著者:トーマス・フリードマン
発売元:日本経済新聞社
目次
フラット化する世界[増補改訂版](上)
序 文
第一部 世界はいかにフラット化したか
第1章 われわれが眠っているあいだに
第2章 世界をフラット化した10の力
フラット化の要因1 ベルリンの壁の崩壊と、創造性の新時代
フラット化の要因2 インターネットの普及と、接続の新時代
フラット化の要因3 共同作業を可能にした新しいソフトウェア
フラット化の要因4 アップローディング:コミュニティの力を利用する
フラット化の要因5 アウトソーシング:Y2Kとインドの目覚め
フラット化の要因6 オフショアリング:中国のWTO加盟
フラット化の要因7 サプライチェーン:ウォルマートはなぜ強いのか
フラット化の要因8 インソーシング:UPSの新しいビジネス
フラット化の要因9 インフォーミング:知りたいことはグーグルに聞け
フラット化の要因10 ステロイド:新テクノロジーがさらに加速する
第3章 三重の集束
第4章 大規模な整理
第二部 アメリカとフラット化する世界
第5章 アメリカと自由貿易――リカードはいまも正しいか?
第6章 無敵の民――新しいミドルクラスの仕事
フラット化する世界[増補改訂版](下)
第二部 アメリカとフラット化する世界(承前)
第7章 理想の才能を求めて――教育と競争の問題
第8章 静かな危機――科学教育にひそむ恥ずかしい秘密
第9章 これはテストではない
第三部 発展途上国とフラット化する世界
第10章 メキシコの守護聖人の嘆き
第四部 企業とフラット化する世界
第11章 企業はどう対処しているか
第五部 あなたとフラット化する世界
第12章 ローカルのグローバル化――新しい文化大革命が始まる
第13章 実現しないのは、やろうとしないからだ
第14章 人間がみんな犬の聴覚をそなえたら、どんなことになるだろう?
第六部 地政学とフラット化する世界
第15章 フラットでない世界――銃と携帯電話の持込みは禁止です
第16章 デルの紛争回避理論――オールド・タイムvsカンバン方式
結 論 イマジネーション
第17章 二つの選択肢と人間の未来――11・9vs9・11
感想
初版を読んだことがあるのですが、これはもう、別の本ですね。
凄まじい、素晴らしい。
これは世の中を教えてくれるすごい本ですな。
やはり世界はフラットになっていくのですよ。
小さくなっていくのですよ。
そんなわけで、この本にはものすごくいいことがぎっしり書かれております。
大切だと思われる部分を書き出していくだけで、すごいことになってしまいます。
もはや、感想でも何でも無い、ただの忘備録ですが、それでもいいと納得できてしまうような内容です。
例えば上巻で言えば…
32ページ
我々は大きな科学技術の変化のさなかにいる(アメリカのように)そうした変化の最先端の社会で暮らしている場合、予測が難しい。インドのような国では、それが容易なんです。10年後には、アメリカで今やっているようなことの大半を、我々がやっているでしょう。われわれは未来を予測できる。でも、あなたがたのあとを追いかけている。未来を形作るのはあなたがたなのです。
とか
39ページ
変化は辛いものだ。変化に不意打ちされたものほど辛い目に遭う。しかし、変化は自然なのだ。変化は今に始まったことではないし、変化には重要な意味がある。
とか
64ページ
この技術によって軍のヒエラルキーはフラット化したと、その将校が言ったのだ。コンピューターを操作する下級将校や下士官が大量の情報を知る立場になり、収集された情報について決断を下す能力を持つようになったのが、その理由だという。たしかに、中尉が上官に相談せずに銃撃戦を開始することはないだろうが、幹部将校だけが全体を把握しているという時代は終わった。軍の競技場も平坦に均されている。
とか
76ページ
政治とテクノロジーの相互作用に詳しいマイカ・L・シフリーはネーション誌2004年11月22日号で、この現象をこうまとめている。「トップダウン政策の時代、社会運動や学会やジャーナリズムが世間とかけ離れたコミュニティであり、蓄積困難な資本を原動力としていた時代は終わった。もっと幅が広く、人を引きつけ、個々の関係者に大きな満足を与えるようなものが、古い秩序の横で勃興しつつある。」
とか
78ページ
このフラット化の先行き、さらにあらゆるプレッシャー、秩序の崩壊、それによって生まれる機械に将来への不安を覚えるのは間違っていないし、少数派でもない。文明がこういう大掛かりな科学技術革命を経るときには、全世界が揺らぎながら大きく変化する。しかし、今の世界のフラット化は従来の大変化とは本質的に違う。速度と範囲が桁外れなのだ。
とか
104ページ
