著者:佐藤邦成
発行元:日経BP
デザイン思考の授業まとめ
まさに授業です。デザイン思考の概念も教えてくれますが、それにあわせてデザイン思考を実務に落とす方法をしっかりと教えてくれます。「え!そこまで細かく教えてくれるの!」ということから「ペンなんて、何使ってもいいんじゃね?」って言うレベルまでしっかりと教えてくれます。そんな本を読み進めていると、本当にデザイン思考の授業、ワークショップを受けているような気持ちになってきますよ。
デザイン思考の授業を読んだ理由
デザイン思考について知りたかったので
デザイン思考の授業で仕事に活かせるポイント
デザイン思考とマーケティングの違いですね。
デザイン思考:あくまで顧客が抱えている問題から、その問題が解消された世界を描く。世の中で既にある問題点を利客展にして考えていく。
マーケティング:事業者側が人工的に問題を作る。
デザイン思考の授業の目次
lesson0:はじめに 答えのない時代の必修科目 デザイン
lesson1:思考法 デザイナーから学ぶ新たな切り口の作り方
lesson2:マインドセット プロトライピングメソッド
lesson3:プロセス 創造的問題解決の羅針盤
lesson4:ツールと環境 創造モードへのスイッチ
lesson5:キャリア デザインというビジネス・キャリア
lesson6:経営戦略 デザインと経営
lesson7:幸福 デザイン思考は幸せに生きるためのライフスキル
対談(×山口 周)ビジネスがクリエイティブになるために、デザインすべき領域は?
デザイン思考の授業の感想
著者はいわゆるP&Gマフィアと呼ばれる方。P&Gでファブリーズやレノアのマーケティングを担当し、その後ソニーに転職し、新規ビジネスの立ち上げに携わった人。ソニー退職後にデザインファームBIOTOPEを立ち上げた人。バリバリのマーケターで、デザイン思考の専門家な人。しっかりとデザイン思考のお勉強はしている方ですけれど、元々が実務者なのす。そのため、この手の本にありがちな机上の空論的な話しがほとんどないのが、素敵です。
実務とアカデミック。その両方から成り立つこの本は、教科書であり、実用書です。そして、まさに授業です。デザイン思考の概念も教えてくれますが、それにあわせてデザイン思考を実務に落とす方法をしっかりと教えてくれます。「え!そこまで細かく教えてくれるの!」ということから「ペンなんて、何使ってもいいんじゃね?」って言うレベルまでしっかりと教えてくれます。そんな本を読み進めていると、本当にデザイン思考の授業、ワークショップを受けているような気持ちになってきますよ。
とはいえ、グサグサと心に刺さって、メモを残しておきたいのは概念的な情報が中心でしたね。
たとでば、「IDEOが体系化したデザイン思考は、ユーザー中心デザインとビジュアル思考を統合した方法」とかね。
知的生産の定義もしっかりとなされているのが素敵です。
知的生産=インプット(量/幅/消化効率)×ジャンプ(新結合/アナロジー/前提破壊)×アウトプット(凝縮/物語/体験)÷時間
とね。
あと、ソニーのような日本企業で働いたことのある著者なので、日本企業にはやさしい視点を持っています。
昔の日本企業にはデザイン思考があったと言うけれど、デザイン思考があったからソニーやホンダのような企業が生まれたと言うけれど、それは技術者と経営者と営業の距離が近く、試行錯誤しながら商品を世の中にリリースできたからだと思うのですよね。なので、ソニーや、ホンダだけでなく、京セラや、シャープなど、戦後の混乱期に生まれた企業はみんな当てはまりますよ。でも、売上が大きくなり、組織が大きくなったことにより、技術者と経営者と営業の距離がどんどん遠くなっていったんだよね。そして、失敗を許さない文化になっちゃったんだよね。
そんな日本企業をよく知る人だから、今まで私が思っていた「デザイン思考と従来型思考の違い」もわかりやすく教えてくれるのですよ。
通常の企画プロセスと、デザイン思考による企画プロセスの違いはこうなります。
【通常の企画プロセス(検証型企画/ウォーターフォール型開発)】
スコープが上から落ちてくる
↓
仮説検証のためターゲットユーザーへのリサーチ
↓
仮説の微修正/プレゼン
↓
エンジニアとSPECの確定【デザイン思考(探索型企画/アジャイル型)】
自分の周りや、トレンドリサーチによる課題発想
↓
課題探索のための先進ユーザーへのリサーチ
↓
ユーザー目線での課題再定義
↓
簡易プロトタイプ作りと検証
すごくわかりやすいですね。これ簡単な図表にして説明に使おう。
そして、個人的には本書のなかで一番刺さったのがイノベーションの世界におけるキャリア・パス。もう、従来型の職種じゃなくなるのよ。
こういう職種が出てくるのだと。
- デザインストラテジスト(リサーチ×デザイナー)
- UI/UXデザイナー(デザイナー×Webもしくはハードウェアエンジニア)
- ビジネスデザイナー(マーケター×デザイナー)
- UXプランナー(企画×Webエンジニア)
- デザインエンジニア
いやはや、すごくわかりやすい本ですね。
タイトル:世界のトップデザインスクールが教える デザイン思考の授業
著者:佐藤邦成
発行元:日経BP