著者:オーウェン・ジョーンズ
訳者:依田卓巳
発行元:海と月社
まとめ
チャヴ。英語で書くとCHAVS。イギリスの労働者階級に属する反社会的な若者。チャヴがどのような若者なのか? どのような生活を送っているのか? どうして、このような若者が生まれてしまったのか? イギリスの社会様式、政治の話を全く知らない、日本人の私であってもわかるように、説明してくれるのが本書。そして、「これ、このまま進むと日本も同じような若者が現れてくるのでは?」と思ってしまう。いやいや、社会の仕組みが大きく違うので、そこまでになるのことではないのでは? いや、チャヴが登場してしまうような社会構造に、日本が変化しつつあると言うことだ。何よりも重要なのが経済と教育であるということが、よくわかる本だね。
この本を読んだ理由
「弱者を敵視する社会」というサブタイトルにやられたんだよな。私、新自由主義者というよりも、リバタリアンで、小さな政府を期待しているのだけれど、そればかりじゃダメだということはわかっているのでね。
仕事に活かせるポイント
何よりも、経済。そして、教育。この2つがしっかりしていなければ、社会は成り立たないってことだな。そして、機会の平等だな。
目次
はじめに
1 シャノン・マシューズの奇妙な事件
2 「上から」の階級闘争
3 「政治家」対「チャヴ」
4 さらしものにされた階級
5 「いまやわれわれはみな中流階級」
6 作られた社会
7 「ブロークン・ブリテン」の本当の顔
8 「移民嫌悪」という反動
結論 「新しい」階級政治へ
感想
私は、どちらかというと、左翼が嫌いなのです。どちらかじゃないですね。日教組が支配する真っ赤に染まった高校で3年間を過ごしたため、その反動で日本的左翼が嫌いなのです。そんな体験と、人にあまり頼りたくないという性格から、新自由主義的な考え、リバタリアン的な考えを支持するようになっております。
でもね、それじゃ、弱い立場の人は生活できないし、救えないということは知っている。ただね、日本で繰り広げられる「政府が何もしてくれない」論には、与することができないのよ。
で、この本にであった。
チャヴとはウィキにはこのように書いてある。
チャヴ(Chav)とはイギリスで使われている言葉で、スポーツウェアを着た反社会的な若者についてのステレオタイプをあらわした蔑称である。
この言葉は21世紀初頭からイギリスのマスコミで頻繁に使われだした。
オックスフォード英語辞典はこの言葉の定義を「生意気で粗野な振る舞いをし、デザイナーズウェア(本物、偽物を問わず)を着る若い下層階級」を表す侮蔑語としている。
オーウェン・ジョーンズは著書『チャヴ 弱者を敵視する社会』にてこの言葉を「貧困層に対する攻撃」であるとし、ランス・マントレーは”Stab Proof Scarecrows”にて"council housed and violent"(council houseは公営住宅)の略語であるとした。一方で言語学者のデイヴィッド・クリスタルはこの略語説を否定している。
なかなかすごい説明です。ただ、本書の冒頭には、この説明が正しく思えてしまうような記述が登場するわけです。
そこで思い浮かぶ大きな疑問は「なぜ、この人たちは、このような生活を受け入れているのであろうか?」ということだ。努力して抜け出せばいいじゃないか、と思ってしまうのが短絡的な私の思考だったりする。仕事も、職も、教育もないので、努力しても、抜け出せるような環境ではないことが、次々と明らかにされていく。
あぁ、なんて私は浅はかなんだろう。
七つの海を支配する大英帝国は過去のモノとなったといえ、イギリスなのである。そりゃ、今でも先進国であろう。このような私の考えも、一面的なモノでしかないということを、この本書は教えてくれる。
私、イギリスについて何も知らないな、と。
本書ではマーガレット・サッチャーが悪の権化のように語られていますが、「なぜ、サッチャーは、新自由主義をイギリスに持ち込まなければならなかったのか?」という背景を、私は知らない。本書によく登場する「中流階級」と「労働者階級」の定義も、生活もよく知らない。保守党と、労働党の立ち位置も、マニフェストも、知らない。
イギリスについて、何も知らないけれど、ブルーハーツの曲じゃないけれど「弱いモノたちが群れを成し、さらに弱いモのを叩く」という状況であることはわかる。
仕事をしようにも、就ける仕事は簡単に見つからない。見つかったとしても、低時給で働くパートタイム。上の階級に上がろうとしても、ちゃんとした教育を受けていないので、知識が無い。その状況に追い打ちをかけるように流れ込む、海外からの移民。
そりゃ、EUから離脱しようとするわな。
でもさ、ボリス・ジョンソンって、保守党でしょ?デーヴィッド・キャメロンも、テリーザ・メイも、保守党でしょ?労働党が、労働者階級のために、移民を排除するというのではないのね。そんな単純な話じゃないんだな。
ほんと、私はイギリスについて知らない。
なので、この政治状況について、なにもいえない。ただ、わかっているのは、経済を立て直し、産業を作り、公教育を立て直し、チャヴと呼ばれるような、若者を生み出してはダメってことだな。
この本を読んで、これくらいの考えしか出ないんだから、何も知らないよなぁ。
あぁ、勉強しよう。イギリスの仕組みについて。