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マンガ「グラゼニ」が大好きな、ウェブ系の何でも屋さんが綴る、仕事とか、読んだ本のこととか、日常とか、世の中に関する忘備録。

入門+実践 要求を仕様化する技術・表現する技術―仕様が書けていますか?

著者:清水吉男
発売元:技術評論社

 

目次

第1部 要求仕様にまつわる問題
第2部 要求仕様を書く
第3部 要件管理と計測

 

感想

 

すごいや、この本。

 

プロジェクトが燃えてしまう大体の理由が、要求仕様の漏れ。

 

もしくは、要求で夢見てしまったクライアントと、開発側のギャップ。

 

言わば田植えというか、イネの発芽といえるような要求仕様書の作成をちゃんとしましょうよね、というお話。

 

平たく言うと、曖昧さをなくし、しっかりとわかり易い文章で要求仕様書を書きましょうという話なんですけれどね。

 

「それが一番難しいんじゃ!」と突っ込まれそうですけれどね。

 

その方法が「第2部 要求仕様書を書く」にしっかり書かれておるのです。

 

第2部の中身は

 

・要求の役割
・要求には「範囲」がある
・要求の表現
・要求表現の難しさ
・「範囲」をあらわしているか
・すべての”動詞”を表現しているか
・要求には「理由」がある
・なぜ「理由」にこだわるか
・要求と理由でセット
・慣れないうちは理由に要求がまじる
・必要なら「説明」を付ける
・要求の理解を助けるもの
・用語集への展開
・要求のカテゴリ化
・コンテキスト図でシステムの境界を明確にする
・システムの世界を分割する
・要求のモレを防ぐことが重要
・品質要求を確認する
・品質要求の表現
・機能に付随する品質要求
・製品・システム全体に属する品質要求


となっております。

 

この中でも刺さったのが「理由」って箇所だな。

 

なんでその機能が必要なのか?そもそもその機能が必要なのか?その定義っていうか、それがはっきりしていなきゃ、何も出来ないよねって話だよな。

 

「ダイエット」したい理由は何か?で、ダイエットの方法は大きく異なってくるものね。

あとは「第8章要求を仕様化する」ってパートですな。

 

仕様とはそもそも何か?それは

 

仕様とは、要求(実現してほしいこと)を満たすべき”具体的な振る舞い”の記述

なんだよな。

その記述内容が特定できる書き方になっていないとダメなんだよな。

 

あと

「否定表現」などの曖昧な表現を避ける

もよい。

 

否定文だと、いろんな条件で推察できちゃうからな。

 

推察しちゃダメなんだよな。


IF モードが”待機”のとき THEN受信したデータを加工しない

って記述にするのよね。

 

いやいや、この本、勉強になるね。

 

 

[改訂第2版] [入門+実践]要求を仕様化する技術・表現する技術 -仕様が書けていますか?

[改訂第2版] [入門+実践]要求を仕様化する技術・表現する技術 -仕様が書けていますか?

 

 

洲崎球場のポール際―プロ野球の「聖地」に輝いた一瞬の光

著者:森田創
発売元:講談社

 

目次

1st.イニング 洲崎散歩
2nd.イニング プロ野球誕生のタイムマシン
3rd.イニング 国民新聞大東京軍
4th.イニング 日本晴れに生まれたオンボロ球場
5th.イニング 初優勝を狙う沢村栄治とライバルたち
6th.イニング 熱狂!師走の洲崎シリーズ
7th.イニング 「伝統の一戦」、ここにはじまる
8th.イニング 昭和12年の球春と残された時間
9th.イニング 生と死のポール際

 

感想

その昔、洲崎球場という野球場があった。

 

場所は東陽町

 

今の江東試験場の近くに。

 

まだ東京に後楽園球場はなかった時代、神宮球場大学野球のメッカであったため、洲崎球場は職業野球、つまりプロ野球の試合が都内で開催される数少ない球場だった。

 

東京の都心部でなくて、なぜ、東陽町に野球場が作られたのか?

 

その要因から、戦前に野球というスポーツが置かれていた状況、生まれたばかりのプロ野球の試合の流れとプロ野球選手について、そして洲崎球場がなくなり、戦況が悪化したところまで、しっかりかかり描かれている一冊。

 

洲崎球場という埋立地に作られたバラック小屋のような球場を中心に、描かれている戦前の様子に引きこまれますわ。

 

この本、野球好きのための本というよりも、歴史好き、東京散歩が好きな人向けの本だね。

 

 

洲崎球場のポール際 プロ野球の「聖地」に輝いた一瞬の光

洲崎球場のポール際 プロ野球の「聖地」に輝いた一瞬の光

 

 

