著者:八木澤高明
発売元:KADOKAWA
目次
まえがき 戦争、圧政、貧困。そこにも娼婦たちはいた
第1景 娼婦は戦地を生きる―イラク
第2景 娼婦は内戦を泳ぐ―ネパール
第3景 娼婦は死を賭す―タイ
第4景 娼婦は王朝に反乱する―中国
第5景 娼婦は米軍基地に寄り添う―韓国
あとがき 戦場は異国ではなく、足下にある
感想
サブタイトルは「イラク、ネパール、タイ、中国、韓国」。
つまり、これらの国々で、著者は娼婦の取材を行ってきた、と。
売春というのは世界最古の職業と言われているわけですが、それにもかかわらず、多くの地域では日陰の存在であったわけで。
それは、何故かと言うと、売春には貧困と戦争がつきまとっていたからだと。
趣味と実益兼ねて売春をしているのは日本の炎上交際している女性だけな気がしなくもないけれど、彼女たちだって、目的はお金だったりするわけで、イラクや、ネパールの売春婦よりは豊かな生活を送っているけれど、その実は変化はない、と。
貧困環境下で確実にお金を稼ぐ方法が売春だったりするわけで、そんな貧困を産み出すのは戦争であったり、経済成長から置いてけぼりを喰らってしまったりすることばかりなのだけれど、この例から漏れてしまっている人々もいる。
その例がネパールの話で紹介されている。
ヒンドゥ教のカースト制度のためにお金を稼げる職業につくことができず、売春をすることが人生として強制される売春カーストがあるのだ。
ありえないような世界の話だけれど、コレが世界のリアルなのだと思うと、なんかいたたまれなくなってくる。
サダム・フセインの統治時代、イラクは世俗的なイスラム国家だったために、お酒は呑んでよかったし、あけっぴろげではないけれど、娼婦の村内も認められていた。第一次イラク戦争後、サウジアラビアに近寄っていったサダム時代のイラクでは娼婦が取り締まられることはあったけれど、第二次イラク戦争によりサダム政権が崩壊すると、そうではなくなった。
イスラム国家で娼婦の話。
でも、コレもリアルだ。
そして、アメリカ軍が駐屯していた時代のイラクは、今より圧倒的に安全だった。そして、サダム時代のイラクは独裁政権下だったけれど、圧倒的に平和だった。
民主主義って何なんだろう?
読み終わると、そんなことを考えてしまう1冊。