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トヨタ式人間力 ものの見方・考え方と仕事の進め方

著者:若松義人・近藤哲夫
発行元:ダイヤモンド社

 

目次


序章 トヨタ式を支える人間力の原点にあるもの
1 日本人の知恵による世界への挑戦
2 日本の文化をベースにした日本式の製造方法
3 米国の真似をしていては米国に追いつけない
第1章 世界標準となったトヨタ式経営システム
1 日本人が考えた世界標準の経営システム
2 テキストを外国に求めることへの不安
3 人と同じことをしていては生き残れない
4 人がいるから会社があり、社会がある
5 知識や情報ではなく知恵の時代に
第2章 人間性を尊重するトヨタ式経営システム
1 トヨタ生産方式はなぜ脱常識といわれるのか
2 設備に頼るな、人に頼れ
3 人にやさしくは甘えの構造
4 標準作業はマニュアルではない
5 一個流しのモノづくり
第3章 トヨタ式を実践できる人・できない人
1 トップがやるか部下に任せるか
2 手段・手法にこだわってはいけない
3 考える人か実践する人か
4 新しい方法か慣れた方法か
5 成功の確率は100%か60%か
6 アウトソーシングか内製か
7 言葉で指導かやってみせるか
8 評価か理解か
9 業界の常識か非常識か
10 ぬるま湯につかるか改善をやり続けるか
第4章 人間の知恵は無限である
1 モノづくりは人づくり
2 バトンタッチゾーンをつくれ
3 創意工夫はひらめきからは生まれない
4 自律神経を活性化させよ
5 能力がないのは、「悩力」がないからだ
第5章 高度な文化に支えられた日本人の知恵
1 「仕事に行く」から「知恵を出しに行く」へ
2 いわれてやると叱られる
3 知識と知恵の差を理解する
4 知恵の出る状況をつくる
5 なんでも金で解決の風潮
第6章 問題を表面化し解決する
1 五つのWhy
2 不良はみんなの見えるところに出す
3 いったい誰の問題か
4 修繕ではなく修理を
5 チェックとは反省である
第7章 今日より明日はまちがいなくよくなるの心構え
1 過去の経験は知恵を小さくする
2 過去の成功体験から学ぶことは少ない
3 過去の実績はいまの能力ではない
4 改善するとは
5 不可能と思えることへの挑戦
第8章 百見は一行にしかず。会社のなかに評論家はいらない
1 言い訳をする頭で、実行することを考えよ
2 わかったということは行動することである
3 読んだことはあまり役に立たない
4 誰でも考えることは同じ
5 技述者ではなく、技術者になれ
第9章 あなた働いていますか。動いていますか
1 前工程は神様、後工程はお客様
2 一番威張っている人が、一番ダメな仕事をしている
3 整理と整頓
4 今日いくつつくったかではなく、今日いくら稼いだかが正解
5 製品と商品
第10章 日々改善・日々実践。勝ち続ける企業が行なっていること
1 変化のスピードに対応する
2 問題から逃げるな
3 考え抜くことと行動すること
4 自分の城は自分で守る
5 「人間性尊重」の前提には「人間尊重」がある
6 高い志とやり続ける力


感想

わたくし、仕事柄、B2B企業のデジタルマーケティング支援をたくさん行っているのですよ。こう言うと、ものすごくかっこよく聞こえますが、その殆どは業務整理だったり、ツールの再設定だったりするのですけれどね。たまに虚しくなってしまう時があるのですけれど、こうやってB2B企業のデジタルマーケティングの支援を行っていれば、日本企業の生産性が上がって、みんな、平和な生活ができるんじゃないのかしら?と思ったりするわけですよ。

 

で、最近流行りのB2Bデジタルマーケティング。やれ、MAだ、SFAだ、ABMだって大騒ぎしていますが、なんだろうな。。。「それって、全部、トヨタが行っていることを違う言葉で言い換えただけなんじゃなかろうか?」といつも思っておりまして、この本を手にとった次第であります。

 

B2Bデジタルマーケティングの世界にあって、いまや「入っていて当然」といわれるMAツール(マーケティングオートメーションツール)。ここで肝なのは「入ってて当然」であって「使いこなしていて当然」ではないってことね。で、そんなMAツールの良さを一言で表す言葉としてRight time , Right medeia , Right contents。正しいタイイングで、正しいメディアを使って、正しいコンテンツを届ければ、みんなの心に届いて「商品を買ってくれる」というお話ね。MAツールベンダーの営業の方々は金科玉条のようにこのフレーズを使うんですよね。でも、この考え方って、トヨタ式の基本だったということがわかった。

「お客様の必要なものを、必要なだけ、必要なときにつくればいい」「必要なものだけを作って、あとは機械を止めて、作らないでおくのが一番いい」と

 

