WEB銭の読書やグラベルロードのメモなど

マンガ「グラゼニ」が大好きな、ウェブ系の何でも屋さんが綴る、仕事とか、読んだ本のこととか、日常とか、世の中に関する忘備録。

Hot Pepperミラクル・ストーリー

著者:平尾勇司
発行元:東洋経済新報社

 

まとめ

新規事業を立ち上げたい。そんな人に向けての参考書は、たくさんあります。しかし、新規事業を成功させる方法とか、失敗した新規事業から得られること、などを教えてくれる本は、私の知る限り、この本しかない。そして、なにより「失敗したからわかったこと」を的確に教えてくれる本書は、すごい。新規事業や、組織運営は、最初からうまく行くわけじゃないんだよな。

この本を読んだ理由

「事業の立ち上げ」や「チーム運営」に悩んでいる人にはお勧め、ということなので、読みました。

仕事に活かせるポイント

第3章「失敗が教えてくれた11の警告」が秀逸。ここの目次、ここの小見出しだけを心に刻んでいるだけで、御利益がありそう。とくに「働くモチベーション設計ができていない」というのが、心に刺さりましたわ。

目次

はじめに いまだ見ぬものを見に行く冒険
第1章 『ホットペッパー』の本当のすごさ
第2章 『ホットペッパー』とはいったい何なのか?
第3章 失敗が教えてくれた11の警告
scene1 「できない理由」を上手に説明している
scene2 大阪と札幌はどこが違うのか?
scene3 組織図にはすべてが表れる
第4章 事業立ち上げの仕組み作り
scene4  ”札幌のカレーは大阪のカレーの3倍も高いのか?”
scene5 剣道には小手・面・胴しかない
scene6 森を見て、木を見て、枝を知る
scene7 戦略じゃない、物語を聞きたい
scene8 それは俺のことか?
scene9 おまえはメンバーを全員殺す気か
scene10 制度に合わせて事業をやるのか?
第5章 急成長のキッカケとそのしかけ
scene11 版元長飛び込み大会
scene12 この大宮版を廃止する
scene13 インデックスなんかいらない
scene14 断じて、サマフェスを実施する
scene15 ぶち込んで使わせろ

第6章 顧客接点作りの仕組み化
scene16 「このまま、路地裏のちっぽけなお店のままでいいよ」
scene17 次のメニューは何にしたらいいの?
scene18 吉田采都子の「何屋プチコン
第7章 セオリーに反する営業の仕組み作り
scene19 営業を複雑にする
scene20 バードビュー
scene21 七福神お届け営業
scene22 5分間ロープレ
第8章 マネジメント・リーダーの育成
scene23 組織の風景
scene24 女に嫌われる男の5つの条件
おわりに 申し訳なく、残念です

感想

ホットペッパーリクルートが世に送り出したクーポンマガジン。クーポンに関しては多くのフォロワーを生み出し、日本に新規マーケットを作り出したメディア。

 

そんな伝説のメディアを立ち上げた人が著者。

 

ホットペッパーが産声を上げようとしていた当時のリクルートが置かれた状況や、その中の出来事までが赤裸々に綴られている1冊。

 

すごいな、リクルート。そうやって、日本最強の営業力が作り上げられたんだな、ということがわかります。営業を分業化し、各フェーズでしっかりとKPIを管理していこうというTHE MODELの真逆にるような営業スタイルだったんですね。一人の営業マンが、ターゲットとなるお店を決めて、飛び込んで、契約を取って、原稿を作成して、入稿するところまでやってたんだよね。今もそうなのかな? 気になるところですね。

 

本書は新規事業の立ち上げを担当している人、事業部運営を任されている人、必読の本として紹介されています。その紹介内容に間違いはないです。ただ、この本がすごいのは”単に成功した話”だけを紹介しているのではなく、失敗した話を経験値として、きちんと咀嚼したあとに「成功した話」をしているところなのです。

 

なので、説得感がすごいのです。

 

ホットペッパー』には全身となる雑誌があったんですって。『サンロクマル』という雑誌が。7年で36億円の累積赤字を生み出した雑誌。そんな経験をさせたリクルートもすごいですが、その経験をちゃんと活かした著者もすごいです。ちなみに、著者の平尾勇司さんはリクルートのスター営業であったわけではなく「おまえに失うものはない」と、このプロジェクトに送り出されたような、人だったそうな。そして2年で結果が出なかったら、会社を辞めればいいと、腹をくくって、新プロジェクトに臨んだのだそうな。

 

ほんと、その腹の据え方、肝の据わり方が、かっこいい。だから4年で全国42版展開、売り上げ約300億、営業利益約100億の事業に育ったんでしょうね。いまでいうと、爆速のスピード感ですよ。4年で営業利益約100億なら、累積赤字も解消していますね。

 

そんな本書の中には、覚えておくべきコト、実践すべきコトがぎっしり書かれているのです。その中でも、次に挙げる小見出しが、最高です。このフレーズを念仏のようにくりかえすだけで、意識が変わるでしょう。


戦略とは捨てることだ
目標はあるが、目的がない
事業は物語だ、且つシナリオをつくれ
じつは、実行していない
そのシナリオは、本当に伝わっているのか?
仕組み化ができていない
勝負していない
階層組織は顧客のためではない
働くモチベーション設計ができていない
必要な人材が「集まる」組織を作る
「必ず勝つ」風土がない
すべての問題は内にある視点を共有する
事業を数字で表現し、「なぜ?」を繰り返す

 

念仏を決めるってコトが重要だと、本書には書いてありましたからね。

 

これと同じくらいに重要なのは「潜在的なマーケットを数字で実証」するってことですね。新規事業なので、全くマーケットは見えていないので、様々な統計データから数字を拾い出して、推測して、数字を描き出すことが重要なんですよね。数字から逃げないことが重要。

 

そして「汚い・せこい・弱い・おもしろくない・可愛くない」というのが女性に嫌われる5つの条件だというから、これも念仏のように唱えようw