WEB銭の読書やグラベルロードのメモなど

マンガ「グラゼニ」が大好きな、ウェブ系の何でも屋さんが綴る、仕事とか、読んだ本のこととか、日常とか、世の中に関する忘備録。

駆け抜けてきた 我が人生と14台のクルマたち

著者:徳大寺有恒
発売元:東京書籍

 

目次

1 少年が憧れたクルマ、青年が楽しんだクルマ―ヒルマン・ミンクス(一九五二)

2 青春をともに駆け抜けた、忘れえぬ二台の日本車―トヨペット・コロナ(一九六三)、ニッサン・ブルーバード(一九六七)

3 黄色いコンパクトカーは、ドイツから幸運を運んできた―フォルクスワーゲン・ゴルフ(一九七五)

4 極上の時間に、私が思い知らされたこと―ベントリィ・コーニッシュ・コンヴァーティブル(一九八〇)

5 私の生き方は、ジャグァーが決めた―ジャグァーXJ12(シリーズ3)(一九八五)、ジャグァーXK8コンヴァーティブル(一九九八)

6 私が同時に恋してしまった、二台のスポーツカー―アストン・マーティンDB6(一九六七)、マセラーティ・ミストラル(一九七〇)

7 最高の瞬間、生と死を感じる瞬間―フェラーリ365GT/42+2(一九七四)、フェラーリ328GTS(一九八七)

8 アンダー・ステアと訣別したその時、私はこいつと一体となった―ポルシェ911カレラ・カブリオレ(一九八六)

9 クルマとは何か?彼女はそれを問いかけてきた―シトローエン2CV(不明)

10 その志に敬意を表して。私のこころの「終のクルマ」―トヨタ・クラウン

 

感想

 

日本一有名な自動車評論家、徳大寺有恒のエッセイ集。いや、この御方、自動車評論家である前に、作家だ。今年読んだエッセイの中で、一番面白い。こんな洒落た文章を書く作家、今はいないんだろうぁ、と思う。

 

サブタイトルは「我が人生と14台のクルマたち」。徳大寺有恒が、人生の中で「これは!」と思いともに過ごしてきた14台を紹介している。その14台とはヒルマン・ミンクス、トヨペット・コロナ、フォルクスワーゲン・ゴルフ、ベントリィ・コーニッシュ・コンバーティブル、ジャグァーXJ12、アストン・マーティンDB6、フェラーリ365GT/4 2+2、ポルシェ911カレラ・カブリオレシトロエン2CV、トヨタ・クラウン

 

日本車も、輸入車も同じように扱っているのが素晴らしい。

 

そして、徳大寺有恒は、自動車と同じくらい、奥様を愛しているのだ、大事にしているのだとよく分かる。そして、奥様も徳大寺有恒を愛しているのだ、と。ソウじゃなきゃ、維持費だけで年間二千万もクルマにかけられるわけがない。

 

クルマを使ってお金もつの人生を送ろうではなく、クルマにお金をかけて自分の人生を捧げよう、というから面白いんだな。

 

 

駆け抜けてきた: 我が人生と14台のクルマたち

駆け抜けてきた: 我が人生と14台のクルマたち

 

タイトル:駆け抜けてきた
著者:徳大寺有恒
発売元:東京書籍
おすすめ度:☆☆☆☆☆(名著だ)

図説前輪駆動車 FF車の歴史と変遷を245点の図版から辿る

著者:影山 夙
発売元:山海堂

目次

20世紀の自動車
自動車企画時に行う最初の選択
自動車の運動性能の基礎
駆動方式とその特性
前輪駆動車の特徴
前輪駆動車の3悪
前輪駆動車開発の第1波(1770~1925)
前輪駆動車開発の第2波(1925~1958)
前輪駆動車開発の第3波
前輪駆動車独特の他のテーマ
前輪駆動方式の総括
これからの自動車の駆動方式(今日~)

 

感想

マニアックな自動車書籍には定評のある山海堂ならではの本ですね。前輪駆動車、その歴史と言ったって、ここまでさかのぼるとは思いませんでしたよ。山海堂の本だから、ミニや、シトロエンDSでお茶を濁すとは思っていなかったけれどね。そうはいっても、ガソリンエンジン以前の自動車まで紹介されてくるとは思いませんでしたわw

 

一番最初に紹介される自動車が1770年にフランスのキューニューが発明した、蒸気自動車ですよwそして当然のようにダイムラーの四輪車や、ベンツの三輪車が紹介される。これにはちゃんとした意味があって、なんでベンツが三輪車かというと、まだ、アッカーマン式のステアリング機構を知らなかったからなのよね。

 

ちなみに、アッカーマン式ステアリング機構ってのはアッカー・マンジャントー機構といって

4輪自動車におけるステアリングに関する基礎的な理論で、スリップアングル等を考慮しないごく低速での移動時において、4輪全てが滑らかに動くための条件を示すものである。

 

