著者:中鉢慎
発行元:かんき出版
まとめ
難題を解決するのに必要なのは、タフな交渉力ですな。そして、しっかりとスコープを握ること。握り続けること。当たり前すぎるけれど、当たり前のことが重要なんだよなぁ。そして、こちら側有利でタフな交渉をするためには、プロジェクトの全体像が見えていなければダメなんだよな。
この本を読んだ理由
いつも燃えた案件、めんどくさそうな案件のPMや、コンサルを行っているわたしです。自己流では限界に近づいてきたので、誰かに頼りたくて、この本を手に取りました。
仕事に活かせるポイント
全部ですねw
目次
序章 本書でプロジェクトマネジメントを学ぶべき理由
■すべての業務はプロジェクト化する
プロジェクトの成功を阻む4つのハードル
プロジェクトの成功をたぐり寄せるD3アプローチは
なぜ、プロジェクトに「型」が必要なのか
第1章 定義フェーズ
ゴールのないマラソンは走れない
STEP1 最終目標
急いでいる時ほど、じっくり考えろ!
■大きなゴールは細分化する
■マイルストンを設定する
成功するプロジェクトは終わりから逆算する
STEP2 対象範囲
「やらないこと」を宣言せよ!
成果の三要素を定義する
STEP3 利害関係者
関係者の影響力に左右されるプロジェクトの成功率
■思わぬ横やりが入らないように関係者を可視化する
■3つのコンフリクト(対立)を攻略せよ
期待され過ぎは禁物!?
■上がり過ぎた期待は下げることも必要
STEP4 阻害要因
氷山の下を潜って、リスクを探れ!
■「何が見えてないのか?」と自問する
■イシュー(課題)の解決に意識と行動を集中する
■リスクを洗い出す4つの手順
完璧主義者になるな!
第2章 デザインフェーズ
成功へのアプローチを自由に描け
STEP5 資源見積もり
見積もりには、誠意ではなく根拠を見せよ!
■見積もりでミスしないための4つのポイント
バッファは隠すな、共有せよ!
■最短目標達成率とバッファ消化率をバランスさせる
STEP6 体制構築
肩書きではなく、役割を定義する
■ピラミッド組織VSマトリクス組織
チーム運営では、弱みは無視して強みを活かす
■リーダーシップの本質は「犬ぞり」から学べる
STEP7 作業設計
大きな仕事は小さくわける
■リカバリーしやすくなる作業設計のルールとは
のうきをさゆうする「最長経路」を特定する
STEP8 規範設計
ルールは3つに絞れ
■ルールを見直すには?
ルールで会議を進化させる
■参加する会議の数は、最小限にする
■議事録は文字で書くな、グラフィックで表せ!
第3章 推進フェーズ
実行されない計画は「無い」に等しい
STEP9 変更管理
”ノー”と言うときは、代替案を示せ!
■変更要求に対する5つの手順
結論は一晩寝かせろ!
STEP10 組織運営
嵐をくぐり抜けて、強いチームを作れ
■混乱期にこそ、チームが進化する「ヒント」が隠されている
メンバーのパフォーマンスを的確に引き出すには
■権限を手放すと、楽になる
STEP11 問題解決
MECE神話を疑え
フレームワークに踊らされるな
STEP12 意志決定
リーダーに求められるのは、判断ではなく決断
意志決定プロセスは隠さない
■確証バイアスのワナに気をつけろ
12ステップのまとめ
感想
著者はアンダーセンコンサルティング、つまり今のアクセンチュアに新卒入社し、その後、プライスウォータークーパースに移り、プライスウォータークーパースがIBMに買収されたので、IBMビジネスコンサルティングサービスの人として、いくつもの激戦を生き残ってきたという勇者。もう、ここに出てくる会社名だけで「やるな」と思えてしまう。
そんな著者の経験から生み出されたのが本書。ありきたりなフレームワークの紹介や、理想論に終始しているわけがない内容。これからコンサルタントになる耐人に向けてと言うよりも、「現場で火消しばかりやってて大変です」という人に向けて書かれた内容(だと思っている)。
本書のキモはD3アプローチという、著者が生み出したメソッド。D3アプローチという方法で、プロジェクトを終結・成功に導く流れが紹介されています。で、肝心のD3とはDefine(定義)、Design(デザイン)、Drive(推進)という3つのフェーズから成り立ってます。