消費者が企業に求めているのはインターネットに接続する手段ではなかった。接続後に何が出来るかという面で、さまざまなソフトウェアの開発競争をして欲しいと考えていた。そんなわけで、大企業間のフォーマット戦争が盛んに行われた後、1990年代末にインターネットのコンピュータープラットフォームは均等に統合された。じきに誰がどんなマシンを使っても、好きな相手と接続できるようになった。壁に囲まれた小さなネットワークを維持するよりも、互換性のあるほうがずっと有用だということがわかったのが大きかった。
とか
123ページ
バベルの塔が神の怒りに触れた後みたいに、ソフトウエアとハードウェアが違う言語を使っていた。1980年代から1990年代を打破するには、もう1つの大きな革新的進歩が必要だった。みんなのハードウェアのあいだを走る線路と、ドキュメントやデータを誰のソフトウェアでも読めるようにはこぶ貨車が不可欠だった。この線路が前にも触れたプロトコルに当たる。HTMLはどこのどんなコンピューターでもドキュメントやデータを作成し、送信し、読めるようにするため言語だ。HTTPはインターネットの鉄道でこのコンテンツを運ぶ方法をコンピューターの言葉で書き表している。そしてTCP/IPはこの鉄道の線路の役目を果たす。自分のウェブページからインターネット中のコンピューターやウェブサイトへ、データを運んでくれる輸送システムだ。
とか
184ページ
個人もしくはコミュニティによるアップローディングは常に大きなフラット化要因である。それが広まっているのは、まず、フラットな世界のプラットフォームによってそれが可能になったからだし、物事に参加して自分の意見を聞いてもらいたいという人間の根深い願望に応えているからだ。
とか
221ページ
現在のテクノロジーを以てすれば、知的財産を秘密にしておくのは難しい。どんな製品でも、分解して、模倣し、何日かで品物を作れる。だが、世界中に品物を届ける、仕入れ先、卸売業者、港湾業者、税関、発送業者、運輸業者といった関係業種の連鎖を綿密に秩序正しく動かすプロセスを築くのは容易ではないし、ましてまねをするのは極めて難しい。
279ページ
「どこへ行こうが、今いる場所がデスクになる」とコーエンは言う。どこにいっても、情報をこれまでより早く送受信する能力が向上すると、競争と通信の障壁画消え失せる。ビジネスを届けられる範囲が一躍凄まじい広さになる。
とか
351ページ
垂直(指揮統制)の世界から水平(接続と共同作業)のフラットな世界に移行することが起きる。上司が自分の仕事と部下の仕事の両方をこなせるようになる。
とか
400ページ
ミドルクラスの仕事のかなりの部分を占めているのは、他人との共同作業や、社内の共同作業をまとめる作業だ。具体的にいえば、世界各地の様々な労働力を操る仕事が中心になっている。
とか
412ページ
忘れてはならないのは、子供たちは私たちの時代とは違って、1つの会社に25年間務めるのはもう無理だということだ。万能ルールになり、適応しなければならない。
とか
423ページ
数学を選択しなさい。なぜなら、今後、何度となく数学と出会うことになるからだ。数学は仕事でも学問でも、あらゆる分野でますます重要になってくる。
そして、下巻にもいいことがぎっしりと書かれているのですが、それは…
11ページ
フラットな世界で伸ばすことができる最初の、そしてもっとも重要な能力は学ぶ方法を学ぶという能力だ。古い物事をやる新しい方法や、新しい物事をやる新しい方法を、たえず吸収し、独習する。
もちろん他にも刺さる言葉はたくさんある。
たとえば14ページ
インターネットは、一見体操立派なテクノロジーによるものだから、そこに書いてあることは、ナビゲーションのスキルのないものには、真実らしく思えるのだ。
とか
あとは18ページ
フラットな世界ではIQ(知能指数)も重要だが、CQ(好奇心指数)とPQ(熱意指数)がもっと大きな意味を持つと私は結論づけた。つまりCQ+PQ>IQという方程式が成り立つ。勉強する熱意と発見の好奇心がある子供をよこしてくれれば、毎週毎週手をかけて指導しよう。
とか
24ページ
IBMにせよiPodにせよ、新製品や新サービスに関してアメリカがずっとリーダーで在り続けてきた一つの理由に、社会がテクノロジーと教養科目の両方を重視しているからだと思う。
とか
58ページ
フラット化時代の富は、次の基本的な三つの事柄を手に入れる国に転がり込む傾向が強くなっている。一つ目はフラットな世界のプラットホームにできるだけ効果的に、そして迅速に接続できるインフラ。二つ目は国民がそのプラットホームでイノベーションを行って付加価値の高い労働ができるような理想の教育プログラムと知識スキル、そして三つ目は適切なガバナンスによってフラットな世界の流れを勢いづけ、かつ管理すること。
とか
75ページ
教育レベルが低ければ、ローエンドの仕事しかない。そこに属するアメリカ人がどんどん増えている。でも、ほとんどのアメリカ人は、自分に高級職に就く能力がないというのが信じられない。