「IT専門調停委員」が教えるモメないプロジェクト管理77の鉄則

著者:細川義洋
発売元:日本技術評論社

 

目次

1 提案と見積り
2 契約と法務
3 要件定義
4 プロジェクト体制
5 プロジェクト計画と管理
6 開発方式とシステム形態

 

感想

この本は使えますな。

著者は東京地方裁判所調停員・IT専門医院、東京高等裁判所IT専門委員。

で、元NECソリューションイノベータや、日本IBMにいた人。

 

なので、燃えたプロジェクトの当事者であったり、第三者として燃えたプロジェクトの調停を行っていたりするわけですよ。

 

なもんで、いろいろ出てくる燃えないポイントというのが、超リアル。

 

例えば26ページには「ちゃんとRFPを書かないと、燃えるぞ」って書いてあるんですけれど、じゃあ、RFPに何をかけばいいのかというと、それがちゃんと書いてある。

 

それは

 

【基本情報と提案依頼の目的】
・ユーザの基本情報(業種、業態、組織、提供するサービス等)
・システムのサービス導入の背景(経営方針およびシステム化方針、等)
・開発/サービス導入の目的(期待される効果・メリット等)
・想定するシステムやサービスの概要(想定業務フローを含む)
・使用者に関する情報(部門および業務的な役割、人数等)
・マスタースケジュールとマイルストン等


【提案を依頼したい事項】
・サービス範囲や作業範囲(対象システム/サブシステムや工程等)
・役割・責任分担(ユーザとベンダの作業分担)
・想定するシステム開発手法、プロジェクト管理手法
・想定する成果物
・要件概要(機能要件/非機能要件)
・新システム/サービスに関する社員教育の要望
・その他要件検討事項および未決定事項
・提案書の目次、体裁、提出期限、提出方法、選考方法等

 

と、しっかりまとめられておりますわ。

 

これに則って、RFPをまず作れ、作ってもらえ、と。

 

RFPは「ワガママ」と「代替案」の応酬なんだとな。

 

で、それを受けての提案書の内容も、書かれておりますわ。

 

例えば、システム開発の場合は・・・

 

【現状理解とシステム化の目的・方針についての認識】
・ユーザの状況、事業規模と解決すべき課題についての認識
・システム化の目的と方針・メリットについての認識
・既存システムについての認識
【新機能とその要件】
・新業務フローとシステム化範囲
・業務用件概要

 

【新システムの要件概要】
・開発にあたっての前提事項・制約事項についての認識
・システムの基本要件・基本機能
・画面や帳票イメージ他ユーザエクスペリエンス概要

 

【新システム構成概要およびソフトウェア、ハードウェア】
・システム概念の説明
・システム構成概要
・使用するハードウェア、ソフトウェア一覧およびその特徴・優位点
・ネットワーク機器

 

【プロジェクト計画概要】
・全体計画と当プロジェクトの位置づけ
・開発方針
・マスタスケジュール
・システム以降の方針と計画概要
・ユーザとベンダの役割分担概要
・体制およびメンバのスキル・略歴

【プロジェクトの進め方】
・プロジェクト管理方針(進捗、リスク、課題、そのたSOWの管理、構成管理)
・コミュニケーション計画(会議体、各種報告)
・当社のプロジェクト管理標準および開発標準
・当社の品質保証の仕組み

 

【納入後について】
・納入後の保守サービス
・納入後の保守体制
・保守の方針と概要

 

【その他】
・ユーザへの依頼事項
・特記事項 

 

なのですとな。

 

ちなみに、よく紛争事項になる箇所が

 

●システム化の目的と方針・メリットについての認識
●システムの基本要件・基本機能
●ユーザとベンダの役割分担概要
●コミュニケーション計画(会議体、各種報告)
●開発方針

 

なのですとな。

 

あと、ちゃんとユーザ側の都合で作業が変更になることも、きっちり書いておきましょうと。

 

んで、ユーザにやってほしいことは具体的に、それも全て書き出す必要があるのだとな。

 

で、WBSはしっかり作れ、と。

 

WBSは成果物ベースでちゃんと作るようにとな。

 

あと、かなり重要なのが課題管理。

課題管理は下記の項目でちゃんとするように、とな。

 

●課題完結担当者
●課題の重大度
●課題対応策
●解決策着手日
●解決日
●課題解決状況

 


そして、議事録。

議事録はIT調停での切り札になるそうな。

ちゃんと作ろう。

で、一番刺さったのが140ページ似合ったこのフレーズ。

危機の察知と共有こそが信頼の元

 

人間関係こそが全てな。

 

モメないプロジェクト管理77の鉄則

モメないプロジェクト管理77の鉄則

 

 

