著者:伊藤正
発売元:扶桑社
目次
第1部 天安門事件―一党独裁を死守
第2部 南巡講話―保守派支配のなかで
第3部 文化大革命―中央復帰への執念
第4部 毛沢東死す―宮廷クーデターの三〇日間
第5部 長老たちの暗闘―改革・開放へと踏み出す
第6部 「先富論」の遺産―トウ小平後の中国
感想
その昔、産経新聞に連載されていたという記事をまとめた1冊。
なんと重厚長大なお話が連載されていたのだ!
と、びっくり。
そのタイトル通り、中華人民共和国、中興の祖、鄧小平の半生について語った本ですわ。
生まれ育ったところから話が始まるのではなく、天安門事件から話が始まるので一気に吸い込まれてしまいますわ。
天安門事件こと、六四事件の裏話がここまでしっかり書かれているとは。
っても、公開情報を組み合わしただけなんだけれどさ。
時代的には共産圏の崩壊がはじまっている時期に起きたことで
人民を守るための人民解放軍が人民を轢き殺すのはいかがなものかという話だけれど
あそこで中国版のペレストロイカが起きていたら、中国は崩壊していたんだろうな、と思ふ。
で、そんな天安門事件のあとに続くのは、南巡講話。
そして、文化大革命。
こうやって話を読み進めると、好好爺として語られる面の多い鄧小平のしんの強さができるまでって言うことがわかりますわ。
何しろ、文化大革命時、すでに六十代後半だったわけよ。
なのに、毛沢東の逆鱗に触れて中央から飛ばされるのよ。
中央でも、地方でも、経済的に疲弊している中華の民の苛酷さを知ってしまうわけですよ。
そうなると、人権だなんだかんだというよりも、まず、腹をいっぱいに擦るってことが重要だろうってなるわね。
うん。
この本、中国だと発売禁止なのな。
で、下巻では毛沢東の死から鄧小平がどうやって中国の最高権力者に上り詰めたのか、がよくわかる記述となってますわ。
四人組を追いやり、華国峰をおいぬき、どうやって十三億の民の頂点になったのか?
そして、中国をどのようのに経済大国に導いたのか?
改革開放で海外資本を導入したってことは有名ですが、毛沢東というか文化大革命により廃止されていた大学入試を復活させたのも鄧小平なのよね。
経済と教育の両方が大事だと鄧小平は知ってたんだよな。あと、ブリッジとサッカーな。
そして何より、ベトナムに攻め込むことに関してアメリカの事前承認をとってたなんてびっくりだわ。