
5章 スポーツにおけるマーケティングとは
6章 スポーツマーケティングの歴史
7章 チケッティング,放映権,マーチャンダイジング
8章 スポンサーシップ
Part Ⅲ ケーススタディ――実践現場に学ぶ展開例
9章 カクタス・リーグのツーリズム戦略
10章 スタジアムビジネスとスーパーボウル
11章 市民球団グリーンベイ・パッカーズ
12章 マスターズに見るスポーツイベントのフレームワーク
アメリカはスポーツ王国なのですよ。文化・ビジネス・教育・行政にしっかりと根付いている。大きなお金が動き、希望や夢を与えながら、レクレーションとして日常にスポーツがしっかり根付いているアメリカ。そんなアメリカのスポーツ文化について教えてくれるのが本書。本当はスポーツマーケティングについて教えてくれる本なのだけれどね。もう、あめりかじゃ、スポーツと文化が切り離せないんだよね。なので、マーケティング「だけ」と切り離すことはできない。逆に日本はマーケティング「だけ」に切り離せてしまう。そこに問題があるんだよね。
なにしろ日本におけるスポーツマーケティングといったら、文字どおり代理店に丸投げなのだ。アメリカのスポーツチームのように、自チーム内・自リーグ内にマーケティング部門を設置し、彼らが司令塔となって動くことはしないのだ。自分たちがしっかりと動き「新しい顧客を作り出すこと」と「10年後~20年後のお客様を増やすこと」と「既存顧客のLTVをあげること」に力を注いでいるのだ。日本のようにしっかりとした目的もなくタレント呼んでイベントやったり、大規模に無料チケットをばらまいたりしないのだという。つまり、アメリカのスポーツ界では自分たちの価値を下げるようなことはしていないってことなのよ。
そうやって自分たちの価値を上げるような努力をして、どこよりもお金が集まり、動くような仕組みを作ったのがアメリカのスポーツ業界。四大メジャースポーツと呼ばれる世界なのですよ。野球、バスケ、アイスホッケー、アメフト。それぞれ独自のやり方で、お金を集め、お金を動かしている。リーグ戦は16試合しか行わないけれど、それぞれの試合チケットは大人気となるNFL。NFLのNo.1を決めるスーパーボウルはアメリカで一番お金が動くイベントだしね。MLBは試合数がぶっちぎりに多いけれど、そのぶん、チケットは安い。NBAは世界から選手を集め、世界市場に進出している・・・。日本市場の小さなパイどころか、地方自治体のものすごく小さなパイを奪い合っている日本のプロスポーツ界とは大きな違いですよ。
このようにアメリカ四大プロスポーツのビジネスを教えてくれるのが本書。でもね、学生スポーツに関するスポーツビジネスに就いても教えてくれるのですよ。
NCAA(National Collegiate Athletic Association)についてもね。NCAAの目的は①教育の一環として企画・運営、②アマチュアスポーツたる大学スポーツ・学生選手・その団体の擁護、③アマチュアスポーツたる大学スポーツとプロスポーツの境界を明確化しこの協会内活動の検事に勤めること、なのですよ。なので、日本の学生スポーツのように「スポーツだけしてればOK」とか「テストで名前だけ書けばOK」なんてことは一切許されない。学業優先が徹底され、練習時間の制限までなされている。なんでも、単位取得数がある一定以上に達しないと、スポーツへの参加が認められないのだと。
厳しい世界だ。
日本のように大学の宣伝のために金をかけて集められて、スポーツ漬けにさせられて、大学と企業のための大会で競い合うことはしないのだ。
アメリカンドリームだけではない、しっかりとしたアメリカのスポーツビジネスについ手を教えてくれるすごい本ですよ。
タイトル:アメリカのスポーツ現場に学ぶマーケティング戦略 ファン・チーム・行政が生み出すスポーツ文化とビジネス
著者:川上祐司
発行元:晃洋書房