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マンガ「グラゼニ」が大好きな、ウェブ系の何でも屋さん「カンマニ」が綴る、仕事とか、読んだ本のこととか、日常とか、世の中に関する忘備録。

ケースブック 価値共創とマーケティング論

編著者:松村潤一
発行元:同文館出版

 

まとめ

最近やたらと語られている(気がする)共創。つまり、co creation。よくわからなかった世界だったんだけれど、この本を読んだことによって頭の中身がすごい整理されましたね。価値共創マーケティングとは、いかにして顧客の消費プロセスに入り込むことが重要なんだとな。価値創造者たる顧客がサービスの提供を企業に求めることで、両者のサービス関係が生まれ、直接的な相互作用関係のもとで価値共創が行われるのだとな。このようなベーシックなことを教えてくれながら、事例を紹介してくれるので、すごくわかりやすいわ。

 

この本を読んだ目的

価値共創価値共創と言われましても、よくわからない世界だったので、この本を手にとったわけですよ。価値共創に関する本は、まだそれほど読んでいないけれど、たぶん、この本が一番わかり易いんじゃないかと思ってしまうわけですよ。

 

目次

第1章 価値共創とは何か
第2章 製造業における価値共創の事例研究 コマツKOMTRAX
第3章 医療品医薬品を扱う製薬企業における価値共創と医療サービス エーザイの事例から
第4章 B to C, B to Bで同時展開される価値共創マーケティング オタフクソースの事例から
第5章 ハーレーダビッドソンにおける価値共創 ユーザーとほかの主体関係から
第6章 ネッツトヨタ南国における顧客との価値共創
第7章 小売業における価値共創マーケティング ヤオコーの事例
第8章 顧客接点を通じた価値共創マーケティング 島村楽器の事例から
第9章 通販型保険に見る価値共創プロセスと相互作用 アメリカン・ホーム・ダイレクトの事例から
第10章 「顧客目線」を起点とした文脈価値の可能性 大垣共立銀行における価値共創マーケティング
第11章 えちぜん鉄道に見る共創プロセスの可能性
第12章 ホスピタリティ産業の価値共創と企業システム ホテル・ラ・スイート神戸と吉井旅館の事例
第13章 テーマパークの価値共創と組織運営 株式会社ユー・エス・ジェイUSJ)の事例
第14章 消費者の使用文脈に関する探索的研究 ミニバンを使用するファミリーの事例から

 

感想

共創、共創、と言われて困っているわけです。競争ではなく、共創。RACEではなく、Co-Creation。全くカタカナ用語が増えやがって、と思ってしまったわけですよ。そもそも、少し前に流行った、オープンイノベーションと何が違うんだよ。競争戦略の競争と何が違うんだよと思ってしまっていたわけですよw流石に漢字が違うので、違うことはわかっていましたけれどね。

 

そんなもやもやした悩みというか、怒りを収めるためにこの本を手にとったのです。が、共創に関して本を読み始めたばかりですが、たぶん、この本は名著ですわ。共創に関して、わたしの頭の中がすごい整理されました。

 

ほんの作りとしては、冒頭に「価値共創マーケティングの概念」についてを説明し、本書の殆どはその概念説明をベースとしての事例説明となっているのですな。なので、わかりやすい。「あぁ。冒頭に話していたことって、こういうことだったので」と理解できるような仕組みになっている。

 

素敵だな。

 

で、価値共創マーケティング。なんとなく感じていた肌感覚通り、新しい概念なわけですよ。でも、ここを「新しい概念ですね」と終わらしてしまっていると、じくがぼやけたままの論文になってしまうので、ちゃんと従来のマーケティングと比較しているところが偉いんですよ。

 

本書では従来型のマーケティングを下記のように定義している。

 

これまでのマーケティングは、企業の生産プロセスで全てを考え、行うものであり、価値を企業が事前に決めるという意味で、いわば価値を所与としたマーケティングであったといえ、そのゴールは、流通を経た市場でのより良い交換にあった。

 

そして、このマーケティングとは競争戦略に出てくるような話ではなく、サービス・ドミナント・ロジック、つまりS-Dロジックに基づいての話になっている。

いやぁ、もう、これも新しい概念じゃないかw

 

「モノ(有形の商品)」と「サービス(無形の商品)」を区別することなく包括的にとらえ、「企業がいかにして顧客とともに価値を創造できるか」という価値共創の視点からマーケティングを組み立てようとする考え方のこと。2004年に、マーケティング研究者であるロバート・F・ラッシュとステファン・L・バーゴによって提唱された

 

d-marketing.yahoo.co.jp

 

