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2030年の広告ビジネス デジタル化の次に来るビジネスモデルの大転換

 

著者:横山隆治/栄枝洋文
発行元:翔泳社

 

2030年の広告ビジネスまとめ

広告がどんどんどんどん進化している。枠売りのマス広告が、運用型のウェブ広告にシェアを奪われ、枠売り広告の主人公だったテレビCMにも運用型が登場した。どんどんどんどん進化する広告というビジネスモデルにあって、これから迎える2030年に向けてどうすればいいのか?ということを教えてくれる1冊。もう、濃密な人間関係を作って、その関係性で広告枠を売っていくのではなく、運用型広告で一定以上のリターンをコンスタントに求めるだけではないのだよね。もっと上流にまで手を伸ばし、ビジネス自体のコンサルティング、戦略設計ができる必要があるのだよね。その手段の1つが広告になるというお話。

 

2030年の広告ビジネスを読んだ理由

少しばかり広告に関わる仕事をしているので

 

2030年の広告ビジネスで仕事に活かせるポイント

2030年まで続くトレンドですね。
①「マーケティング支援」から「事業支援」へ
②「日本コーカルのデジタル化」対「グローバルデジタル」
③広告クリエイティブのAI化が本格始動
④エージェンシーとSIerの連携協業が始動
SNS起点のコミュニケーションプランニングはCMクリエイティブまでに到達
マーケティングコンサル対ITコンサルの攻防激化
⑦ユーチューバービジネスの終焉とコンテンツの見直し~テレビ番組の凋落も続く~

 

2030年の広告ビジネスの目次

2030年まで続くトレンド
第1章 この10年の変化とコロナ禍による前倒し現象
第2章 広告とマーケティングの「変化」は経済の「先行指標」
第3章 データ利活用の常識が逆転して非常識に
第4章 マーケティングはどう変わるか?
第5章 「広告(会社)」「マーケティング」という呼称定義が常に拡張している
第6章 メディアはコネクテッドTVの時代に
第7章 激変する業界地図
第8章 広告代理店のビジネスモデルの激変
第9章 次世代広告人に求められる機能とスキル

 

2030年の広告ビジネスの感想

インターネット、スマートフォンSNSの発展によって大きく進化した広告。広告が進化したことで、広告に付随する様々なことが変わり始めましたよ、ということを教えてくれる本。

 

その付随することがあまりにも多く、そして変化の幅があまりにも大きく、びびってしまうヒトも出てくるのじゃないかと。

 

ということで、広告に付随するモノの中でとても大きな代理店、エージェンシーの話しから。

 

エージェンシーがマーケティング領域だけで思考していては限界があるのです。エージェンシーは外部ネットワークであることから、またクリエイティブ発想でビジネスデザインができることから、またクリエイティブ発想でビジネスデザインができることから、事業支援にまでその領域を拡張しなければなりません。そうしないとマーケティング支援も機能しないといってもいいかもしれません。

 

では、事業支援はどうすればいいのか?何をするのが事業支援なのかというお話ですが、それはこういうことです。

 

ビジネスの現場、つまり「出口」から設計するのが「事業支援」であり、いわゆる「エグゼキューション」を伴います。エージェンシーが一つ優位な立場にあるのは、メディアバイイングを含め、マーケティング施策の実施・実行を行っている経験があることです。

 

業務支援や、マーケティングの領域に入り込んできているのがエージェンシとITコンサル&SIerなのです。

企業経営者にとっては従来のITコンサルは「経費」でしたが、マーケティングコンサルはうまくすれば儲かる「投資」になってきます。経営者にとっては、ここが重要。実際に何をやるか理解できなくても、儲かる、PLに反映させる手段と認識されると市場ができてくる。

 

このように動き始めた時代に合って代理店の営業は全体を見渡してのプロデュース、全体最適を目指してコントロールする役割が求められるようになります。全体の指揮者としての機能が求められてくるのです。

 

コミュニケーションチャネルが増え、代理店の営業に求められる役割が変わってきている時代です。消費者の動きを定義するモノも変わり始めます。今まで消費者の動きはファネルとして定義されてきましたが、複数発生するコミュニケーションの流れをファネル理論で説明できなくなっているのです。また、カスタマージャーニーもおなじです。双六のように全ての消費者が、全て同じスタート地点からコミュニケーションが始まる時代ではなくなっているのです。双六のようなカスタマージャーニーからビンゴのようなフレームワークでパーセプションチェンジを整理するようになるのです。

