著者:前田裕二
発行元:幻冬舎
目次
第一章 人は絆にお金を払う
第二章 SHOWROOMが作る新しいエンターテイメントのかたち
第三章 外資系投資銀行でも、求められたのは「思いやり」
第四章 ニューヨーク奮闘記
第五章 SHOWROOM起業
第六章 SHOWROOMの未来
感想
著者は仮想ライブ空間である「SHOWROOM」を運営する前田裕二さん。
SHOWROOMのイメージと、表紙のイメージから「チャラい人の自己啓発本なんでしょうね」なんて思っていた自分を恥じてしまう、そんな本です。
すみません、本当にすみません。
極論すると仕事への相対し方、人生への相対し方を記している本なのですが、この手の本にありそうな「自分の人生が一番すごいので、みんな真似しろよ」的な話が出てこないんですよ。誰もが人生という物語の主人公であることを否定せず、その人生でどうやったら一番輝けるのか?を教えてくれる。ソレは人それぞれ違うのだ、と。それは著者のように起業を夢見て、外資系金融機関でがむしゃらになって働き、そして自分の大好きな仕事で夢を叶える、そんな人生も良いけれど、家庭第一でいきる人生も否定しない。夢に全力投球する人生もあれば、金に全力投球する人生もありだという。
そのような人生を歩む時に必要になるのが、「人生の勝算」なのだという。そして、その「人生の勝算」を筆者は下記のように定義している。
自分の内面と必死に向き合う過程で、僕は、大変な宝物をもらいました。
それは、「人生の勝算」です。
すなわち原体験に紐づく、揺るぎない大きな志です。人生を通じて追い続けたい夢です。その志や夢が、会社のビジョンや日々の活動という状態です。
明確な根拠など、なくて良いのです。自分が信じた「人生の勝算」を持てている事自体が、人生における幸福度を増幅させます。
そう、人生の勝算とは、自分の人生に関するポリシーなんですよね。「どういう生き方をするのか?何が自分の人生におけるプライオリティNo1なのか?」をまず定義しようというお話なのですな。
それが、ネーヨっていうのであれば、まず、作りましょうというお話。あるのであれば、ソレを極めていきましょうというお話。
そして、ワタシには、その人生の勝算があった。それは「家族を楽しませる」だ。これが重要。これがワタシの人生の第1位。
そうだったんだよ。誰かを楽しませる。面白がらせることが、ワタシの人生のプライオリティ1位だったんだ。小学校の時になりたかった職業は漫画家で、中学校の時が放送作家、高校時代が作家、大学で編集者、今はしがないデジタルマーケティング屋さんだけれど、そのベースにあるのは「人を楽しませたい」ということ。結婚して、子供ができたら、「人」が「家族」に変わっただけなんだよな。
そこにブレはない。
新卒で入った出版社で、思いっきり謎だったのが、皆「ジャーナリズム」に向かっていたことなんだよな。そして、それが肌に合わなかった。
だけど、そんな環境のなかでも「面白いコンテンツ」を作ることに命をかけていた。文字通り命をかけていた。著者の前田さんはUBSでの修行時代「誰よりお遅く帰って、誰よりも早く出勤していた」だったらしけれど、ワタシは会社に住んでいたものねw 働くのが楽しかった。それだけ没頭できた。前田さんも、そうだったということが、本書を読むとよく分かる。誰よりも仕事に没頭したけれど、様々な壁にぶつかった。
その壁の超え方を教えてくれたのが、自分を導いてくれた先輩たちであると。
そうそう、本書の中で、前田さんを導いてくれた方々の描写が、愛にあふれていて素晴らしい。そういう文章を読むだけでも、この本の価値はありますね。