まずは、このサービス・ドミナント・ロジック、S-Dロジックを学ばなきゃなと思ってしまうんですがw S-Dロジック自体が新しく、わたしのまわりでも、きっちりと理解している人も少ない気もするんですが。このS-Dロジックよりも新しい概念が、価値共創マーケティングになるんだと。S-Dロジックを超えたところにある世界なんだと。

 

じゃあ、それが何かというと、こうなりますとな。

 

これまでのマーケティングを超えるためのいくつかの論点をS-Dロジックロジックの主張から導き出すなら、次の3つが考えられる。
① 価値は、交換後に生み出される
② 価値は、文脈価値として顧客によって独自に判断される。
③ 顧客は、オペラントな存在として捉えられる。

 

ほほう。ここにも、行動主義心理学の単語が出てくるではないか。もっともっと勉強しなければいけないんだなぁ。という話はさておいても、「価値は、文脈価値として顧客によって独自に判断される。」という考えは斬新だぁ。

 

それゆえに、価値共創マーケティングを下記のように定義づけている。

 

価値共創とは、顧客の消費プロセスで行われる企業と顧客の直接的な相互作用であり、あくまでも顧客にとっての価値を作り上げることを言う。そして、企業は顧客との直背膣的な相互作用の一翼をマーケティング行為として担うのであり、これを、価値共創マーケティングと呼ぶことができる。

 

これを簡単にまとめると「顧客の消費プロセスで行われる企業と顧客の直接的な相互作用」なんだよ。つまり、顧客の消費プロセスに入り込むことが重要なマーケティングなんだよ、と。

 

こうやってまとめると、今までのマーケティングと真逆の立ち位置なのがすごいなぁ。顧客に主導権があるだなんて、そりゃ、今のテレビ番組は流行らないわけですよ。広告価値がないわけですよ。顧客の消費プロセスに、テレビは入り込んでいないからなぁ。消費プロセスとか関係ないコミュニケーションしてるしな。

 

で、媒体としての問題もあるけれど、従来型のマーケティングと同じように価値共創マーケティングにも課題があるわけで、それを本書ではこのようにまとめているのですよ。

4つの課題
①消費プロセスにおける顧客の消費行動
②企業と顧客の競争プロセス
③顧客の消費プロセスで行うマーケティング
④競争される文脈価値

 

そして、この軸で各事例の説明に入る。

 

だからすごいわかりやすい。

 

いくつも紹介されている事例の中で、一番刺さったのがハーレーダビッドソンの事例だなぁ。「売れない」でおなじみのアメリカ車の中で売れまくっているハーレー。「いや、バイクじゃね-か???」と突っ込まれそうだけれど、日本には世界四題バイクメーカーがあるんですよ。そんなお膝元であっても、バイクの市場は縮小してるんですよ。

 

なのに、なぜ、ハーレーは売れているのか?ハーレーはバイクを販売しているからではなく、ライフスタイルを販売しているからでしょ?それはそのとおりなんだけれど、「ライフスタイルを販売する」その方法が、本書ではしっかり説明されているんだよな。

 

で、そんなハーレーの手法の中で、一番刺さったのはここ。

 

ハーレーは実用目的ではなく、趣味目的で購入する顧客が多いため、「モノ(車両)」という有形財とともに、無経済の「楽しむ価値」を提供している。「モノ(車両)」を売るために「コト(楽しむ価値)」を売るマーケティングである。その価値の原点は10の楽しみとして明確に定義され、取引交換後を見据え普遍の価値提供として位置づけている。
①「知る」楽しみ(商品・歴史など)
②「乗る」楽しみ
③「創る」楽しみ(カスタマイゼーション)
④「選ぶ」
⑤「競う」楽しみ(レースやカスタムでの競い合い)
⑥「出会う」楽しみ(ハーレーを通して人と出会う)
⑦「装う」楽しみ(ハーレーライフしたいリングファッション)
⑧「愛でる」楽しみ
⑨「海外交流」の楽しみ(世界的なオーナーズグループ)
⑩「満足」(トータルにハーレーライフを満喫)

 

モノ消費だとか、コト消費だとか言われているけれど、こうやって、モノとコトを整理しないとそもそもだめなんだよな。なんとなくではなくちゃんと言語化することが重要だと。

 

そして、それぞれをContact(接点)、Communication(伝達・通信)、Co-Creation(共創)、value-in-Context(文脈価値)でそれぞれぞ実践していくんだよな。

 

すごいいい本だな。これ。

 

ケースブック 価値共創とマーケティング論

ケースブック 価値共創とマーケティング論