WEB銭の読書やグラベルロードのメモなど

マンガ「グラゼニ」が大好きな、ウェブ系の何でも屋さんが綴る、仕事とか、読んだ本のこととか、日常とか、世の中に関する忘備録。

ニホンのクルマのカタチの話

著者:中村史郎
発売元:毎日新聞社

 

目次

第1章 デザイン
第2章 クルマのカタチ
第3章 デザインのマネージメント
第4章 音楽とデザイン
第5章 EVと新しいカタチ
第6章 ニホンのクルマで世界を楽しく

 

感想

日産自動車のチーフクリエイティブオフィサーの中村史郎さんが著者。世界中のNISSANやら、インフィニティやら、日産自動車各ブランド各社のデザインを統括している人ですわな。

 

癖はあるけれど、嫌悪感は抱かえない、統一感は全く無いけれど、なぜか「日産のデザインだよね」と思わせてしまうデザインの秘密が書かれていますわな。

 

ちなみに、中村史郎さんが考えるデザインとは

 

しかし、私にとって、デザインとは「カタチにすること」です。
「想いをカタチで表現すること」。この「想い」というのはデザイナー個人の想いのことだけではありません。ブランドや企業のメッセージも含みます。
クルマづくりでいえば、社会の動向やカスタマーのニーズを把握し、コンセプトを作り、機能やコスト、生産性などを満足させ、それらを包括して、「想いをカタチ」にしていく作業がデザインです。
それらのプロセスのすべてを理解し、最終的な一つの「カタチ」に落としこむのが、デザインの役割。それができる人だけが、私の定義でのデザイナーです。

 

と、19ページに記載されていますわ。

 

そんな日産デザインの最高峰がGT-Rだと、個人的に思っているのですが、そんなGT-Rを海外のジャーナリストは

 

海外のジャーナリストからは、「何にも似ていないところが印象的だ」、「色気はないけれど、存在感は十分にある」と評されました。
なかでも、デザイン評論家として有名なロバート・カンバーフォード氏は「ビューティフルとはいえないかもしれないが、きわめて説得力のあるデザイン、そして、間違いなく日本のオリジナルデザイン」と評してくれました。
「ビューティフル」といわれることは、もともと期待していません。このことばはGT-Rに似合いません。それよりも「強い説得力のある日本のオリジナルのデザイン」であるというコメント。それこそまさに私が目指していたことそのものです。

 

と。

GT-R、得体のしれない存在感、狙っていたのね。

レクサスLF-Aとも、ホンダNSXとも全く違う世界観、私は好きです。

そして、そんな世界観を作り上げたのが、中村さんであると。

 

 

ニホンのクルマのカタチの話

ニホンのクルマのカタチの話

 

タイトル:ニホンのクルマのカタチの話
著者:中村史郎
発売元:毎日新聞社
おすすめ度:☆☆☆☆(デザインの本というよりも、人生の本だね)

タキ井上が教えます!リアルな裏F1―誰が日本人を潰すのか

著者:井上隆智穂
発売元:東邦出版

目次

第1章 リアル・タキ井上
第2章 F1ドライバーへの道
第3章 日本人4人目のフル参戦F1ドライバー
第4章 レーシングドライバーの条件
第5章 真実のF1ドライバー育成システム
第6章 ガラパゴス・ニッポン・レーシング
第7章 F1マネー・ダイナミクス

 

感想

 

◆著者は過去20年間で最悪のF1ドライバー◆

F1好きでないと知らない日本人F1レーサー、それが井上隆智穂。通称タキ井上。自動車メーカやエンジンサプライヤーに目をかけられて、その育成システムに乗っかってF1までたどり着いた多くの日本人F1ドライバーと異なり、ほぼ自力でF1までたどり着いた異色の経歴の持ち主。

 

なので、多くの日本人F1ドライバーで走らないような裏の掟が本書には書かれている、と。

 

いや、裏ではなくて、正式なF1村の常識なんだけれどね、と。

 

現在、著者はモンテカルロ在住で、ユーロノヴァ・レーシングチームのオーナー。そう、レースチームのオーナー。F1以外のヨーロッパじゅうの様々なレースにに参戦しているチームのオーナー。スーパーアグリでF1に参入した鈴木亜久里よりもヨーロッパのレース業界にどっぷり使っているお方である。

 

なので、日本の自動車雑誌には全く書かれていないようなことがぎっしり書かれている。

 

なかでも、一番びっくりしたのが、日本のレース界には、レースに参戦するための価格表が無いということ。だから、新たにレースを始めようとしても、いくらかかるのかわからないということだ。

F1をはじめとしたヨーロッパ、もちろんアメリカもレース業界には価格表があると思っていたのですが、世の中の人しいはそうではないということを知って、ワタシ、ソッチのほうがびっくりしちゃいましたよw

 