まるごと一冊、表紙から裏表紙まで、そのまますべてが仕事に活かせるすてきな本書です。が、「これは個人的に覚えておかなきゃならないな」と感じたポイントのみ、ここに記しておきます。きっと、違うタイミングで読んだら、違う箇所が重要に感じるのだろうな。
で、本題。
プロジェクトというのは「独自の製品、サービス、所産を創造するために実施される有機性の業務」である。なので、プロジェクト開始時には①達成すべき明確な目標②達成するまで許容された時間③達成するために必要な人員④達成するまでの手順、の4点が決まっていなきゃダメなのだ。それも誰が見ても「おお、そうなのね」と認識できるレベルで決まっている必要があるのだ。
さらに突っ込むと「①達成すべき明確な目標」はSMARTである必要があるのだとな。SMARTとはSpecific(具体的な)、Measurable(測定可能な)、Achievable(達成可能な)、Reault oriented(結果志向な)、Time bound(時間内にできる)の頭文字で構成されてるのだと。このSMARTな目標を立てることができたら①~④はそもそも達成できちゃうなw
しかしね、「①達成すべき明確な目標②達成するまで許容された時間③達成するために必要な人員④達成するまでの手順」の4点セットをしっかりと定義するにはプロジェクトの全体像が見えている必要があるのです。でもですね、これから作る新しいものがプロジェクトなのですから、そう簡単に全体を見ることができない。そういう場合に役に立つのは「終わりからプロジェクトを考える」ということ。つまり、プロジェクトを逆算すると言うことだ。この逆算思考の例として本書で取り上げられているのが、Amazon。Amazonは顧客視点をスタート地点にするため、開発前にプレスリリースを作成しているのだという。プレスリリースを先に作ることで、ターゲットや、ターゲットが抱える課題、ターゲットに提供できるメリットが明確化されるのだという。
これ、まねしてみよう。
で、本題に戻ります。
こうやってはじめたプロジェクトであっても、揉めるときは燃えるんですね。で、この「やばい!大変だ!」というときにはリスクや、問題、課題を解決していくわけです。
ちなみに、著者は「問題が発生するポイント」、つまり「プロジェクトの成功を阻むもの」を次のように定義しております。
その1 要望/ニーズを的確にとらえられてない、達成すべきゴールが明確ではない
その2 非現実的なプロジェクト計画、フェーズごとに責任者が分断、リスク多雨応不十分
その3 役割分担が不明確、メンバー/チーム間のコミュニケーション不全、スキル不足
その4 現場に丸投げ、当事者意識の希薄さ、変更管理/意志決定プロセス不全
そういうところに、リスクがあるんだなぁ。問題があるんだなぁ、と。ところで、みなさん、リスクや、問題、課題の意味をそれぞれ正しく認識していますか?という問いかけに対して、わたしは正しく認識していませんでした。じゃあ、それはどのような定義なのかというと、著者は次のように定義していました。
リスク…潜在的な阻害要因
問題…顕在的な阻害要因
課題…取り組むべき問題の原因
まったく、ちゃんと認識しておりませんでした。そして、リスクというものは「あるべき姿と現在のギャップの量に比例して、リスクが増えていくのですと。これも知りませんでした。
そして、このようなリスク・問題・課題というのはプレイヤー&ステイクホルダーの対立から生まれるわけです。で、対立した際には「なんで、あいつは理解してくれないんだ!プンスカ!」と怒るだけでなく、「反対派にも反対するだけの理由があるんだな」と、一歩引いて考えることが重要になるんですとな。一歩引いて考える。冷静に考えることが、問題を解決する際に必要なんだって。
で、対立する条件を考えてみると、それぞれ「認知のコンフリクト」「利害のコンフリクト」「感情のコンフリクト」に分類できるのだとな。今の対立はどんな軸に分類できるのか?ということを考えて冷静に交渉することが大切なのね。
やはり、コミュニケーションが何よりも重要だってことだよな。お客様とコミュニケーションをして、しっかりとスコープを握ること。当たり前だけれど、これにつきるんだよな。へんなフレームワークとか使わないで。
タイトル:外資系コンサルが教える難題を解決する12ステップ プロジェクトリーダーの教科書
著者:中鉢慎
発行元:かんき出版