著者:宮徹
発行元:WAVE出版
まとめ
小林一三が、21世紀のいまを生きていたら、どんな事業を行っていたのだろうか?少なくとも鉄道事業ではなかったはずだ。今となっては成熟しきったインフラ産業であるが、明治後期から大正にかけて鉄道はドがつくほどのベンチャー業界だったのだ。そう考えると、小林一三は21世紀に宇宙産業ビジネスを行っていたかもしれないですな。小林一三の半生を綴ったこの本は、宇宙産業、ロケットビジネスについて語っているビジネス書のような気持ちよさがありますな。
この本を読んだ理由
最初はラノベの親戚かと思って手にとったら、小林一三さんをモデルにした本だった。このギャップは。。。ということで読んでみました。
この本の目次
プロローグ 歴史に呼ばれる男
第1章 異端のサラリーマン
第2章 人なき地に鉄道を敷き、街を作る
第3章 宝塚歌劇の幕を上げる
第4章 すべては庶民のために
第5章 立ちはだかる壁
第6章 夢なき経済に明日はない
第7章 静かなる徹底抗戦
第8章 世の中を明るくしたい
第9章 対決
第10章 それでも夢のために生き抜く
第11章 日本は世界に誇れる国になる
あとがき 一世紀前のstay hungry , stay foolish
感想
ラノベのようなイラストの表紙に、DREAMERというタイトル。これは、ラノベのようではなくラノベなんじゃなかろうか? と思って手にとったら、小林一三さんをモデルにした本だった。阪急グループを作り上げた偉人。大正&昭和初期の日本産業界のイノベーター。そんな小林一三さんを取り上げた本であるなら、読まねばならないという、かってな義務感。
鉄道事業や、百貨店、それに住宅地開発。21世紀の視点から見ると熟成しきった産業ですけれど、20世紀初頭ではバリバリのベンチャー産業だった。なんで、わざわざそんなことをするの? というレベルの。慶応から三井に。エリートサラリーマン街道のど真ん中を歩いていた小林さんは、サラリーマン社著として阪急を立ち上げる。ということは、たぶん、多くの人は知っているわけで。この本の素敵なところは「当時はベンチャーだった」という視点で、ビジネスを語っているところかと。だから、あとがきは「一世紀前のstay hungry , stay foolish」なんだよね。
で、描かれている内容は小林一三さんの一生を追っているわけで、目新しい話は出てこない。出てきたら逆にびっくりだ。変わりに丁寧に描かれているのが、商工大臣時代のお話。資本家、企業人のど真ん中であった小林一三さんは、軍部の力が強くなり、官僚たちが統制経済を推し進めようとしている時代に、大臣になったのですよ。そんな時代の矛盾や、ぶつかり合いを丁寧に描いている。
そんな時代の描写を、小林一三さんの葛藤を読みながら思ったことは「自由であることが最も尊い」ってことだ。統制して、規制して、どうするのだろう? 今も昔も、統制して、規制して、という考え方は好きになれない。この本に描かれる岸信介のような人がいたら、グーで殴っているかもしれないw
とっつきやすい表紙なのですよ。ぜひとも多くの人に読んでもらい「あぁ、いまは戦前と時代がにているなぁ」と感じ取ってほしいですな。