著者:小島一志、小島大志
発行元:新潮社
目次
はじめに
第一部 芦原英幸回顧録
第二部 芦原英幸探究録
第三部 芦原英幸回顧録2
感想
芦原英幸と言えば「空手バカ一代」後半の主人公ですね。喧嘩十段の異名を持つ、極真空手の猛者。
しかし、極真空手総帥である大山倍達と袂を頒ち、四国愛媛にて新国際空手・芦原会館を設立した人。そんな芦原会館から離れていったのが正道会館の石井館長だ。
ワタシ、柔道の人で、キックボクシングの人なんだけど、空手も好きなのよね。なんて、空手が好きなのかといえば、この強さとは別次元で存在している人間関係の濃密さというか、ダメダメさね。大山倍達自体が「仁義なき戦いの金子信雄」と言われるくらいなのだけど、それは歳をとったからと言うのもあるでしょう。若い頃はどんなに強くても、人間、年齢には勝てないのでね。
そして芦原英幸の強さは本物だったという。強いだけでなく、無鉄砲で、怖いもの知らず。ヴィンランド・サガでいうところのトルケル閣下のような存在ね。戦うことが大好きで、負けた相手を自分の仲間にしてしまうほどの魅力もある。
そんな人間だったから、大山倍達総帥から疎まれて、四国に飛ばされてしまった。ホントはブラジルに飛ばされる予定だったらしいのだけど。
そんな四国の地で磨きあげたのが、サバキであると。
強さを追い求める一方で、組織としての発展も考えていた芦原英幸。本来的な意味でのサバキは殺人術に近く、お金もらって教えてもらう・教えてあげるようなものではないわけで、なので、いま伝わるサバキとはステップワークで相手に対して有利な立ち位置をとり、横から攻撃するような空手になっているのね。
喧嘩十段でありながらも、おしゃべりが好きで、かつビジネスセンスもあった芦原英幸。しかし、氏の身体を病魔が襲う。なんと、難病ALSに罹り、命を落としてしまう。
もっと長生きしていれば、格闘技ブームの流れを大きく変えることになったんだろうな、と。そして、どの団体≒王国も強すぎる王様の後、国は乱れるんだな、と。そう考えると、仕組みで権力を維持させるようにした柔道と相撲はすごいね、と。空手、キックボクシング、ボクシング、プロレス、レスリング、どれも強い王様の後は大変なことになってますもの。