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マンガ「グラゼニ」が大好きな、ウェブ系の何でも屋さんが綴る、仕事とか、読んだ本のこととか、日常とか、世の中に関する忘備録。

昭和バラエティー番組の時代

著者:田村隆
発行元:河出書房新社

 

まとめ

テレビって、それも民放のテレビって既存メディアへのカウンターであり、アナーキーな人々の溜まり場だったんだよね。だから、面白かった。ルールも、前列もなにもない。自分たちが作り出す世界。そりゃー昭和後半から、平成にかけてのテレビは面白かったわけですよ。

 

この本を読んだ目的

昭和史探求をライフワークとしている私としては、避けて通れない1冊ですよね。アウトローも、アウトローであった民放テレビのバラエティー番組が、一気に世の中の頂点に駆け上っていく、そのスピード感がサイコーです。

 

目次

第一章 昭和28年〜昭和36年 バラエティ番組は未体験の竜巻!
第二章 昭和37年〜昭和39年 茶の間の主役としてテレビ降臨!
第三章 昭和40年〜昭和42年 朝も早よから深夜まで…“ワイドショー戦争”勃発!
第四章 昭和43年〜昭和45年 “ワースト番組”大暴れ!カメラに映らなかった真実
第五章 昭和46年〜昭和48年 バラエティ制作はテレビの大実験室!
第六章 昭和49年〜昭和51年 七転八倒、泣き笑い!テレビ屋ここに在り!
第七章 昭和52年〜平成元年 もっと抱腹絶倒のテレビふたたたび!

 

感想

著者はワタシの大学の先輩!青島幸男さんについて業界のいろはを学んだ方。「シャボン玉ホリデー」「11PM」「巨泉✕前武ゲバゲバ90分」「8時だヨ!全員集合」「笑って!笑って!60分」「みごろ!たべごろ!笑いごろ!」などなど数多くのバラエティ番組制作に携わったお方。鈴木おさむ先生以外にも、こんなすごいお方がいたなんてびっくりだ。わたしもな、変につっぱらないで、ちゃんと「誰かの下について学んだほうが良い」というアドバイスを聞いておけばよかったな。

 

さて、本書はそんな昭和後半のテレビ番組、それもバラエティ畑のど真ん中を歩いてき他人の一代記です。歩いてきたというよりも、切り開いてきたという言葉がぴったりですね。アウトローアウトロー、亜流も亜流、テレビの、民放の、それもバラエティ娯楽のど真ん中に引き上げたのですから。

 

一山当てよう!有名になろう!っていう野心と野望を抱いている人々が引き寄せられていた世界なので、みんな若い!若い!若い!

 

で、著者も若かった。けど、まだ現役!ここがすごい!

 

そして、あの伝説の番組「8時だヨ!全員集合!」に携わっていたというのだからすごい。

 

ドリフターズの裏話がこれでもか!と紹介されているのが良い。もう、おじさんおばさんしかドリフの凄さを知らないんだろうな。TOKIOがもっともっと、いろんな事ができるようになった感じですよ。農業だけじゃない。楽器もできるし、コントもできる。クレイジー・キャッツに続け!と登場し、ドリフに、続け!とビジフォーがやってきました、と。

 

ドリフのメンバーはコメディアンではないため、フリートークが苦手。MCができない。でも、コントであれば、誰かになりきってしまえば、フリートークも、MCもできてしまう。最初はそれほど数字が取れなかった「8時だだヨ!全員集合!」も、メンバーの良さを徐々に引き出し、おばけ番組に成長していく。

 

そんなメンバーを指して

 

いかりやは秀才、加藤は天才、志村は奇才、仲本は庸才、高木は無才

 

なんて言い表している。

 

高木ブーさん、あなたはその存在感が唯一無二なんですよ、と。

 

番組にかけるメンバーの熱意もすごかったけれど、同じくらい番組スタッフの熱意もすごかったんだと。

 

全員集合の舞台美術を担当していた山田満郎というお方が舞台美術会の最高栄誉と呼ばれている「伊藤熹朔章」を受賞したんだとな。小道具類の政策を発注するのが西川光三さんで、その無茶な要望を受け入れたのが光子館という制作工房なんだと。光子館があったから、うんこの置物や、白鳥の頭のついたバレリーナの衣装、長介人形や、殿様人形、加藤茶のぐるぐるメガネが生まれたんだと。

 

へぇ~。

 

一方で、ドリフのメンバー、特にリーダーのいかりやさんと、番組開始当初のプロデューサーはおばけ番組になるに従って、どんどんどんどん仲が悪くなっていったんだとな。

 

そんな、裏話まで知ることができる本。

 

いや~昭和のテレビって面白いですな。