著者:影山 夙
発売元:山海堂
目次
20世紀の自動車
自動車企画時に行う最初の選択
自動車の運動性能の基礎
駆動方式とその特性
前輪駆動車の特徴
前輪駆動車の3悪
前輪駆動車開発の第1波(1770~1925)
前輪駆動車開発の第2波(1925~1958)
前輪駆動車開発の第3波
前輪駆動車独特の他のテーマ
前輪駆動方式の総括
これからの自動車の駆動方式(今日~)
感想
マニアックな自動車書籍には定評のある山海堂ならではの本ですね。前輪駆動車、その歴史と言ったって、ここまでさかのぼるとは思いませんでしたよ。山海堂の本だから、ミニや、シトロエンDSでお茶を濁すとは思っていなかったけれどね。そうはいっても、ガソリンエンジン以前の自動車まで紹介されてくるとは思いませんでしたわw
一番最初に紹介される自動車が1770年にフランスのキューニューが発明した、蒸気自動車ですよwそして当然のようにダイムラーの四輪車や、ベンツの三輪車が紹介される。これにはちゃんとした意味があって、なんでベンツが三輪車かというと、まだ、アッカーマン式のステアリング機構を知らなかったからなのよね。
ちなみに、アッカーマン式ステアリング機構ってのはアッカー・マンジャントー機構といって
4輪自動車におけるステアリングに関する基礎的な理論で、スリップアングル等を考慮しないごく低速での移動時において、4輪全てが滑らかに動くための条件を示すものである。
なのだそうな。前輪駆動車では、前輪が駆動輪と操舵輪を兼ねからの暗喩だと想われますな。
で、そんな流れで現存している最古の前輪駆動車、ド・デオン伯爵のド・デオン・ブートンのFF蒸気自動車(1863年)も紹介されているわけですよ。そんな流れで前輪駆動車の歴史が紹介されるわけですから、ミニなんて最近も最近のハナシ、スバル1000なんて昨日の出来事のようですわw
FF車について事細かく語っている本なんですが、「FFとは?」を語るために、RRや、FR、4WDの仕組みと、メリット/デメリットがしっかり書かれているのがステキ。「前輪駆動とはなにか?」という問いに対して、フランスの前輪駆動車の先覚者グレゴアールが書いた『自動車諸々(L' Aventure Automobile)』のフレーズを引用しているのが、さらにステキ。それはなにかというと
前輪駆動車の利点は前輪を駆動するということではなく、それみよる副次的な結果、すなわち前軸の大きな荷重にある。この事実から言えることは、普通のFR車でも重量を前後軸に適当に配分することにより、FF車と同等のロードホールディングを得ることができる
なのだそうな。これは「摩擦係数μ×荷重wに対して駆動力が充分に低い時」という条件が必要だというのでエスが、まぁ、ここまでわかりやすくFF車を説明したものはないだろうというのが、著者。
ポルシェといえばビートルか、911が大きく紹介されるのに、そうではなくてポルシェのハブモーター式FF電気自動車が紹介されてしまう本書。マニアック過ぎて好きw 1889年のパリ万博にダイムラーとベンツの自動車が出店されたけれど、あまり話題にならなかったというトリビアも紹介されています。
図説 前輪駆動車―FF車の歴史と変遷を245点の図版から辿る
- 作者: 影山夙
- 出版社/メーカー: 山海堂
- 発売日: 2006/12
- メディア: 単行本
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タイトル:図説 前輪駆動車―FF車の歴史と変遷を245点の図版から辿る
著者:影山 夙
発売元:山海堂
おすすめ度:☆☆☆☆(マニアック過ぎて好き)