 

では、パーセプションチェンジを整理するビンゴカードはどのように作るのか?というと、まずヒト・モノ軸×パーソナル・世間軸という4類型からなる、オーディエンス型、トラスト型、ナレッジ型、ディスカバリー型の4種類でビンゴカードを作るとよいのです。

 

消費者の行動を整理するフレームワークが変化するくらいですから、消費者に伝えるメッセージの作り方も変わります。テレビの時代に用いられていたクリエイティブブリーフも変化してきます。テレビの時代に用いられていたクリエイティブブリーフは送り手側に主導権があった時代の元であって、受け手側に主導権がある時代には使えません。USPもセリングプロポジションとしてではなく、バイイングプロポジションとして「買い手」サイドに視点を持ってくることが必要になります。そして、注意すべきことは「買い手」は一人ではない、ヒトによって価値観が違い、複数の文脈があるということを念頭に置きます。つまり、差異を選択するのは「受け手=買い手」であり「送り手=企業」ではないということです。

アウトプットがアナログであっても思考がデジタルであればDXですし、アウトプットがデジタルであっても思考がアナログではDXではない。なので、SFAツールや、MAツールを導入しても、アナログ思考の業務を一切整理せず、ツール側を魔改造して導入しても、遅かれ速かれその方法は破綻してしまうのです。

 

代理店に求められるモノが変わるのだから、消費者も変わるし、広告も変わる。代理店、消費者、広告が変わるのだから、メディアも変わります。旧来的なTVに対して動画配信プラットフォームが登場しました。動画配信の2大巨頭がNetflixとディズニー+です。この2サービスは動画配信プラットフォームとしてくくられますが、ビジネスモデルは全くちがいます。ディズニー+は広告収入という大きな売上の柱があるのでB2BNetflixは視聴者から集める視聴料が売上の大きな柱になるのでB2Cになるのだと。ただ、そんなNetflixも、遂に広告配信を始めるという時代に。B2CだったNetflixB2Bの面も出てきたという!そして、そんな広告の配信パートナーに選ばれたのがMicrosoftのアドテクサービスという事実!

 

いやはや時代が変わってきたね・・・

 

テレビと動画配信サービス、Netflixとディズニー+という比較だけでは見えてきませんが、Netflixって分業に近かったマーケティング垂直統合に持っていったのが凄いのよねということなのですよ。フジテレビがフジテレビ自身で番組を作って、フジテレビ自身で番組を配信して、フジテレビ自身で視聴者からお金を回収して、テレシー使ってフジテレビ自身が興国運用をするってことをNetflixはやろうとしてるんだよね。

 

すげーな。

さすがNetflix

 

でも、もっと垂直統合マーケティングを行っている会社があるのですよ。

それがテスラ&スペースX&スターリンク

 

スペースXを使って衛星を上げて、その衛星を使ってスターリンクというインターネット通信を成立させ、テスラの動きを全て吸い上げて、管理する。とんでもない規模での0Partyデータ収集と0Partyデータ管理の世界。

 

ここまで行くとトヨタも勝てないんじゃないかしら?という話し。

 

代理店も変わる、広告も変わる、消費者も変わる、メディアも変わる、マーケティングも変わる時代なのですから、会計に関する考え方も変わりますよね、というのが著者の考え。

 

新たな時代だと売上じゃなく、売上総利益で会社の会計を管理しないとダメだという。売上には顧客から預かったお金も含まれてしまっている他人の預かり金)も含まれているので、自分の貢献(売上総利益)を見ていきましょうという考え方ですね。

そして、売上総利益で会社の規模をはかるようになったら、営業利益率で業務がうまくいっているか見ましょうとのこと。

 

サービス業全般で営業利益率のレベル感はこんな感じ。

 

赤信号:10%未満(経営の未来課題多し)
黄色信号:10~15%(さらなる向上を求む)
合格点:15%以上(20%以上は至難の業)

もう、この本は広告に関する本じゃない。

2030年に経営コンサルになるための本だ。

つまり、2030年、広告やマーケティングに携わるヒトにはそう言うスキルが求められるってことだ。

 

 

タイトル:2030年の広告ビジネス デジタル化の次に来るビジネスモデルの大転換
著者:横山隆治/栄枝洋文
発行元:翔泳社