おお。
やはり、B2Bデジタルマーケティングトヨタ式なんだわw

 

で、ここでものすごく細かい話をするのですが、MAツールにしろ、CRMツールにしろ、うまく使いこなしてる企業というのは殆ど無いのよね。で、「入れちゃったんだけれど、なんとかして欲しい」ということで仕事の依頼が来るんですけれどね。よくよく考えれば「そんなツールだけ入れて、なんとかなるわけなかろう」と思うのですが、どうやら、世の中はそうではないらしい。そのことに関しても、しっかりと書かれている。

 

問題を設備で解決することを考える前に、人間の知恵で解決することを考える 

 

とか

 

無駄を省き、人間の考える力を引き出すためには標準作業が確立していなければならない 

 

と。

 

いままでマーケティングとか、顧客サポートっていう業務を行っていない。行っていても属人的であったりしたら、うまくいかないのですよね。そりゃ、失敗しますよ。ツールは業務のサポートを行ってくれるけれど、業務整理や、業務の標準化は行ってくれないものな。ツールベンダーのお話に騙されて、ツール入れればすべてが解決するように思ってしまうんだよね。

 

でもね、新たなツールを入れるということは、間違っていないのですよ。

 

「新しい方法と既存の方法を比較して、両方のコストがほぼ同じなら新しい方法を採用します。新しい方法のほうがかいぜんのよちがおおきいから」というのが、トヨタ生産方式の考え方だ。 

 

で、トヨタ式の基本。「前工程は神様、後工程はお客様」なのですが、これは何を意味しているかというと、お客様のために頑張るというお話。お客様の目線でいろいろと考えて行動しろよっていう話で、これ、部門間の壁を取り払い、マーケティングを行っていきましょうっていうABMの話なのですが、これがそのままハマるよなって、いつも思っていたのですよ。

 

「前工程は神様、後工程はお客様」は、単なるキャッチフレーズではない。すべての工程が「次工程のために、100%良品を、より仕事がしやすい形で届ける」という信頼・気配り・気遣いのもとに仕事をする。こうしてはじめてトヨタ生産方式は成立し、常に進歩する。 

 

これ、まさにそう。
MAツールだろうが、SFAツールだろうが、CRMツールだろうが重要になってくるのは、後工程がどんな情報を欲しがっているのか?をちゃんと定義すること。MQLやら、SQLって単語がよく出てきますが、MQLであればマーケティングの部署が、SQLといえば営業の部署が、「どういう状態のリードが欲しいのか?」を定義しないとだめなんだよね。宣伝部の視点で「マーケはこういうリードが欲しい」とか、マーケの視点で「営業はこういうリードが欲しいとか」決めちゃいけないんだよね。そのことがこの記述からわかります。

 

その他にも、この本にはというか、トヨタにはいい言葉があるなぁ、と。社会人として必要なエッセンスがギュッと詰め込まれていて素晴らしいのですよ。

とにかく「なぜできなかったか」についてはさまざまな理由を上げる。しかしどんなに不況のせいにしようが、現実の社会には需要はあるし、ものは動いている。需要があるのに注文が来ないのは、ただ単に需要に対応できないだけの話ではないだろうか。

とか

 いなくてもよい管理者がいる職場は雰囲気が悪い

 

とか

 

「整理整頓」については、大野耐一氏の言葉がある。「いらないものを処分することが整理であり、欲しいものがいつでも取り出せることを整頓という。きちんと並べるだけは整列であり、現場の整理は整理整頓でなければならない。」 

 

とか

 

とにかく「なぜできなかったか」についてはさまざまな理由を上げる。しかしどんなに不況のせいにしようが、現実の社会には需要はあるし、ものは動いている。需要があるのに注文が来ないのは、ただ単に需要に対応できないだけの話ではないだろうか。

ね。

 

そして、これだけ有名なトヨタ式が、なかなか世の中に根付かないのには、ちゃんとした理由があるわけですよ。

 

従来は「いわれたとおり、命じられたとおり」の仕事を黙々とこなしてきた人にとって、トヨタ生産方式の要求するものはあまりにも多い。

 

 

トヨタ生産方式が単なる手段・手法ではなく、経営システムであるからだ。ものの見方・考え方を根本的に改めなくては、実践も定着もできない占いにある。モノの作り方は、作る側の論理を廃止、変動する市場・個性豊かな消費者ニーズに柔軟に対応するというマーケット・インの思想で貫かれている。

 

と。

 

トヨタ式というのは表面を真似てもだめなんだと。トヨタ式というのはその論理を理解しないとだめなんだと。そして、トヨタ式というのは経営システムであるので、がらっと業務自体を見直さないとだめなんだよね、と。

 

トヨタ式人間力―ものの見方・考え方と仕事の進め方

トヨタ式人間力―ものの見方・考え方と仕事の進め方