まとめ
青春時代の出来事って、青春時代に出会った素敵な大人って、未来に向かって成長する人間にとっては最高のプレゼントになるんだな。もう青春時代がやってこないおじさんにとっては、素敵な未来を教えてあげることができるような大人を目指すだけだな。
この本を読んだ理由
そりゃ、上巻を読んだら、下巻も読みますよ。一大青春ロマンだよね。こういう高校生活を送りたかった!
この本の目次
第6章 日ソ友の会
第7章 モスクワ放送局
第8章 中央アジア
第9章 バイカル号
第10章 その後
感想
我らが佐藤優さんが浦和高校の1年生時の夏休みに経験したことを綴った一冊。
エジプト経由で訪れた東欧から共産主義の総本山であるソビエト・モスクワに辿りついたところから話が始まります。
まだソビエト連邦という国が存在しており、雪解けどころか東西冷戦の真っ只中な時代であり、第二次世界大戦後30年しか経過してないような時代。
そんなエッセンスを追加して本書を読み進めると「ソ連を高校生にひとり旅させるなんて!」と、この本に出てくる大人のような反応を、読者であってもしてしまうわけです。でもね、東欧諸国にだって、ソビエトにだって、優しい人は住んでいるわけですよ。逆に日本にだって、優しくない人も住んでいるわけですよ。
大人の事情の間から、たまに見える、真っ黒な世界。
暗渠のように下巻に流れる裏テーマは、まさにこれ。
15歳の大人への階段を登り始めた少年が感じる純粋な思いと、その少年を中心に動く大人の黒い思い。イデオロギーとか、思想とか、党派とか、戦争体験とか、どーでもいいよね、と。みんなが平和で、豊かに生活できればいいのではないか?と、著者と同じように思ってしまう。ここまでストレートに記されてはいないけれどね。
秘境扱いだった70年代中央アジアの様子や、同じく鉄のカーテンの向こう側であったソビエト国内線の様子がわかる紀行文としても傑作な本書です。ほんと、青春時代の体験が、その後の人生を形作るんだな、と。あとはラジオの短波放送を聞いておけば良かったな、と。
インターネットはなく、代わりにベルリンの壁があったじだいのおはなしですな。