目次
はじめに 松方弘樹との四五〇日
序章 遅れてきた最後の映画スター
第一章 ヒロポン打ちつつドサ回り
第二章 東映城の暴れん坊
第三章 やくざじゃない、役者だ!
第四章 稲川総裁と松方部長
第五章 プライベートジェットとVシネマ
最終章 「最後の映画スター」の孤独
あとがき 悪場所のプリンス
感想
松方弘樹。
40代より若い世代にとっては、「たけしの元気が出るテレビ」の松方部長のイメージが強いのだけれど、この人は時代劇から現代劇までこなすことができる、ものすごい役者。
何しろ、両親は役者で舞台や、映画撮影現場を遊び場にして育ったような人なのだから。そりゃ、頭のさきから足の指まで藝がぎっしり詰まっておりますよ。
ただ、時代が松方弘樹に会ってはいなかった。映画役者として独り立ちする頃、すでに映画は斜陽産業になっていた。時代劇でトップを極める頃に、時代劇は終りを迎え、任侠映画でトップを迎える頃には、任侠映画が終りを迎え、実録ヤクザものでトップを迎える頃には、実録ヤクザものが終りを迎え、Vシネマでトップを迎える頃には、Vシネマが終りを迎え、そして、コンプライアンスが厳しくなりつつつあった21世紀の芸能界からは「要注意人物」と扱われるようになってしまった。
どんなに後ろ指をさされ、どんなに裏切られようとも、演技に対する情熱だけは本物だだった。時代劇という藝を後世に残すにどうすればよいのか?それを真摯に考えていた。
松方弘樹が歩んできた藝の道は、ある意味、20世紀後半における日本芸能界の縮図でもある。
本書は松方弘樹に脳腫瘍が見つかり、そして、亡くなるまでに行われたインタビューの内容をもとに書き起こされた、いわば、松方弘樹の遺作でもある。