なのだそうな。前輪駆動車では、前輪が駆動輪と操舵輪を兼ねからの暗喩だと想われますな。

 

で、そんな流れで現存している最古の前輪駆動車、ド・デオン伯爵のド・デオン・ブートンのFF蒸気自動車(1863年)も紹介されているわけですよ。そんな流れで前輪駆動車の歴史が紹介されるわけですから、ミニなんて最近も最近のハナシ、スバル1000なんて昨日の出来事のようですわw

 

FF車について事細かく語っている本なんですが、「FFとは?」を語るために、RRや、FR、4WDの仕組みと、メリット/デメリットがしっかり書かれているのがステキ。「前輪駆動とはなにか?」という問いに対して、フランスの前輪駆動車の先覚者グレゴアールが書いた『自動車諸々(L' Aventure Automobile)』のフレーズを引用しているのが、さらにステキ。それはなにかというと

 

前輪駆動車の利点は前輪を駆動するということではなく、それみよる副次的な結果、すなわち前軸の大きな荷重にある。この事実から言えることは、普通のFR車でも重量を前後軸に適当に配分することにより、FF車と同等のロードホールディングを得ることができる

 

 

なのだそうな。これは「摩擦係数μ×荷重wに対して駆動力が充分に低い時」という条件が必要だというのでエスが、まぁ、ここまでわかりやすくFF車を説明したものはないだろうというのが、著者。

 

ポルシェといえばビートルか、911が大きく紹介されるのに、そうではなくてポルシェのハブモーター式FF電気自動車が紹介されてしまう本書。マニアック過ぎて好きw 1889年のパリ万博にダイムラーとベンツの自動車が出店されたけれど、あまり話題にならなかったというトリビアも紹介されています。

 

図説 前輪駆動車―FF車の歴史と変遷を245点の図版から辿る

図説 前輪駆動車―FF車の歴史と変遷を245点の図版から辿る

 

タイトル:図説 前輪駆動車―FF車の歴史と変遷を245点の図版から辿る
著者:影山 夙
発売元:山海堂
おすすめ度:☆☆☆☆(マニアック過ぎて好き)

戦後モータージャーナル変遷史 自動車雑誌編集長が選ぶ忘れられない日本のクルマ

著者:小田部家正
発売元:グランプリ出版

 

目次

第1章 戦後の日本に希望をもたらした国産乗用車の数々
日野ルノーで運転に目覚め、初代カローラで人生の転機を掴む
第2章 試行錯誤ながら意欲的な高性能車が次々登場した60から70年代
自動車雑誌編集部へ転職し試乗記事に新風を吹き込む
第3章 排出ガス対策と低燃費化に英知を結集した国内メーカー
初めて米国大西部を取材しカルチャーショックを受ける
第4章 乗用車の高級化と多様化が急伸したバブル絶頂期
高性能4WDギャランVR-4と高級車セルシオがCOTYを獲得
第5章 新規格の採用で真の国民車に成長した軽乗用車
RJCの第1回イヤー賞はRX-7とRE生みの親・山本健一
第6章 21世紀を席巻する日本のハイブリッドとEV技術
COTYとRJCのダブル受賞は過去に5回もあった

 

感想

著者の小田部家正さんは、『ドライバー』や、『月刊自家用車』の編集をしていたお方。今はフリーの自動車ジャーナリスト。1938年生まれなので、『カーグラフィック』を創刊した小林彰太郎さんや、その盟友・三本和彦さんよりは下の世代で、徳大寺有恒さんと同じ世代。

 

なので、日本自動車業界の生き字引的な人でございますね。初代クラウンが誕生したあたりから、日産リーフが登場したあたりまでのお話がぎっしり詰まっております。

 

自動車雑誌の編集者であり、自動車ジャーナリストが「戦後モータージャーナル」と謳うくらいなので、日本の自動車ジャーナリズムのいろいろが分かるのはもちろんですが、それ以上に日本という中進国が、経済成長を遂げて先進国になって、そして停滞していくという流れが、自動車を通じてわかるようになっているのが、楽しいですわ。

 

ようやく国産車を製造できるようになって、なんとか輸出できるようになって、でも海外市場ではメタメタで、いろいろと改良を加えて、海外市場でも売れるようになって、国内市場は置いてけぼりになって、そして市場は停滞して・・・

 

世の中栄枯盛衰だというのがわかりますね。

 

 

戦後モータージャーナル変遷史―自動車雑誌編集長が選ぶ忘れられない日本のクルマ

戦後モータージャーナル変遷史―自動車雑誌編集長が選ぶ忘れられない日本のクルマ

 

 

タイトル:戦後モータージャーナル変遷史
著者:小田部家正
発売元:グランプリ出版
おすすめ度:☆☆(歴史書ですね)