◆レースセンスよりもビジネスセンスが優れていたプロレーサー◆

で、自身が現役の時は自らスポンサー獲得にまわり、引退後はチームオーナーとしてビジネスをしていたタキ井上の、ビジネスセンスが素晴らしかったりもする。

 

たとえば136ページ

そこ(情熱や闘争心よりも根性が重要である)を勘違いしているから、スポンサー探しの営業に行っても、チンプンカンプンになってしまいます。人を心を動かすのは、気合ではなく、情熱です。頭を坊主にした人が気合だけを全面に出して「お金を出してください」と営業をかけたら、危ない人と勘違いされて警察を呼ばれてもしかたありません。

こんなセリフ、営業をやっているサラリーマンだって、すんなりとは出てこないでしょう。

 

また、厳しい現実を知っていたりするので、

ただ、ここで勘違いしないで欲しいのは、スポーツはお金がかかるということではなくて、上達するための技術は無料ではないということです。好きだからだけで、朝から晩まで練習しても、ダメなものはダメで、プロのレベルまでレベルアップするには、その道のプロのコーチに教えてもらわないといけないのです。そして、それを行うにはお金がかかるということです。

(136ページ)とか

 

速いマシンに乗れば勝つのは当然です。でも、速いマシンかどうかは、F1に乗るときに考えればよく、それまでは自分のマシンが速くなるように以下にセットアップするかとか、万全なセットアップでなくても早く走ることができるようなスキルを学ぶべきなのです

(166ページ)とか、なかなかビジネス書でも出てこないような、重みのある台詞が書かれていたりするのです。

 

でもね、タキ井上は、面白い人でもあるのですよ。そんな才能が散りばめられているセリフも多数収録されている。そんなタキ井上のコメントでグサグサ来たのがこれらですね。

 

  • 何事も一番でなければならない。二番じゃダメなのである。マクラーレンロン・デニスの言葉に「2位は敗者のトップにすぎない」というのがある
  • 1年前の自分といまの自分を比べてみろ!それが、答えだ(汗)!
  • 3年後の自分をイメージ出来ない奴は、3年前の自分を懐古しているからだ(汗)!
  • できないやつほど仲間意識が強くリーダーを作って群がるものだ(汗)!サルの群れがいい例だ(汗)!
  • 「頑張ります」って言ったやつで頑張れた奴を見たことがない!「頑張ります」って言う奴は、その次は、「次頑張ります」と言う運命にある!

タキ井上、あなたはすごいよ!

 

 

タキ井上が教えます! リアルな裏F1

タキ井上が教えます! リアルな裏F1

 

タイトル:リアルな裏F1
著者:井上隆智穂
発売元:東邦出版
おすすめ度:☆☆☆☆(車好きな人は是非読むべき)

バカになれ! カリスマ・エンジニア「ゼロからの発想術」

著者:水野和敏

発売元:文藝春秋

 

目次

第1章 ミスターGT‐Rの世界を制した仕事術

第2章 発想術―本質=ゼロから考えよう

第3章 ゼロリセットで創造力を磨く

第4章 バカになれ!人生をイノベーションしよう

第5章 アジア圏へ!―自動車産業の新ステージ

 

感想

 

著者は、元日産GT-Rの開発責任者ですわな。

ちなみに、サブタイトルは

カリスマ・エンジニア「ゼロからの発想術」

ですわ。

 

基本に立ち返り、基本に忠実で、一気に攻めるという考え方は素敵ですわ。

そんな本書の中で心にハマったのはこんなところ。

 

ブランドとは時間が経っても、価値が下がらないもの。むしろ時間によって勝ちが増すものだ。

 

という14ページの記述だわ。

 

良い物だけを作ればいい、たくさん広告を打てばいい・・・ブランドになるためによく取られがちな手法だけれど、そんなものじゃブランドにはならないということですわな。

 

会社というものには実体がない。人がいなければ会社なんてただの箱だ。逆に言えば人を動かせば会社は動く。どんなビックカンパニーが相手でも、そこにいる人を攻略するという発想で臨めばいいのだ。

 

という24ページの記述。

やっぱ、会社は人なんだよ。人で決まるんだよなぁ。

あと、交渉事に関する素敵な記述が26ページにあった。

 

相手の痛いところをグサッと突きながら、新しい未来も見せてあげる

 

と。

あと51ページにあるこの記述もだね。

 

未来に向けてゼロからものを作ろうとすれば、自分がリーダーになるしかない。フォロワーの立場で新しいものを提案するなんてことはあり得ない。

 

いわゆるファーストペンギンだな。

いつもファーストペンギンとなることを心に決めて仕事をしていると面白いのよね。

で、そんな新しい仕事をするための心得が55ページに書かれている。

 

途中で予定を変更する可能性をあらかじめ想定しておくのは、未来に向かう仕事をするときには極めて重要だ。「ここまで行ってダメだったら引き返す」と決めておくことで、肩の力が抜けていい仕事ができることもある。ところが、「一度決めたことは貫徹しなければならない」という馬鹿の一つ覚えで仕事をすると、たいてい失敗する。

