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営業力を強化する世界最新のプラットフォーム セールス・イネーブルメント SALES ENABLEMENT

著者:バイロン・マシューズ、タマラ・シェンク
監訳:株式会社富士ゼロックス総合教育研究所
発行元:株式会社ユナイテッド・ブックス

 

まとめ

セールスは営業。イネーブルメントという言葉は、顧客の成功体験に向け営業全体を有効に機能させるために、組織全体で一貫性を持って施策に取り組むことを意味しているのだという。顧客というより自社のことしか考えていなさそうな日本的な営業会社では信じられないようなことかもしれませんな。しかし、サブスクリプションビジネスが一般的になってくると、この本に書いてあるようなやり方ではないと顧客から支持を得ることはできなくなるのでしょうな。

 

この本の目次

第1部 イントロダクション
第1章 営業の科学
第2部 セールス・イネーブルメントの共通定義
第2章 セールス・イネーブルメントが持つ多面性
第3章 カスタマーパス
第4章 憲章の設定と共有
第3部 セールス・イネーブルメントが提供する”サービス”
第5章 コンテンツ・サービス
第6章 トレーニング・サービス
第7章 コーチング・サービス
第8章 価値メッセージを通じた一貫性の構築
第4部 セールス・イネーブルメントの社内活動
第9章 フォーマルなコラボレーション
第10章 統合的なセールス・イネーブルメント・テクノロジー
第11章 セールス・イネーブルメント・オペレーション
第5部 ここからどこへ向かうのか
第13章 セールス・イネーブルメント成熟度現状を把握し、進化させるために
第14章 これからの営業

 

感想

営業が大きく変わり始めている。営業というか、市場が大きく変わり始めている。というか、変わってしまったのだ。もう、20世紀後半のような、日本の感覚でいうと、バブル期のような営業はできないのだ。市場の成長よりも、営業の成長速度が大きく・早くなってしまったのだ。そのため、2017年のセールスベストプラクティス調査によれば、新たな顧客へのアプローチするにおいては、営業サイクルが半年以上の案件は60%以上となっている。この数値は1年前の41%から上昇している。営業にものすごく手間と暇がかかるようになってしまったのだ。

 

このような時代の営業を、セールスフォース・ドットコムの小出社長は、次のように定義している。

これからの営業が売るべきものは、ソリューションではなく「ビジョン」である。先の見えない状況の中にある顧客に対し、明るい未来をつくるビジョンを共に考えていく営業こそ、顧客から信頼される営業となり得るのである。

 
流石は世界No1のSFAツールベンダーの日本法人のトップでありますな。

そして、このような時代にこそ「セールス・イネーブルメント」が必要であると、本書では説いていいる。ちなみに、本書では「セールス・イネーブルメント」を次のように定義している。

 

顧客接点のプロフェッショナルやそのマネージャーが日々の顧客とのやり取りの中で付加価値を与えられるような、一貫性と拡張性のあるサービスを提供することによって、予測可能な営業成果を増やすように設計された、戦略的で協働的な、規範(に基づく取り組み)である。 


と。英語をそのまま訳すと、セールスは営業。イネーブルメントという言葉は、顧客の成功体験に向け営業全体を有効に機能させるために、組織全体で一貫性を持って施策に取り組むことを意味しているとも言える。

 

顧客視点で、顧客の成功のために営業を行うって、すげー斬新だな、と思ってしまう。そして、顧客視点という言葉が出てきたら、大活躍となるのがカスタマーエクスペリエンス(CX)であり、カスタマージャーニーマップであったりする。本書では顧客の行動を「カスタマーパス」と言っている。カスタマーパスは「認識フェーズ」「購買フェーズ」「導入フェーズ」から成り立っている。で、それぞれのフェーズは次の要素で構成されている。

 

「認識フェーズ」…変化の必要性、状況の定義
「購買フェーズ」…選択肢の評価、最善の選択
「導入フェーズ」…導入、価値の評価

 

このへんはいわゆる購買プロセスに近い話だけれど、購買プロセスをこちら側(商品を売る側)視点で語ることが多かったからねぇ。これが、大きく顧客視点に変わってしまうと。「顧客視点で営業が成り立つわけねーだろう!」という昭和の営業マンからは突っ込まれそうですが、サブスクリプション前提の時代、”売り逃げ”というのは成立しないからねぇ。

 

そんなセールスができるように(できるのかどうか)本書では、顧客関係性レベルと、営業プロセスレベルで、営業の状態を分類している。

 

顧客関係性レベルが次のように分かれる。
レベル1 認定ベンダー
レベル2 優先サプライヤー
レベル3 ソリューションコンサルタント
レベル4 戦略的な貢献者
レベル5 信頼できるパートナー

 

レベル1~3は、かんたんである。そのサービスやツールを扱っていると認識されているのが認定ベンダー。何かあったら、うう先的に声をかけてくれるのが優先サプライヤー。自社製品だけでなく、顧客のビジネスに関心を持ち、その深い理解へ到達するだけの専門性を持つのがソリューションコンサルタント。戦略的なkぽうけん者は、顧客に関する深い知識、顧客の業界や、競争相手、顧客の取引先についての知識を持っている。信頼できるパートナーも、わかりやすい。これも、文字通りのはなし。

 

営業プロセスレベルは、ちょっと難しい。

レベル1 ランダム
このレベルにある組織は見込み顧客た顧客とどう関わるかについて、単一の標準的なプロセスを持っていない。つまり、営業がバラバラにアプローチする。

レベル2 インフォーマル
文章化された営業プロセスがあるものの、必ずしも皆がそれに従っているわけではない。

レベル3 フォーマル
明確に規定された営業プロセスがあり、そのプロセにしたがうように強制される。

レベル4 ダイナミック
ダイナミック・プロセスは、ある意味ではフォーマルであるものの、その適応性に特徴を持つ。このレベルの企業はセールスが応じた柔軟性を身につけること、またはそれをサポートするプロセスに注目する。このレベルの組織では、業績の重要指標を常に取り込み、継続的に分析することで、市場に変化が起きても他社よりかなり先にプロセスを適応させることができる。

 

顧客関係性レベルと、営業プロセスレベルでマトリックスをつくり(これをSRPという)、左下から右上に向かって、組織を成長させていく。セールス・イネーブルメントの役割は、顧客が、各フェーズで真に必要とする価値を、セールスで付加できるようにするためのサービスとして提供することである。

 

たいへんだな。難しいなぁ。やっぱ営業って組織なんだよなぁ。個人でどうにかできる時代じゃなくなっているんだよな。本書には「セールス・イネーブルメント憲章」のサンプルと、その考え方が紹介されているので、頑張って作ってみよう。細かいテクニックの話よりも、”どういう営業がしたいのか?”、”僕らはどこに進んでいきたいのか?”というコアの部分を決めないと、先に進んでいけないからな。

 

営業力を強化する世界最新のプラットフォーム セールス・イネーブルメント

営業力を強化する世界最新のプラットフォーム セールス・イネーブルメント