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巨怪伝 下巻 正力松太郎と影武者達の一世紀

 

著者:佐野眞一

発行元:文藝春秋

 

巨怪伝まとめ

戦犯として逮捕されるも、その後復帰した正力松太郎。現場に復帰後は読売新聞の部数を伸ばすだけでなく、テレビ放送や、原子力発電の導入、そして、政界進出など精力的に活動をしてきた。その中には、もちろんプロ野球も含まれている。プロ野球を国民的スポーツにするため、様々な策を行ってきた。その中の1つが天覧試合の開催である。天覧試合の描写から始まる本書において、最大の見せ場、クライマックスなわけです。しかし、そこから、正力松太郎が変わっていく。まさに老害。天下国家のためが、いつの間にか自分の名声のためになり、その名声を守るためとなってしまう。いやはやなんとも。この本は正力松太郎をモデルにした、日本近現代史の教科書であるともいえる。

 

巨怪伝を読んだ理由

正力松太郎が気になったので

 

巨怪伝で仕事に活かせるポイント

どれだけ人を使いこなせるか?ですな。ナベツネのようになってはダメなのよね。

 

巨怪伝の目次

復権と球場

国土と電影

原発と総裁

発火と国策

天皇と興業

宿業と花輪

蓋棺と磁力

 

巨怪伝の感想

読売巨人軍、そして読売新聞のドンと言えば、ナベツネこと渡辺恒雄。この人は正力松太郎と務台光雄の時代が終わってから、権力を手に入れた人なのよね。大正力こと正力松太郎といえば読売新聞社中興の祖であり、日本プロ野球の父であり、テレビ放送の父であり、日本におけるプロレス界のドンであり、日本における原子力発電の父であり・・・まぁ、肩書きがいっぱいある人だ。務台光雄はそんな正力松太郎の陰となることもあれば、正力松太郎を批判し、読売新聞を世界最大の発行部数に育て上げた人でもある。

実業家と興行師の両面を持つこの2人に比べると、ナベツネさんはまだまだ器が小さいなぁ・・・と。東大卒の元共産党員だったナベツネさん、権力を手に入れれば入れるほど、自分の周りをイエスマンで固めるようになってきた。清濁併せのむ豪快さ、目的のためなら手段を選ばない肝の据わり方があった、正力松太郎とは大きく違うのだな、と。

とはいえ、そんな豪腕を震えたのは、コンプライアンスもへったくれもない戦前戦後の混乱期や、高度経済成長期だったからなのかもしれない。いま、そんな豪腕を震える余地がそもそもないしな。新聞社の社長も、経済界のお偉方も、官僚も、政治家も、この本に出てくるようなギラギラ感は一切ないからね。

だから、ナベツネさんも、明治時代に生まれていたら正力松太郎のようになっていたのかもしれないね。

とりあえず、2人とも晩節を汚しているのは同じなんだよね。老害なのはどちらも同じ。あまり、年寄りが出しゃばっちゃダメなんだよな。

 

 

 

タイトル:巨怪伝 下巻 正力松太郎と影武者達の一世紀

著者:佐野眞一

発行元:文藝春秋