著者:西口一希
発行元:日経BP
顧客起点の経営まとめ
著者はマーケターとして有名なお方。P&Gや、ロクシタン、スマートニュースでマーケターとして活躍し田尾方。そんな著者が語る企業経営のお話。内容は著者の他の本に書かれている内容に近い。近いからこそ「マーケティングって経営なのだな」って理解できる。つまり、しっかり顧客のことを考えて、プロダクトや、サービスの改善をおこなって、販売することまでも考えることなのですよ。つまり、SEOや、ウェブ広告の一部分だけ切りだして「マーケティングでござい」じゃないんだよな。そういう当たり前だけれど、ものすごく重要なことを教えてくれる素敵な1冊。
顧客起点の経営を読んだ理由
マーケティングについて、自分の考えを整理したいので
顧客起点の経営で仕事に活かせるポイント
顧客の心理、多様性、変化を3つのフレームワークで把握し、経営に顧客理解を実装すること。顧客を十把ひとからげに捉えず、また「今期は売上20%増!」などと企業視点のみの目標を闇雲に現場に押し付けて迷わせず、「どのような顧客に何が『価値』として受け入れていただけるのか」をすべての起点として、経営の打ち手を組み立てること。
顧客起点の経営の目次
序章 経営が顧客を見失う理由
第1章 顧客起点の経営改革の全体像
第2章 経営の視界に「顧客の心理と行動」を組み込む
第3章 基礎編 利益を生み出す「顧客戦略(WHO & WHAT)」の立案
第4章 基礎編 継続的に収益を高める「カスタマーダイナミクス」
第5章 応用編 NPIを加えた「9セグズカスタマーダイナミクス」
第6章 顧客起点の経営改革とビジョン
第7章 ドラッカーを顧客起点で読み解く
顧客起点の経営の感想
著者の西口さんと言えば「N1分析」という手法を生み出したマーケtれぃんぐぎょうかいの有名人。N1分析と9セグ分析で数々の企業のブランド&サービスのマーケティングをになってきたお方。そんな西口さんが語る経営の本。マーケティングじゃなく経営なのよ。でも、マーケティングって経営の大きな部分を占めるはなしなので、マーケティング畑の人間が読んでも共感できる箇所だらけの内容だったりもします。そして、世の中で多く語られている「マーケティング」って、実はものすごくものすごく限られた分野のお話なんだなって、理解できてしまうわけです。
「しっかりと顧客と向き合え」というのが西口さんの考え。まぁ、西口さん以外であっても、ちゃんとマーケティングを学んだ人は、みんな同じことを言うのだけれどね。
で、その「しっかりと顧客に向き合え」という考えは、企業経営を行う上で非常に重要なポイントなのだと言いますよ。
具体的には顧客の心理、多様性、変化を3つのフレームワークで把握し、経営に顧客理解を実装します。顧客を十把ひとからげに捉えず、また「今期は売上20%増!」などと企業視点のみの目標を闇雲に現場に押し付けて迷わせず、「どのような顧客に何が『価値』として受け入れていただけるのか」をすべての起点として、経営の打ち手を組み立てます
もう、うちの会社の役員に聞かせてあげたいですわw
企業視点の目標を押しつけられて、現場は疲弊しているので。
顧客視点を語る際忘れちゃいけないのがベネフィット=便益の話しなのですよ。なぜ、便益の話しを忘れちゃ行けないかというと、便益にはサービス・商品にユーザーを紐づけておく力があるからなのですよ。
便益とは、言い換えると「顧客が買う理由」です。独自性は「顧客が他のプロダクトを買わない理由」です。継続的に自社の商品・サービスを購入されている方、あるいはサブスクリプションサービスにおいて長く継続されている方は、何らかの便益があるから購入し続けているはずです。そして、何らかの独自性を感じているから、他のプロダクトにスイッチしない、離脱しないわけです。
なお、ベネフィット=便益というのは企業視点の話しじゃなくて、顧客視点のお話。企業視点だとベネフィットじゃなくスペック、便益じゃなく機能の話になっちゃうのよね。
そして、このベネフィットというのは顧客に価値を与えることになるのですよ。
まぁ、便益って日本語に訳せるくらいなので、価値を顧客に与えるというのは理解しやすいですよね。
でもね、重要なのは潜在顧客に対して新たな価値を気づかせることなんだよね。「え!そんな価値があったの!」って。そうすることで、新しい顧客が生まれるのですよね。
どんな時代においても、売上を伸ばす企業に共通するのは、顧客が「価値」を見いだす自社プロダクトの便益と独自性を強化し続け、一方で、潜在顧客にとって新たな「価値」となる便益と独自性を提供するプロダクト開発を模索し続けていることです。
もちろん、潜在顧客に新しい価値を提示して振り向いてもらう。商品を買ってもらうというのはとても大変なこと。でも、大変だからと言って多くの経営者はそこを見捨てている、見ないで済ませていると著者の西口さんは言っているのですよね。
売上をもたらす顧客の行動を理解するだけでは不十分なのです。その行動の原因となる心理と、行動した結果の心理の理解がなく、財務諸表上で売上や利益が上がっている事実だけがあっても、それは事業の健全性や継続性を保証しません。さらに、対応すべき競合リスクや積極投資すべき成長の機会は見えません。
売上はもちろんそうだけれど、購買も顧客の行動の結果。「なぜ、その行動をしたのか?」と顧客心理に迫らないと何も見えてこないのよね。そこが見えてこないと、営業にもマーケティングにも再現性が生まれない。再現性が生まれないから、「訪問何件、商談何件」という訳の分からない目標が営業に与えられちゃうのよね。で、営業の現場は疲弊する。
そりゃ、大変よ。顧客心理をしっかりと理解するのは大変。ただでさえ大変な顧客理解なのですけれど、著者の西口さんは大変さに追い打ちをかけるようなことを言っているのですw
BtoC、BtoBにかかわらず、どのようなプロダクトでも、価値を創りうる便益と独自性は1種類ではありません。複数の顧客層(セグメント)の満足を高め続けることで、事業成長しているのです。
むむむ・・・そりゃそうだけれどさw
そして経営者はこの3つの視点で顧客理解をし直すと良いと、西口さんは言うのですよ。
そして、なんでここまでして顧客理を行う必要があるのか?というと、製品やサービス自体にベネフィット矢勝ちはないからなのよね。製品やサービスが提供できる(する)のはスペックであり、機能だから。そのスペックや機能が顧客の問題を解決して初めて「価値」や「ベネフィット」が生まれるのよね。で、顧客が「今商品を買うと良いことあるよね」と認識したときにしか、売上は発生しないのですよね。西口さんはこのように「売上を上げる仕組み」の大事さを教えてくれるのです。
商品やサービスであるプロダクト自体には「価値」はありません。プロダクトが提案する便益と独自性を、自分自身にとって価値があると顧客が認識して初めて「価値」が生まれるのです。価値を認知した顧客が、プロダクトを購入して初めて価値が貨幣に変換され、売上や利益となるのです。つまり、どれだけプロダクトが優れていると企業側が信じていても、自分にとって便益と独自性があると認知する顧客がいない場合、そこに価値は発生しません。
そこを踏まえて顧客理解を経営に落とし込む方法を西口さんは教えてくれるのです。
WHOとHOWをしっかり理解して、整理するのが必要。西口さん自慢のN1分析や9セグ分析はこの前提を知っていて初めて生きてくるんだなぁ・・・と実感できるわけです。
タイトル:企業の「成長の壁」を「突破する改革 顧客貴店の経営
著者:西口一希
発行元:日経BP