著者:井上隆智穂
発売元:東邦出版
目次
第1章 リアル・タキ井上
第2章 F1ドライバーへの道
第3章 日本人4人目のフル参戦F1ドライバー
第4章 レーシングドライバーの条件
第5章 真実のF1ドライバー育成システム
第6章 ガラパゴス・ニッポン・レーシング
第7章 F1マネー・ダイナミクス
感想
◆著者は過去20年間で最悪のF1ドライバー◆
F1好きでないと知らない日本人F1レーサー、それが井上隆智穂。通称タキ井上。自動車メーカやエンジンサプライヤーに目をかけられて、その育成システムに乗っかってF1までたどり着いた多くの日本人F1ドライバーと異なり、ほぼ自力でF1までたどり着いた異色の経歴の持ち主。
なので、多くの日本人F1ドライバーで走らないような裏の掟が本書には書かれている、と。
いや、裏ではなくて、正式なF1村の常識なんだけれどね、と。
現在、著者はモンテカルロ在住で、ユーロノヴァ・レーシングチームのオーナー。そう、レースチームのオーナー。F1以外のヨーロッパじゅうの様々なレースにに参戦しているチームのオーナー。スーパーアグリでF1に参入した鈴木亜久里よりもヨーロッパのレース業界にどっぷり使っているお方である。
なので、日本の自動車雑誌には全く書かれていないようなことがぎっしり書かれている。
なかでも、一番びっくりしたのが、日本のレース界には、レースに参戦するための価格表が無いということ。だから、新たにレースを始めようとしても、いくらかかるのかわからないということだ。
F1をはじめとしたヨーロッパ、もちろんアメリカもレース業界には価格表があると思っていたのですが、世の中の人しいはそうではないということを知って、ワタシ、ソッチのほうがびっくりしちゃいましたよw
◆レースセンスよりもビジネスセンスが優れていたプロレーサー◆
で、自身が現役の時は自らスポンサー獲得にまわり、引退後はチームオーナーとしてビジネスをしていたタキ井上の、ビジネスセンスが素晴らしかったりもする。
たとえば136ページ
そこ(情熱や闘争心よりも根性が重要である)を勘違いしているから、スポンサー探しの営業に行っても、チンプンカンプンになってしまいます。人を心を動かすのは、気合ではなく、情熱です。頭を坊主にした人が気合だけを全面に出して「お金を出してください」と営業をかけたら、危ない人と勘違いされて警察を呼ばれてもしかたありません。
こんなセリフ、営業をやっているサラリーマンだって、すんなりとは出てこないでしょう。
また、厳しい現実を知っていたりするので、
ただ、ここで勘違いしないで欲しいのは、スポーツはお金がかかるということではなくて、上達するための技術は無料ではないということです。好きだからだけで、朝から晩まで練習しても、ダメなものはダメで、プロのレベルまでレベルアップするには、その道のプロのコーチに教えてもらわないといけないのです。そして、それを行うにはお金がかかるということです。
(136ページ)とか
速いマシンに乗れば勝つのは当然です。でも、速いマシンかどうかは、F1に乗るときに考えればよく、それまでは自分のマシンが速くなるように以下にセットアップするかとか、万全なセットアップでなくても早く走ることができるようなスキルを学ぶべきなのです
(166ページ)とか、なかなかビジネス書でも出てこないような、重みのある台詞が書かれていたりするのです。
でもね、タキ井上は、面白い人でもあるのですよ。そんな才能が散りばめられているセリフも多数収録されている。そんなタキ井上のコメントでグサグサ来たのがこれらですね。
- 何事も一番でなければならない。二番じゃダメなのである。マクラーレンのロン・デニスの言葉に「2位は敗者のトップにすぎない」というのがある
- 1年前の自分といまの自分を比べてみろ!それが、答えだ(汗)!
- 3年後の自分をイメージ出来ない奴は、3年前の自分を懐古しているからだ(汗)!
- できないやつほど仲間意識が強くリーダーを作って群がるものだ(汗)!サルの群れがいい例だ(汗)!
- 「頑張ります」って言ったやつで頑張れた奴を見たことがない!「頑張ります」って言う奴は、その次は、「次頑張ります」と言う運命にある!
タキ井上、あなたはすごいよ!
タイトル:リアルな裏F1
著者:井上隆智穂
発売元:東邦出版
おすすめ度:☆☆☆☆(車好きな人は是非読むべき)