黒幕 巨大企業とマスコミがすがった「裏社会の案内人」

著者:伊藤博
発売元:小学館

目次

第1章 「黒幕」の誕生

第2章 マスコミを動かす、捜査権力を動かす

第3章 巨大企業の「守護神」として

第4章 「内調」「政治家」から「右翼」「暴力団」まで

 

感想

 

原俊介という人がいた。情報誌『現代産業情報』の発行人。ジャーナリストといえばジャーナリストであり、ライターといえばライターであるが、ぴったり当てはまる言葉がない。21世紀にはなかなかお目にかかれないというか、存在しないタイプの人間。敢えて言えば朝堂院大覚が同類かもしれないけれど、それは一部分でしか同類ではない。

 

政界、財界、官僚、マスコミ、闇世界・・・自分のポリシーだけを貫いて、それら世界を縦横無尽に移動し続けた石原俊介。その人に迫るドキュメンタリー。

 

とはいえ、この本を読んだのは「昭和の日本の闇世界を知りたかった」というわけではない。情報だけを武器に戦後の日本の裏表を自由に行き来した、その方法を知りたかったから。

 

そう、情報のプロが、どのように情報を扱っていたのか?を知りたかったから読んだのですよ。

 

原俊介すごいんですよ・・・という記述が溢れる中から、石原俊介が情報に対してどのように相対していたのかを拾っていくわけですが、本書の冒頭22ページに「そもそも石原が考える情報とは何か?」がきっちり記されているのですな。

それは

石原が世間的に無名だったのは、『現代産業情報』が、“プロ”だけが手に取る読み物だったからである。発行は月に2回で、購読料は法人12万円、個人3万6000円(年額)。高額なので一般の人は買わない。
では、誰なのか。第一勧銀の捜査展望をほしいのは第一勧銀であり、社長室がマスコミに隠し撮りをされた情報がほしいのはリクルートである。他にも、そうした情報を、喉から手が出るほど欲しいと思っていた人間や企業、団体は少なからずいた。「情報」の価値を知るものだけが購入していたのが石原の情報誌だった。

 

多くの情報がネット上で「無料」で手に入れることができる。そんなネットの時代ではナナカナ考えにくいですが、ネットの時代だって、お金を払わなければ上質な情報を手に入れることが出来ないのは同じですよ、と。

 

情報誌という形に近しい媒体は『FACTA』(これ、本書に出てきます!ラッキー)くらいしか無いですが、Foresightも似たようなものですし、ホリエモンや、藤沢数希、山本一郎が発行している有料メルマガだって、言ってみれば21世紀の情報誌ですわな。まぁ、購読していないからといって、会社の前に街宣車が来たりとか、1個1000円のおしぼりをダンボール単位で変えとかは言われませんが。

 

無論オムロン、ダメダメな有料サイトや、有料メルマガもあります。それは20世紀の情報誌だって同じです。1本20万円の観葉植物レンタルと同じ意味をもった情報誌のほうが多かったわけですから。『現代産業情報』はそうではなかったから、多くの人を惹きつけ、生き残ったわけですよ。

 

では、なぜ石原の『現代産業情報』にはそのような力があったのかというと、旧日興証券の和田優博乗務はこう語っているのです(53ページ)。

 

惹かれたのは人間観察の鋭さ。“その人間が持っている情報だけじゃなく、生活している環境や、思想・心情まで踏み込んでみなければ、その情報の持つ価値がわからない”という彼の意見は、広報マンとしても参考になった。

 

上っ面だけでなく、情報が持つ本質というか、情報を発信する人間の中身まで迫っていたから、『現代産業情報』のクォリティは高かったんでしょうね。これはWebの世界で情報を探すときにも応用できることですね。

 

日本の黒幕、フィクサーと呼ばれるような石原俊介。では、笹川良一のような金や、山口組組長・岡田一雄のような暴力装置を持っていたのかというと、そうではなかったと。情報だけが武器であった、と。

 

それを裏付けるのがリクルート事件時にリクルートの広報課長だった田中辰巳(リクルート事件後はリスク・マネジメント会社を立ち上げる)は次のように語っている(113ページ)。

 

石原さんに事件を左右する力はないし、マスコミ報道を止めることもありません。ただし、情報を収集し、分析し、それを発信する能力は格別でした。

と。

同じような話を元警察大学校校長で内閣情報調査室で働いていたこともある山崎裕人も、次のように語っている(228ページ)

 

石原さんのどこが凄かったか。石原さんは日々入ってくる膨大な情報を、頭のなかの無数の引き出しに仕分けして記憶していた。ある出来事が起こると、それに関連する情報を適切に取り出すセンスが卓越していた。それを元に、政局はどう動き、事件はどう展開し、経済はどうなるのかを正確に予測できる人でした。

