著者:高杉康成
発行元:日本経済新聞社出版
まとめ
ソリューション営業とは、相手の信頼を勝ち取ることなのだ。信頼とは、相手もまだ気づかない課題を可視化し、その課題解決を助けるお手伝いをすることなのだ。まかり間違っても「なにかお困りごとはないですか?」と、顧客に確認してはだめなのだ。部外者なのに何がわかるんだ?と言われることもあるけれど、部外者だから知っていることもある。その情報ギャップを見つけることこそが、重要なのである。もちろんそれだけで、ソリューション営業が成功するわけがないけれど、この情報ギャップを見つけることを始めなければ、成功することは、ないのである。努力したからといって成功するとは限らないが、成功した者はすべからず努力をしているってやつと同じですな。
この本を読んだ目的
B2Bデジタルマーケティングったって、極論すれば営業支援なので、営業支援、営業の効率カニカンスリ資料は片っ端から読んでおります。で、気がついたのですが、B2Bデジタルマーケティングなんて、まどろっこしいことを言っていますが、B2Bだろうが、B2Cだろうが、デジタルだろうが、アナログだろうが、マーケティングには結果が求められている時代になったんだなと思う今日このごろです。
目次
序章 なぜ自社のソリューション戦略は失敗するのか
第1章 顧客に驚きを与える 潜在ニーズの探索とソリューション提案
第2章 「最強」ソリューション戦略 ソリューション活動、教育、モチベーション、組織の超連鎖
第3章 5つ星ソリューション活動 情報マネジメントとソリューション活動の融合
第4章 社員を早期戦力化する 自己成長型時短教育システム
第5章 役立ち度を体感させる モチベーション向上目標管理制度
第6章 この潜在力を引き出す 1割の支援で9割を活かす組織づくり
第7章 ソリューション戦略を加速させる新製品開発 製品✕販売力のシナジー効果を高める
感想
世の中、ソリィーション営業が大流行です。たんなる、物売りではなく、ソリューションを提案する。ある方面では「コンサル営業」なんて言われていたりしますよね。
で、営業の世界で、このソリューション営業や、コンサル営業が「できる人材が少ない」とか、「やろうとしてもうまく行かなくて失敗している」という話が溢れかえっているわけですよ。
そりゃ、難しいですよ。ソリューション営業に、コンサル営業。
というところで、少し立ち止まる。
ソリューション営業、ソリューション提案って何? ただ単に解決策を営業するだけ?提案するだけ?コンサル営業にしても同じだ。コンサルタントを売るための営業をするわけじゃないんだから。
というところから、本書は始まります。
本書では、ソリューション(営業)を次のように定義しております。
ソリューションの時代がやってきました。製造業では、「モノからコトへ」という発想の中、、単にモノを販売するだけでは顧客の満足度は上がらなくなってきました。新たなサービスを更かし、モノとコトを合わせたソリューションの提供が求められています。
おお。
ものより思い出ではなく、ものからことなんですね。
モノとコトの組み合わせで、顧客にメリットを提案していくと。
でも、これがうまく行かない、行ってない現実がある。
もちろん、それはなぜか?の定義も、次のようになされている。
なぜソリューションはうまく行かないのか?実は、そこにはソリューション戦略における3つの勘違いが大きく影響しています。
その1つは、ソリューション活動を個人に依存しすぎることです。ソリューション活動は、一見、個人の高いスキルを活かすことがともめられるように思えます。しかしながら、そのやり方だと、一部の優秀な人以外は質が高まらないばかりか、個人間のばらつきも発生するため、企業全体のソリューション提案力は高まりません。
2つ目は、デジタル化されたシステムに依存しすぎることです。デジタル化の波は、これからも主役となることは間違いありません。しかしながら、その依存度を挙げすぎると、企業内部における対人コミュニケーションの機会が極端に減少してしまうため、ソリューション活動で重要な顧客との密なコミュニケーションのスキルを低下させてしまう懸念があります。その結果、顧客が潜在的に持っているニーズを把握することがより難しくなります。
