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戦略的ブランドマーケティング第3版

 著者:ケビン・レーン・ケラー
監訳者:恩藏直人
発行元:東急エージェンシー

 

まとめ

ブランドとはマーケティングだけでは作り出されることはないのである。しかし、どんなに素晴らしい商品や、サービスを作り上げたとしても、それが確実に消費者のもとに届かなければ、ブランドとして成り立たないのである。では、そのブランドとは何か? 客観的な知覚価値を超えた、ブランドに対する顧客の主観的で漠然とした評価であるブランド・エクイティを軸に話が展開していく本書。本書の目的はブランド、ブランド・エクイティ、戦略的ブランド・マネジメント(ブランド・エクイティを構築し、測定し、管理するためのマーケティング・プログラムおよびマーケティング活動の設計と実行)という題材を総合的に教えてくれるのが本書。完全に教科書ですね。

この本を読んだ理由

GWの休暇期間に、Withコロナの時代に求められるブランドの意味に、その知識を再度整理しようと思っての読書。

仕事に活かせるポイント

基本に立ち返り、ブランドを定義する条件と、ブランドを知らしめるための手法ですね。そこからきっちり復習です。

目次

第一部 総論
第一章 ブランドとブランド・マネジメント
第二部 ブランド・ポジショニングとブランド価値の明確化と確立
第二章 顧客ベースのブランド・エクイティ
第三章 ブランド・ポジショニング
第三部 ブランド・マーケティング・プログラムの立案と実行
第四章 ブランド・エクイティ構築のためのブランド要素の選択
第五章 ブランド・エクイティ構築のための
第六章 ブランド・エクイティ構築を目的としたマーケティング・コミュニケーションの統合
第七章 ブランド・エクイティ構築のための二次的なブランド連想の活用
第四部 ブランド・パフォーマンスの測定と解釈
第八章 ブランド・エクイティの測定および管理システムの開発
第九章 ブランド・エクイティの源泉の測定〜顧客マインドセットの把握〜
第十章 ブランド・エクイティの成果測定〜マーケット・パフォーマンスの把握〜
第五部 ブランド・エクイティの強化と維持
第十一章 ブランディング戦略の設計と実行
第十二章 新製品の導入とネーミング、およびブランド拡張
第十三章 長期的なブランド管理
第十四章 地理的な協会と市場セグメントを超えたブランドのマネジメント
第六部 まとめ
第十五章 まとめ

感想

ものすごい分厚い本です。大学の教科書レベルです。てか、本当に大学の教科書です。正式名称はSTRATEGIC BRAND MANAGEMENTです。これをそのまま日本語に訳した、そんなタイトルです。ブランドに関するそもそも論から、生み出したブランドをどのように広めていくのか? ブランドを広めていく際に立ちはだかる問題はどのように解決していけばいいのか? 具体例を交えて、びっくりするほど細かく教えてくれます。

 

そして、この本の内容をすべて覚えるというのは、多分不可能です。何しろ話は広いからね、ブランド論と、マーケティング論の療法に話が渡っているからね。この本の内容をすべて理解したら、ブランドや、マーケティングの分野で博士号が取れるレベルですよ。

 

ということで、ふつーの人は、「使えそうな箇所」から読み進める、「使えそうな箇所」のみを読んでみるということをおすすめします。

わたし、とりあえず、全部読んだけれどね。

 

そんな私が、じっくりと何度も読み返したのが、そもそもの「ブランド」論ですね。目次で言うところの第1部と第2部ですね。新型コロナが世界中の好景気の息の根を止めてしまったいま、ちゃんとブランドを考えなければ、先に進むことができない。それどころか、会社として、サービスとして、製品として生き残ることができない時代がやってくるとおもいまして、そもそものブランド論に当たる箇所を重点的に読みました。

 

本書の立ち位置をかんたんにまとめると、客観的な知覚価値を超えた、ブランドに対する顧客の主観的で漠然とした評価であるブランド・エクイティを軸に話が展開していく内容。では、ブランド・エクイティって何から生まれるのかという話になる。顧客ベースのブランド・エクイティは「消費者がブランドに対して高いレベルの認知と親しみを有し、自分の記憶内に強く、好ましく、ユニークなブランド連想を抱いたときに生まれるのだとな。

