まとめ
任天堂のゲームは、徹底的にユーザー、遊び手のことを考えている。わざわざ説明書を読まずとも「何をすれば良いのか?」がわかる、はじめて触れたモノであっても「どう使えば良いのか?」がわかる。きっと、それは任天堂のDNAなのであろう。そんな任天堂のDNAをビジネスのレベルにまで昇華させた横井軍平さんの人生に迫った1冊です。ジョブズや、ザッカーバーグ、ベゾスは日本にいなかったけれど、世界中を探しても横井軍平さんのような人もいないのですよ。
この本を読んだ理由
任天堂のことをいろいろ調べている流れで、この本にであいました。
仕事に活かせるポイント
横井軍平さんのこの台詞ですね。「安く作らないと売れないというのは、単なるアイディアの不足なんです。だったら日本国内で作っても高く売るだけのアイディアを考えたらいいじゃないですか。それは決して難しいことをしなくても、実に他愛もないことで実現できるのです。
目次
まえがき
第1章 今蘇る「枯れた技術の水平思考」
第2章 任天堂に突如現れたウルトラ青年
第3章 逆転の発想が生んだ光線銃
第4章 ゲーム&ウォッチと世界進出
第5章 ゲームボーイの憂鬱
第6章 バーチャルボーイの見果てぬ夢
特別付録 横井軍平のらくがき
鼎談 任天堂と横井軍平 牧野武文/山崎功/遠藤諭
感想
横井軍平さん。世界中にファンを持つゲームクリエイター。任天堂躍進の立役者で、スーパーマリオの開発者である宮本茂さんの師匠ですね。そんな横井軍平さんの人生を、任天堂での仕事の仕方を紹介してくれる本。生前、本人に対して行われた丁寧な取材は、横井軍平さんという人とを知るだけでなく、任天堂という会社について、本当の意味でのユーザーエクスペリエンスについて、教えてくれます。
おもちゃなんだから、難しいことをユーザに求めちゃダメなんですよ。
おもちゃなんだから、高い性能だけれど、価格も高いじゃダメなんですよ。
大人だっておもちゃで遊びたいのですから、おもちゃ以外の意味を持たせる必要があるんですよ。
読み進めていくウチに横井軍平さんから、このようなことを教えてもらっている気がしてくる。そんな錯覚に襲われる本ですね。この優しさが、ゲーム&ウォッチや、ゲームボーイを生み出したのでしょう。ファミコンの十字キー開発も、横井軍平さんだから開発できたのでしょうね。
そして、その十字キーの権利をちゃんと守りつづけている、任天堂法務部はすごいですよ。生み出したアイディアは、ちゃんと会社が守るという。
最新の技術ではない、よくある技術を違う視点から考えて、新たな道を与える。そうやって生み出されたおもちゃを、ちゃんと守る仕組みがあるんだからすごいよな。さらっと書きましたが、「最新の技術ではない、よくある技術」を使うというのは、エンジニア、開発者にとっては大きな関門なんだよな。どうしても、最新の技術を使いたくなってしまう。が、それは甘い罠なんですよね、と。
最新技術を使うことのリスクが、本書では次のようにさらっとまとめられているのですよ。
技術者というのは自分の技術をひけらかしたいものですから、すごい最先端技術を使うということを夢に描いてしまいます。それは商品作りにおいて大きな間違いとなる。売れない商品、高い商品ができてしまう。
作り手側から離れた今であれば「ですよね~」と言えるのですが、作り手の最前線にいると、最新のモノを使いたくなっちゃうのよねぇ。
そういう制約条件の中から、あらたな遊びを生み出していく。
ものを考えるときに、世界にひとつしかない、世界で初めてというものを作るのが、私の哲学です。それはどうしてかというと、競合がない、競争がないからです。
世界初と枯れた技術の水平思考を両立させていた、横井軍平さん。本当に天才だったのだと思います。