著者:加藤彰彦
発行元:創英社・三省堂書店
目次
第1章 子どもの貧困とは何か
第2章 子どもの貧困を放置する社会構造
第3章 貧困社会を生きる子どもの実態
第4章 子どもの貧困対策を検証する
第5章 子どもの貧困脱出への模索
第6章 貧困児童の脱出カルテ
感想
子供と女性が大好きな私としては、子供と女性が悲惨な目に合うことに耐えられないのです。子供への虐待と子供の貧困。どちらの環境からも、子供を救いだす必要があります。この本では、まずは貧困。
著者は沖縄大学名誉教授。横浜国立大学卒業後に、小学校教諭、横浜市職員(寿生活館、児童相談所)などを経て、横浜市立大学教授、沖縄大学教授、沖縄大学学長を経て、現職。
なので子供の教育とか、ソーシャルワークとかの専門家ですね。現場の最前線で身につけた経験と学問的な裏付けがなされている本書の内容はすