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究極のBtoBマーケティングABM アカウントベースドマーケティング

著者:庭山一郎
発行元:日経BP

 

まとめ

名著ですよ、やっぱ。日本語で書かれたABMの本の中では、群を抜いている高品質だとおもいます。ということで読み直す。やはり、ABMの基本は営業起点のマーケティングなんですよね。ターゲットを絞り込むとか、ターゲットの解像度を上げるとか、面で攻めるとか、それは付属の要素であってメインではない。営業起点のマーケティングで、ターゲットに合わせて個別のコミュニケーションをしていきましょうてアプローチは、従来の日本的な営業とあまり変わらないのだよね。だから「え!ABMって今と変わらないじゃん!」と驚くマーケッターや、営業が後を絶たない。でもね、それは表面的な話なんだよ。その実は営業や、マーケティングに関するデータを統合し、管理することなんだよな。「いやーうちの会社だと、難しいですね」というのであれば、ABMを諦めたほうがいいとは言わないけれど、データが統合できる範囲、可視化できる範囲で始めたほうがいいよ、と思うのですよ。

この本を読んだ理由

最近、ABMのジレンマに出会うことが多くなってきたので、その再確認の意味を込めて。

仕事に活かせるポイント

もう、丸ごと全部です。

目次

第1章 ABM BtoBマーケティングの新しい潮流
第2章 ABMで変わるBtoBマーケティング
第3章 ABMがつくる社内連携の新しいかたち
第4章 あなたの会社にABMがもたらす効果
第5章 ABM導入とは、「戦闘教義」を変えること
第6章 「デマンドセンターの整備」はABMの第一歩
第7章 ABMで変わるマーケティングプロセス
第8章 ABMを実際に始めてみる
第9章 世界を代表するABMプレヤー

感想

初版は2016年なのですよね。シンフォニーマーケティング、庭山さんの名著ですね。日本にABMという概念を教えてくれた本。

それから5年。

ABMという言葉はBtoBマーケティング業界では一般的になりました。

が、個人的に、ABMがうまくしっくり来ている感じがしないのですよね。

ABMという言葉の定義が色々あるというのもあるし、「ターゲット企業を絞り込んでマーケティングをしましょう。マーケティングは営業と連動しましょう。マーケティングは営業と一緒に動きましょう」という行いは、日本の今までの「営業活動と同じやんけ!何が違うんだ!」という意見を数多く聞いていますしね。

引き合い依存、もしくは引き合い&紹介だけの営業しかしていない会社にとっては「目新しいこと」ですが、ちゃんと営業をしている会社にとって、ABMはふつーのことに思えてしまうのですよね。

それをかってに、私はABMのジレンマと名付けています。

が、ABMの真髄って、データの統合、テータの可視化だと思うのですよね。

ということで、庭山さんの本書をもう一度読んで見るわけです。

庭山さんというか、庭山さんが率いるシンフォニーマーケティングでは、ABMを次のように定義しているのですと。

Account Based Marketingとは全社の顧客情報を統合し、マーケティングと営業の連携によって、定義されたターゲットアカウントからの売上最大化を目指す戦略的マーケティング

いろいろとABMの考え方がある中で、この庭山さんの考え方が非常にしっくり来るので、私も今後、ABMを説明する際にはこの表現を使いましょう。顧客を面でグリップするとか、営業起点のマーケティングという説明とともに。

で、ABMと一緒に語られることが多いデマンドジェネレーションなのですが、「デマンドジェネレーションは網で、ABMは銛」と本書では説明されています。

デマンドジェネレーションでは仕掛けを作って待つけれど、ABMはでは待たない。ABMでは予め定義されたターゲット企業のターゲット部署の人間だけを対象にしている。そこに対して、銛を打ち込むように攻めていく。なので、アカウントベースドマーケティングって言っているけれど、その実は営業にものすごく近い。ただ、マーケティングと言うくらいなので仕組みが必要。その仕組は、いけすのようにリードを集めて育成していく場所ですな。それはコミュニティでなくてもよく、デマンドセンターと呼ばれる仕組みでもいいのですな。てか、コミュニティを作っても、デマンドセンターの機能を有していないとだめなんですよ。

じゃ、そのデマンドセンターのミッションは何かというと、庭山さんは「データマネジメント」「コンテンツマネジメント」「アナリティクス」と言ってます。

そうなんですよ。

データマネジメントができないと、ABMじゃないんですよ。

「うちの会社だと、データの統合なんて無理だなぁ・・・」なんて言わずに、データの統合をできるところから始めましょうよということですね。

で、ABMの流れはどういうものなのかというと、これは結構シンプルなのですよ。「ターゲットアカウントとターゲットデパートメントを具体的に定義し、そこに所属する個人の情報を獲得する最適なプランを考えること」なのですよ。

なんとシンプル!

いわゆるキーパーソンの情報を獲得できれば、鋭いコンテンツでナーチャリングができるようになりますからね。

ただね、これだけだと「既存の営業と同じじゃね?」っとABMのジレンマに陥るのですよ。

同じじゃないんですよ。

これはデマンドセンターの上に乗っかている話ですからね。

そして、デマンドセンターには「データマネジメント」「コンテンツマネジメント」「アナリティクス」というミッションが必要なのですから。これらがあって、はじめてABMって言えるんですよ。

 

デマンドセンター構築の流れは本書で、次のように紹介されております。

マーケティングの基本設計②そのマーケティングを行うことを企業戦略としてトップマネジメントが承認し、社内に宣言する③基本設計を時系列に並べ、いつ、どこでどのようなツールと、どのようなスキルを持った人材がどのくらい必要化をあらい出す。④以上を事業計画に落とし込み、その実現のために必要な予算を確保し、実行する

 

そして、マーケティングの基本設計の中には「データマネジメント計画」が埋め込まれているのですよ。SFACRM、MA、アクセスログ、購買データ…などなど、あっちこっちに散らばっているデータを可能な限り統合して管理することが重要で、その計画こそがすべてのベースになるのですよ。

1.ファイルの統合
2.個人データの名寄せ
3.企業データの名寄せ
4.企業と個人の紐付け
5.営業対象外、競合フラグ処理(論理削除)
6.企業の属性情報付与
7.製品ごとのターゲットアカウントのフラグ
8.保冷要件の整備</blockquote>

この8ステップをしっかり踏んで、データマネジメントができるようになるのが重要なんですよ。

そして、さすが庭山さんの本です。

色んな場面で使えるTipsが散りばめられているのが最高です。

企業の最も重要な資産は顧客情報である”Company's most precious asset is its relationship with its customers” Theodore Levit

リーチできる人を数えるのではなく、価値ある人にリーチすべきだ  "Don't count the people that you reach , reach the pepole who count"

ABMの期限は1993年にドン・ペパーズとマーサ・ロジャーズが出版した『The One to One Future』(日本名『One to Oneマーケティング』)

 

 

ほんと、さすがです。

個人的に勝手に師匠だと尊敬している庭山さんですから、さすがです。

 

 

タイトル:究極のBtoBマーケティングABM アカウントベースドマーケティング
著者:庭山一郎
発行元:日経BP