 

と。

また、前述の田中は313ページのあとがきで

 

情報のプロには、収集力、分析力、発信力、機密力の4つが必要ですが、石原さんはどれもが卓越していました。

 

とも語っている。

 

ネットの普及と検索エンジンの発達で、無限の情報に簡単にアクセスできるように感じていますが、検索エンジン検索エンジンアルゴリズムでしか情報を探してきてはくれません。情報の探し方をGoogleにばかり頼っていると、Googleの思い通りに動く人間が出来上がってしまうわけです。分析力と発信力と機密力も同じです。BIや機械学習がどんなに簡単に使えるようになっても、ソーシャルがどんなに発達しても、セキュリティがどんなに向上しても、それに頼ってばかりでは、何も考えない人間が量産されるだけになってしまいます。

 

そうならないためにも、自分で情報を取りに行かなければ。金を払ってでも、必要な情報を取りに行かなければと思うわけですよ。そして、分析して、発信していこう、と。守るべき情報はちゃんと守ろう、と。

 

最後に。僕の重要な情報源でもあるFACTAに関する記述が288ページにあります。SFGCに関する章に出てくるのですが、FACTAの読者であるので、「あぁ・・・」と納得できることばかりです。

で、そんなFACTAがどのように紹介されているのかというと。

 

FACTA』発行人の阿部重夫は、元日本経済新聞記者で、退社後に会員制月刊誌『選択』の編集長を経て、2005年11月にファクタ出版を立ち上げた。阿部もまた、石原に連なる人脈である。新聞記者時代の1990年頃に知り合い、『現代産業情報』が持つ膨大な情報量に驚いた。それ以来「いい関係」を築き上げてきた。だが、振興銀報道で決定的に衝突。以降、石原が亡くなるまで顔を合わせることは出来なかった。

 

うむ。これからも、きっちりとFACTAを読んでいこう。

 

で、個人的に、21世紀の石原俊介ってFACTA阿部重夫ではなく、元切り込み隊長の山本一郎な気がしますわ。阿部重夫は第2の石原俊介。石原俊介のビジネスモデルといいますか、情報を分析して、その力で独自の地位を気づいていると言ったら、山本一郎ではないかと。

 

 

 

植民地共和国フランス

 

著者:N.バンセル、P.ブランシャール、F.ヴェルジェス
翻訳:平野千果子菊池恵介
発売元:岩波書店

目次

第一章 植民地共和国

第二章 「植民地国民」なるものの起源へ

第三章 文明化の使命の権利と義務

第四章 共和国の人種と国民

第五章 植民地共和国の遺産

 

感想

フランスというのは、現在、もっとも海外領土や、海外県を有している国なのです。大英帝国よりも、アメリカよりも、ポルトガルやスペインよりも、海外に領土を持っている。そんな海外の領土は、つまり、昔の植民地。

 

フランスは、なぜにいまも植民地を持ち続けることができるのか?いや、植民地じゃないけれどね。その謎が知りたくて読んでみた。

 

のだけれど、「そもそもなんで植民地が出来たのか?」「植民地を統治する理由ってなんだったのでしょう?」というところが徐々に知りたくなってきた。だって、フランスって、第二次大戦後、日本がインドシナ半島から撤退したからって、再度やってきたんだよ。今のヴェトナムを再占領したんだよ。

 

なぜ、そんなことが出来たのか?

 

その答えっぽいことが51ページに書いてあった。

 

植民地権力とは、つねに「命令」と支配という論理を含みもつものである。この点についてはカメルーン出身のポストコロニアルの理論化アシル・ムベンベが、また時代を遡ればすでにマルチニック生まれの詩人で政治家のエメ・セゼールが、大変良く示している。統治する、命令する、文明化する、というのはこの論理の3つの側面である。命令とは、「人間にも、事柄にも、いわゆる公共の分野にも適用される主権の形態である。それは絶えず道徳と経済と政治についての要請をないまぜにしている」。植民地化は、植民地支配下においた者たちの道徳的行動を変え、労働させ、服従させることをめざしている。植民地国家は万人に幸福をもたらすと自任するのだが、被植民者の幸福とは、隷属の状態を受け入れ、支配者の命令に服することとされる。もし反抗しようものなら、隷従を強い、必要に応じて罰しなければなるまい。なぜならフランツ・ファノンが指摘するように、被植民者は構造の面から考えても、また生理学的にも、精神分析的にも、植民地化という行為の意味を理解することが出来ないとされるからである。

 

すげぇ上からめさんの物言いだな、と思いつつも、これが20世紀中頃までの一般的な考え方だったんだなと思うと、びっくりしてしまう今日このごろですわ。

 

 

植民地共和国フランス

植民地共和国フランス