とか
87ページ
中国や日本の丸暗記中心の学習からは、アメリカと競争できるような革新者が大勢生まれることはないという考えは嘆かわしい間違いだとゲインは言う。
とか
102ページ
当時の大目標は強い国家を築くことだったが、現在の大目標は強い個人を作ることだ。
とか
112ページ
労働者に一番必要は筋肉は、職場などを変わっても持ち運び(移動継続)できる社会保障制度と、生涯学習の機会だ。なぜ、この2つなのか?労働者が転職したりするのに、最も重要な資産であるからだ。
とか
159ページ
メアリー・ハニー副首相が語った。「どん底に沈みかけたから、変わろうとする勇気が湧いたんです。」そしてアイルランドは変わった。これほど突飛な展開もめずらしい。政府、主な労働組合、農民、起業家が一丸となって厳しい緊縮予算に同意し、法人税を12.5%まで大幅に切り下げた。さらに給与と物価を抑え、外国の投資を盛んに勧誘した。1996年には大学教育を基本的に無料化し、さらに教育程度の高い労働力を創出した。
とか
162ページ
ロールス・ロイスのサー・ジョン・ローズCEOはいみじくもこう言った。「君の言うフラットな世界では『先進・発展・途上・低開発』という国の区分けはだんだん使われなくなるだろう。『賢い・より賢い・最高に賢い』国という言い方をするだろうね」
とか
179ページ
メキシコ開発研究センター所長ルイス・ルビオはこう言った。強い自信があったほうが、間違った社会通念や固定観念を勢い良く突き崩せる。1990年代初頭のメキシコが素晴らしかったのは、自分たちにはできる、うまくいくと国民が思っていたことだ。ところが、政府が改革を中断したため、近頃のメキシコではそうした自信が大部分崩れてしまった。自信がない国は過去ばかり考えるようになる。メキシコに自信が欠けているために、国民の誰もがアメリカはメキシコを騙して金を巻き上げようとしているなどと考えている。だからこそNAFTAはメキシコが自信をつけるために重要だった。
とか
190ページから240ページにかけて書かれている以下のような新しいルールなんて
ルールその1)
世界がフラット化すると、できるようになったことは何でもなされる。唯一の問題は、それを自分がやるか、自分に対してなされるかだ。
ルールその2)
ルールその1の副産物。できるようになったことは何でもなされる世界になったいま、もっとも重要な競争は自分と自分自身のイマジネーションのあいだでなされる。
ルールその3)
小は大を演じるべし。大物ぶるのがフラットな世界で小企業が繁栄する1つの方法だ。イマジネーションは必要だが、それだけではたりない。想像したものを工夫できなければならない。小が大を演じる秘訣は、より遠く、より速く、より深いところを目指し、共同作業の新しいツールをすみやかに利用することだ。
ルールその4)
大は小を演じるべし。顧客が大物ぶるように仕向け、自分は小物として振舞う。すべてを身につけるのが、大企業がフラットな世界で繁栄する1つの方法だ。
ルールその5)
優良企業は優良共同作業者である。フラットな世界では、多くの事業が企業内企業間の共同作業によって行われるようになる。理由はいたって単純だ。テクノロジー・マーケティング、バイオ・メディカル、製造のいずれかの分野でも、バリュー創出の次の階層は極めて複雑になるから、独力でそれをマスターできる会社や、部・課はどこにもない。
ルールその6)
優良企業は縮小るるためではなく、勝つためにアウトソーシングする。それは速やかに安くイノベーションを行うためのアウトソーシングであり、大勢を解雇して節約するのが目的ではない。それによってシェアを伸ばし、いろいろな分野の専門家をより多く雇う。
ルールその7)
会社としてどのように物事を行うかが現在では一段と重要になっている。
ルールその8) 世界がフラット化し、ぺしゃんこに潰されそうだと思ったら、スコップをもって内面を掘り起こせ。壁を築こうとするな。
なんて、刺さりまくりね。
あと325ページ
ヤフーの共同創業者ジェリー・ヤンはこういう中国政府高官の言葉を引き合いに出している。「国民が希望を抱く国には中産階級がいる」これは非情に有益な鋭い意見だ。地政学的安定には多数の安定したミドルクラスの存在が不可欠だ。しかし、ここでいうミドルクラスは収入の多寡ではなく、心の持ちようによって決まるものなのだ。
とか。
おいらの人生の教科書ですな。
いやはや、とんでもない本ですな。
- 作者: トーマスフリードマン,伏見威蕃
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タイトル:フラット化する世界 増補改訂版
著者:トーマス・フリードマン
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