女のいない男たちのまとめ
「ドライブ・マイ・カー」「イエスタデイ」「独立器官」「シェエラザード」「木野」「女のいない男たち」という6編の短編集を収録した単行本。男女の日常から、人生や、登場人物の背景を浮かび上がらせるのは、さすがあなぁ、と思ってしまう。やばい。語彙力が無いな、自分。
女のいない男たちを読んだ理由
自動車が登場する小説を読みたかったので
女のいない男たちで仕事に生かせるポイント
特になし
女のいない男たちの目次
ドライブ・マイ・カー
イエスタデイ
独立器官
シェエラザード
木野
女のいない男たち
女のいない男たちの感想
「ドライブ・マイ・カー」は、味のある名脇役というポジションを確立している主人公・家福と、彼のドライバーを引き受けた渡利みさきと、サーブのオープンカーが主な登場人物。オープンカーという、外と中の境目が曖昧な場所が、家福が歩んできた役者という人生の面白さと、はかなさを引き立ててくれる。誰もが何かになりたくて、でも、戻ってくる場所は失いたくなくて。ただ、その戻るべき場所も変わり続けてしまうんだよな、ということをオープンカーを持たない私は思ってしまいました。
「イエスタデイ」はビートルズの名曲を替え歌にしたてた男と、その友人と、その彼女の三角関係を描いた作品。何者かになりたかった自分と、何かになれると思っていた自分。そんななかで、孤独を感じつつも、仲間がいることに安心を覚えていた若い頃。この絶妙なバランスが崩れることで、大人になっていく人間と、一生自分探しを続けてしまう人間に別れていく。自分の大学時代ってどうだっただろう?とおもいながら、イエスタデイの替え歌をつくりあげた木樽に自分の姿を重ねてしまった。もしかしたら、わたしは、中年になっても世界を旅していたのかもしれない。
「独立器官」は、悲しい美容整形外科医のお話。他人から見れば完璧な男である美容整形外科医の渡会。実際、本人も完璧に近い男であると思っていたのだろう。渡会の生活が、そう思わせる。更に、付き合う女性にユーモアと賢さを求めていたというのも、自分という存在をよく知っていた故だからだと思う。その反動からか、「自分が何者でもない」と思い始めていた渡会。その状態で恋に落ち、そして酷く振られてしまった渡会。人間、自分という存在をは、自分を認めてくれる多謝がいてはじめて成り立つということを教えてくれる作品。
「シェエラザード」は、ハウスという場所に監禁されている(潜んでいる)羽原と連絡係で、羽原の夜の相手もしてくれる謎の女性シェラザードのお話。シェエラザードは、もちろん偽名。名前はわからないが、専業主婦であることと、看護師の資格を持っていることと、小学生の子供がいることと、前世がヤツメウナギだったらしいことだけはわかっている女性。ハウスという謎の空間で、何をしているのかがわからない羽原と、ある面だけははっきりしているシェエラザードが織りなす不思議な物語。
「木野」とは、根津美術館の裏手の路地で同じ名前のバーを経営している中年男の名前。場所柄、隠れ家的な雰囲気が漂う店にも、常連客はいる。いつも一人で静かに読書をしているカミタや、木野と一夜を共にした女性客などが、そうだ。ただ、一番の常連客は、この店に住みついている野良猫かもしれない。バーという夜と昼の両方をつなぐ場所で繰り広げられるミステリーだ。
「女のいない男たち」を読むと、自分が今まで愛してきた女性が、いなくなってしまう辛さを重ねてしまう。いまの奥さんではないのだ。中学時代、高校時代に付き合った彼女たちが死んでしまったら?どうやって、その情報を知るんだ?もう、何十年も前の話なのに。でも、風のうわさで、知ってしまったら?はたして、自分はその孤独に耐えられるのだろうか?私は、この作品でいまの幸せを再確認することができた。