 

さすが、ミスターGT-R

キャラを貫き通せるだけの技術力と仕事力はこうやって作られていったのですな。

 

 

 

ダットサン/ニッサンフェアレディ = DATSUN/NISSAN FAIRLADY : 日本初のスポーツカーの系譜1931~1970

著者:当摩節夫
発売元:三樹書房

 

目次

■「ダットサンフェアレディ」に捧ぐ 日置和夫 3
■はじめに/ 5
ダットサン・スポーツカーの歴史
第1章 戦前のダットサン 6
第2章 初期のダットサン・スポーツカー 16
第3章 SP/SR型フェアレディ 20
カタログでたどる ダットサンフェアレディ
戦前のダットサン
ダットソン号/ 34
10型(1932年)/ 35
11型(1932年)/ 36
12型(1933年)/ 36
13型(1934年)/ 38
14型(1935年)/ 40
15型(1936年)/ 41
16型(1937年)/ 43
17型(1938年)/ 46
ダットサン スポーツ DC-3型(1952年1月発売)/ 47
ダットサン スポーツカー S211型(1959年6月発売)/ 50
ダットサン フェアレディ SPL212型(1960年1月発売)/ 54
ダットサン フェアレディ SPL213型(1960年10月発売)/ 56
ダットサン フェアレディ 1500 SP310型(1962年10月発売)/ 58
ニッサン シルビア CSP311型(1965年4月発売)/ 68
ダットサン フェアレディ 1600 SP311型(1965年5月発売)/ 75
ダットサン フェアレディ 2000 SR311型(1967年3月発売)/ 75
フェアレディ2000/1600の広告/ 116
オーナーズマニュアル/ 121
米国日産で制作された広告用版下/ 124
■年表/ 129
■フェアレディ/シルビアの生産台数/輸出台数/ 133
■スペック一覧/ 134
日産自動車のルーツ/ 136
■参考文献/ 137
■あとがき/ 138

 

感想

 

三樹書房だからこそ出すことができた本ですな。

 

ニッサンが誇るスポーツカーである「フェアレディ」の歴史を、その誕生から記した本。なのでサブタイトルが「日本初のスポーツカーの系譜1931〜1970」なのですわ。

 

すげぇ、資料性が高い本。

 

1931年に発売された10型から、きっちりかっちり掲載されているのですわ。

 

「フェアレディ」なので「Z」ではなく、収録されているのはSP/SR型がメイン(ってか、そればかり)なのですけれど、生産台数の88%が輸出されたというだけあって、アメリカや、オーストラリアのカタログまで掲載されているのが素敵ですわな。

 

スカイラインはプリンスが開発したスポーツセダンなわけですから、ニッサンが開発したスポーツカーはフェアレディである、と。ZとGT-R。その子孫が両方とも残っているのが、ある意味すげーな。

 

そして、この本を読んでいると、Zが欲しくなるわけですよ。

それもロードスターで。

 

タイトル:ダットサンニッサン フェアレディ
著者:当摩節夫
発売元:三樹書房
おすすめ度:☆☆☆☆☆(第一級の資料だな)

モータリゼーションの世紀 T型フォードから電気自動車へ

著者:鈴木直次
発売元:岩波書店

 

目次

プロローグ―激変する世界の自動車産業
第1章 アメリ自動車産業の誕生と成長
第2章 アメリ自動車産業の「黄金時代」―その光と影
第3章 「黄金時代」の揺らぎと「日米逆転」
第4章 ビッグスリーの「復活」と米国自動車産業グローバル化
第5章 GMの経営破綻
エピローグ―二一世紀のビッグスリーアメリカの自動車文明の行方

 

感想

 

サブタイトルは「T型フォードから電気自動車へ」

 

モータリゼーションの歴史ということで、やはり、アメリ自動車産業の話が中心。ってか、アメリカの話ばかり。

 

ぎゃくに、アメリ自動車産業の話をここまで事細かに、記載している本はないかもな。UWAが自動車メーカーにナニを要求し、アメリカに進出する日系の自動車メーカーはそれにどのように対応したか?とか、クライスラーAMCを何故に買収して、その資産をどのように活用したか?とか。

 

日本や、ドイツの自動車産業に関する書籍は数多い中で、この本は異色ですな。

 

そして、何よりおもしろい。

 

いまだに世界の自動車産業をリードし、自動車産業のルールを作っているアメリ自動車産業のお話が、よくわかって素晴らしいですな。

 

モータリゼーションの世紀――T型フォードから電気自動車へ (岩波現代全書)

モータリゼーションの世紀――T型フォードから電気自動車へ (岩波現代全書)

 

タイトル:モータリゼーションの世紀
著者:鈴木直次
発売元:岩波書店
おすすめ度:☆☆☆(良いですよね)