最後は、目の前の顧客だけを見てしまうことです。ソリューション提案の相手先である顧客の樹王法に精通することは、いうまでもありません。ところが、役立ち度をより高めようとすると、顧客だけではなく、顧客の顧客にも精通しなければなりません。それを知ることで、顧客の製品・サービスの付加価値向上の提案につながるからです。
もうね、この2点を教えてもらっただけ、なんとなく思っていたけれど、ビシッと言語化してくれただけで、本書に対してお金を払う価値はあります。ソリューション(営業)というと「個人スキルに頼る」とか「ツールに頼る」とか「顧客をよく見る」とか言われておりますが、これは間違いであったと。よろしくなかったと。「なんでよろしくなかったのか?」その理由を教えてくれる、だけでも、本書を読んむ価値はあります。
MAや、SFA、CRMや、DMPに、BI。そんな単語に騙されただめなんだよ、と。あれば便利だけれど、あるだけじゃだめで、ちゃんと使いこなす必要がある。毎月バカ高いライセンスフィーを払うだけではだめだと。
では、どうすればいいのか?
その点に関しても、しっかりと説明されていて、素敵です。
売り手が知っていて顧客が知らない情報が存在する状態を、本書では情報ギャップと呼ぶことにします。この情報ギャップは、ソリューション活動を行っていく上での前提となります。そして、この情報ギャップを埋めていく活動がソリューション活動なのです。
顧客はあまり、自分のことを知らないということですよ。自社の業務に視野が狭められていますからね。そんな、顧客が知らないことを見つけ、その情報を埋める作業をすることが重要なんだと。そこをきっかけにコミュニケーションを開始し、その過程で使うツールがMAや、SFA、CRMや、DMPに、BIでありますよ、と。まずは、情報を埋める努力をしましょうよ、いきなりツールから入るの辞めましょうよというこの考えにはすごく賛成できますな。そこまではっきりと書いてはないですけれどね。
本書ではソリューション活動をするための営業方法(ソリューション活動と本書では読んでいますが)だけでなく、教育システムは、組織支援、モチベーション向上といった軸で、諸々の情報を整理してくれる素敵な本です。
すべてを読み取っても良いですし、どこかの軸だけで本書を読んでも良いですし、図表だけを見て「ふむふむ」と納得しても良いという、素敵な作りになっております。
そんな本書の中で、私の心を鷲掴みにしたのは「モチベーションのお話」と「だめ営業」のお話ですな。
で、それは何かといいますと。
お給料じゃ、モチベーションは上がんね-よってお話。
「給与が低いので給与を改善すればモチベーションが上がる」というように考えることも多いでしょう。ところが、給与は衛生要因となるため、これを改善しても基本的にはモチベーションは高まらないということになります。つまり、給与はあって当たり前の衛生要因であるため、低い、あるいはそれが無ければ不満は高まるが、これを改善したからといってモチベーションは向上しないという考え方なのです。同様に、会社の方針と管理、労働条件、監督者(上長)との関係、同僚との関係なども衛生要因とされています。
一方、モチベーションを向上させる動機づけ要因としては、何らかのミッションを達成した際の達成感、企画した施策などを承認される(認められる)こと、仕事そのものにやりがいがあること、仕事に責任を持たされること、昇進すること、自分が成長していることを体感できること、といった要因が
動機づけ要因として述べられています。
と
「何か困っていることはありませんか」はソリューション活動では禁句
「私は提案ができないので、あなたの方から困っていることを教えて下さい」と言っているのに等しいのです。
もう、御用聞きの営業じゃだめってことだよな。
で、「私は提案ができないので、あなたの方から困っていることを教えて下さい」って、コンペを待っているだけだから、だめっすよね、と思う今日このごろですな。