GMの言い分 何が巨大組織を追いつめたのか

著者:ウイリアム・J・ホルスタイン
訳者:グリーン裕美
発売元:PHP

目次

第1部 競争の中で
(一体どこで道を誤ったのだろうか?;現場の人々;GMはアメリカにとって必要なのだろうか?;リック・ワゴナーとは?;二〇〇五年危機の幕開け)
第2部 GM、改革に向けての努力
トヨタ方式の導入;GMSシステムの成功を目指して;再びデザイン前進へ;新型カマロに向けた魂の戦い;シボレー・ボルト;マルチメディアツール・オンスターの開発;ビュイックが君臨する中国;世界のGM)
第3部 GMの将来
(企業イメージとの戦い;トヨタ—「結局は人間だ」)
経済危機とGMの将来

 

感想

本書が日本で発行されたのは2009年。GM会社更生法が適用されたのは2009年6月1日。この著者も、ボブ・ラッツも、リック・ワーゴナーも「GMを取り巻く状況は悪いかもしれないけれど、70年代~80年代のGMのようになにもしないでいるわけじゃないんだから、大丈夫」と思っていた時代に書かれた本なのですな。

 

まぁ、成功しすぎてしまったがゆえに、その成功体験にしがみついてしまい、変化に合わせて体制を変えることができなかった・・・と言い切れちゃうんですがね。

 

でもね、GMだって変わろうとしていたん出すよ、と。キャデラックはそのデザインコンセプトから見直し、ヨーロッパにも、日本にもない高級車に生まれ変わりましたし、シボレー・ボルトは、プリウスと互角に戦える新世代モデルなんですから。工場の生産性だって、悪い悪いと言われているけれど、北米にあるトヨタの工場と大差なくなってきているし、中国市場じゃ、VWとシェアNo1争いをしているし・・・

 

だから、これからの未来は明るかった・・・

 

のが、リーマンショックでやられちゃったのよね、と。

 

いや、正しくはリーマンだけじゃないのだけれど。労働組合の要求を飲みまくってきたからかもしれないけれど、そうかもしれないけれど、GMの工場が労働者階級の方々に手厚い補償を与えたおかげで、アメリカには分厚い中産階級ができたんだしさ・・・

 

なんてことを考えてしまう1冊ですわ。

 

 

GMの言い分

GMの言い分

 

タイトル:GMの言い分
著者:ウイリアム・J・ホルスタイン
訳者:グリーン裕美
発売元:PHP
おすすめ度:☆☆(とはいえ、キャデラックはよい)

スーパーカー誕生

著者:沢村慎太朗
発売元:文藝春秋

 

目次

序章 スーパーカー前史
第2章 スーパーカー誕生
第3章 第2世代へ
第4章 革命の時代
21世紀へ

 

感想

 

この本、超面白い。異色の自動車本だ。

 

自動車の書籍を歴史書籍に置き換えると、殆どが「徳川家康」とか「織田信長」とか「桶狭間の合戦」とか「川中島の戦い」とか「武田家」とか「島津家」とか、とある一箇所にだけ光を当てたようなものだったのですわ。それがこの本は「戦国時代」という歴史の流れで区切っているのよ。

 

桶狭間の合戦が行われた時、武田や、北条はどうしていたのか?越後や、甲州はどんな状態だったのか?すべてが有機的に絡み合っている歴史の全体を教えてくれる本なのですよ。

 

で、そのくくりが「日本史」とか「世界史」という大きなくくりではなく、「スーパーカー」。ランボルギーニに、ポルシェに、フェラーリ、当然出てきますが、それらがどういう関係性であったのか?がよくわかります。そして、いきなりスーパーカーが登場したわけではないので、その辺もしっかり書かれているのですわ。

 

ちなみに登場するスーパーカー
デ・トマゾ ヴァレルンガ


ジャパン・ヒストリックカー・ツアー 2011_02


ATS 2500GT


Canepa Tour - ATS 2500 GT


ルネ・ボネ ジェット


マトラ ルネ・ボネ・ジェット in ランデブー フレンチ レトロ

シボレー コルベア モンツァGT


Driving the Chevrolet Corvair on FM4


フォード GT40


フォードGT 黒澤元治 全開インプレッション!!【Best MOTORing】2007


ランボルギーニ ミウ


【超貴重】ランボルギーニ ミウラのエンジンスタート Lamborghini Miura engine start up


デ・トマゾ マングスタ


De Tomaso Mangusta Great V8 Sound On Hillclimb


ディーノ 206gt


Dino 206 GT

ランボルギーニ ウラッコ


爆音!世界に二台ランボルギーニ・ウラッコレーシング エンジン始動!

…もう、車名をならめるだけでもよだれが出てきますが、これらのスーパーカーの歴史が有機的に絡まり合っているのですよ。

実に面白い。

 

 

スーパーカー誕生 (文春文庫)

スーパーカー誕生 (文春文庫)

 

 

タイトル:スーパーカー誕生
著者:沢村慎太朗
発売元:文藝春秋
おすすめ度:☆☆☆☆☆(超面白い)