WEB銭の読書やグラベルロードのメモなど

マンガ「グラゼニ」が大好きな、ウェブ系の何でも屋さんが綴る、仕事とか、読んだ本のこととか、日常とか、世の中に関する忘備録。

新板 歴史の終わり 下巻

著者:フランシス・フクヤマ
訳・解説:渡部昇一

発行元:三笠書房

 

まとめ

キリスト教文化圏で、西洋化、つまり民主主義と資本主義をとりこみ、経済発展をした国は、このまま日本だけになってしまうのか?いや、インドネシアや、韓国、トルコもあるじゃないか。しかし、国家が安定するのは最低か、最高の状態になったときだけなのだ。東西冷戦が終わり、民主主義と資本主義の時代が訪れたように思えたのですが、そこまで歴史は単純ではなかったようですな。

この本を読んだ理由

「歴史の終わり」の上巻を読み終えましたからね。次は下巻ですよ。

仕事に活かせるポイント

こういう本だからなのか?はたまた欧米の知識人にとっては普通のことなのだろうかな?哲学者ついての記述が数多く出てくる。大学時代の微かな知識がなかったら、この本を読みこなすことはできなかったな。

目次

第3部 歴史を前進させるエネルギー 「承認」を求める闘争と「優越願望」
4 「赤い頬」をした野獣 「革命的情勢」はいかにして生まれたのか 
5 人間の「優越願望」が歴史に与える影響 
6 歴史を前進「原動力」
7 「日の当たる場所」を求めて戦う人間国家
第4部 立つ歴史世界と歴史世界 自由主義経済成功に絶対不可欠な「非合理な気概」
1 冷たい「怪物」 リベラルな民主主義立ちはだかる「厚い壁」
2 歴史から見た日本人の「労働倫理」
3 新しいアジアを生み出す「新権威主義帝国」
4 もはや万能ではなくなった「現実主義」
5 「権力」と「正当性」との力関係
6 国家主義国益の経済学
7 脱歴史世界と歴史世界 ニ極に大きく分かれいく世界
第5部 「歴史終わり」の後の新しい歴史の始まり
1 自由と平等の「王国」のなかで
2 歴史の終わり登場する「最後の人間」
3 民主主義社会おける「優越願望」のはけ口
4 自由主義国家が生み出した「リバイアサン(大怪物)」
5 「歴史の終点」には何があるのか

感想

ベルリンの壁崩壊、ソビエト連邦崩壊により終結した冷戦。西側諸国が勝利したことで、世界は自由主義経済民主主義国家によって統治されるものだと思われていた。

だって、見て。日本という非キリスト教国家であっても、自由主義経済と民主主義によって繁栄を手に入れているのですよ。日本にできたのであれば、他の国だって可能なはず。

そんなことを言われなくとも、途上国と言われる国々、とくにアジアの国々は日本の真似をし始めた。自民党長期政権というある意味、開発独裁国家であった日本。そんな日本と同じように、国家主導で経済政策が進められた。

しかし、上手く行かない。なぜだろう?本書では、そのナゼに気概という概念を当てはめてきたのですな。

ここでいう気概とは、ディスプリンといいますか、武士道というか、プロテスタンティズムというか、倫理というか、どんな環境でも自分を律する力や意志的なものですな。

その気概があるか、ないかでかわってくる。気概がなければ自由主義経済的発展も、資本主義的発展も、民主主義的発展も、手にすることができないのだろう。

気概が満ち溢れていれば、こんな時代が待っているという。

 

戦争という伝統的な戦いが成立しなくなり、物質的繁栄広がりによって経済競争が不要となった世界では、「気概」に満ちた人々は承認を手に入れるため永遠に満ち足りることのない代償行為を探しはじめているのだ。

ほほう

 

日本は1600年から250年も戦争のない時代を作ってしまった。逆に1600年までは世界屈指の戦闘民族であったのにね。

その気概があるかどうかが、歴史が終わった未来で、どうなるのかを導いてくれるのだろうな。

 

そして、新冷戦が始まった21世紀。1989年に国民を弾圧することで危機乗り切った中国の未来はどうなるのだろうか?とりあえず、当時の知識人が考えていた、経済が発展すれば西側諸国のような体制になるはずという予想は思いっきり外れているからね。

 

 

タイトル:新板 歴史の終わり 下巻
著者:フランシス・フクヤマ
訳・解説:渡部昇一
発行元:三笠書房