著者:高野光平
発行元:晶文社
目次
序 ふたつの「三丁目」のあいだに
〈一九七〇年代〉
第1章 ニューノスタルジーの誕生――『三丁目の夕日』とその時代
第2章 キープオンの誕生――「ぼくたちの世代」とおたくの胎動
第3章 キッチュ感覚の誕生――文化屋雑貨店と『ビックリハウス』
〈一九八〇年代〉
第4章 一九六〇年代の解放――『POPEYE』と語りの世代交代
第5章 ニューウェーブな過去――アナクロ・廃盤・ゴジラブーム
第6章 懐古ブームと揶揄される七〇年代――「キッチュ」と「愛」の折り合い
第7章 レトロブームと昭和の終わり――収容されたすべてのセンス
〈一九九〇年代〉
第8章 レトログレッシヴの時代――渋谷系の音楽とデザイン
第9章 「スリーオー」の一九九〇年代――おしゃれ、おたく、おとな
〈二〇〇〇年代以降〉
第10章 集合的記憶化する昭和――昭和レトロブーム
第11章 「懐かしの昭和」の完成――「ALWAYS 三丁目の夕日」とその後
第12章 ノスタルジー解体――昭和の記憶のこれから
感想
サブタイトルは"「懐かしさ」はどつ作られたのか"。
著者は茨城大学のセンセ。この手の日本の風俗・歴史を専門分野としているお方。
なので、宝島社や、小学館のサライ、マガジンハウスの復刻雑誌が取り上げるような「昭和ノスタルジーってよいよね、レトロって温かいよね」的な話に落ち着いたりはしない。どっちかというと、そういう雑誌まで研究対象として、「なぜ、この時代に、ワザワザ、そんなことを取り上げたのか?」なんてことを説明してくれる。
そう。この時代に、なのですよ。
21世紀も20年目になろうとしている現在、平成も終わろうとしている今であれば、「昭和って懐かしいよね」とヒトククリにできますが、昭和ノスタルジーは、すでに昭和の時代からあった、と。
え?
ですが、言われてみれば、そうだった。昭和ノスタルジーと言っても、戦前の日本はマスコミ的になかったことにされているので、話は戦後だけの範囲に。
え?
ですよ。
戦後20年で昭和40年代、戦後30年で昭和50年代。なのに、すでに昭和レトロがあった、と。西岸良平センセの「3丁目の夕日」が、ほぼリアルタイムな時代から、昭和レトロが、昭和ノスタルジーがあった、と。
こういう空気は、高度経済成長の終わりから「あの頃は良かったんじゃね?」という思いから発生したんじゃなかろうか、と。
で、世の中的には昭和ノスタルジーがコンテンツとして人気を集めつつあった中、そのエッセンスをギュっと凝縮して登場したのが「ぼくらはテレビ探偵団」なんだと。
あー。
見ていましたよ。
そして、その後に登場した渋谷系の音楽が昭和ノスタルジーや、昭和レトロを抽象化して、オシャレなアイコンにしたと。
言われてみれば、小山田圭吾や、小沢健二、ピチカート・ファイヴの曲や、ファッションには60年代ティストがそれぞ、れちゃんと消化されて表現されている気がしますな。だから、登場した当初から、少し懐かしく、登場から25年以上経た今でも新しく感じるのでしょうな。
深いなぁ。
昭和。
同じようなことを卒論で書こうとして、下調べしたので、ものすごく共感できますな。