 

アメリカ・マーケティング協会によればブランドとは「個別の売り手もしくは売り手集団の商品やサービスを識別させ、競合他社の商品やサービスと差別化するためのネーム、言葉、記号、シンボル、デザイン、あるいはそれらを組み合わせたもの」と定義されている、一般的には「市場に一定の認知、評判、存在感などを生み出したもの」と言われている。

 

そして、ブランドはニアリーイコールで「製品」のように思われているが、製品というのはニーズあるいはウォンツを満たす可能性のあるものとして市場に提供されているものであり、ブランドは同じニーズを満たすように設計された製品間に何らかの差別化要因をもたらすものなのである。

 

そのように製品間の差別化をはかるものがブランドとした場合、ブランドの果たす役割は次のようになる。

消費者
・製品の製造元の識別
・製造責任の所在の明確化
・リスクの低減
・探索コストの軽減
・製造者とのプロミス、絆、約束
・シンボリックな装置
・品質のシグナル
製造業者
・製品の取扱や追跡を単純化するための識別手段
・独自の特徴を法的に保護する手段
・満足した顧客への品質レベルのシグナル
・製品ユニークな連想を与える手段
・競争優位の源泉
・財務適成果の源泉

 

ここで「消費者」と記されているが、これは一般消費者以外、企業にとっても当てはまる。企業間取引、つまりB2B取引にあっても、ブランドは有効に働くのである。

 

そして、いきなりこのようなブランドを生み出すことができ、マネージメント&コントロールできるのかというと、そうではない。本書では「戦略的ブランド・マネジメントのプロセス」をしっかり定義しており、そのステップに沿って、分厚い本の内容は書かれている。その内容は、次のとおりだ。

 

【STEP1】ブランド・ポジショニングとブランド価値の明確化と確率
 ーメンタル・マップ
 ー競争上のフレーム・オブ・レファレンス(準拠枠)
 ー類似化ポイントと差別化ポイント
 ーコアとなるブランド連想
 ーブランド・マントラ
【STEP2】ブランド・マーケティング・プログラムの立案と実行
 ーブランド要素の組み合わせ
 ーブランド・マーケティング活動の統合
 ー二次的連想の活用
【STEP3】ブランド・パフォーマンスの測定と解釈
 ーブランド・バリュー・チェーン
 ーブランド監査
 ーブランド・トラッキング
 ーブランド・エクイティ・マネジメント・システム
【STEP4】ブランド・エクイティの強化と維持
 ーブランド−製品マトリクス
 ーブランド・ポートフォリオとブランド階層
 ーブランド拡大戦略
 ーブランド強化及び再活性化

 

このステップを最初からしっかり進んでいかなければ、ブランドというものは出来上がらない。このベースを作る上で重要になるのが顧客ベースのブランド・エクイティモデル(Cusutomer - Based Brand Equity : CBBE)であると。CBBEモデルによれば、以下の段階をしっかり踏んでいく必要があるという。

 

  1. ブランドと顧客とのアイデンティフィケーション(同一化)
  2. 顧客のマインド内にブランド・ミーニング(意味)の相対をしっかり構築すること
  3. 顧客の適切なレスポンス(反応)を引き出すこと
  4. 顧客とブランドの間に強く活発なロイヤルティのリレーションシップ(関係)を創出すること

そして、このようにして作り上げられたブランドには、ブランド要素(ブランド・アイデンティティを構成し、ブランドを識別し、差別化するのに有効で商標登録可能な手段)があり、それは次の6要素から成り立っているという。

  1. 記憶可能性
  2. 意味性
  3. 選好性
  4. 移転可能性
  5. 適合可能性
  6. 防御可能性

自分に対しても、自分の会社に対しても、そして、お客様に対しても。もう一度立ち止まって、提供するブランドの整理から始めなければならないってことですな。

 

 

戦略的ブランド・マネジメント 第3版

戦略的ブランド・マネジメント 第3版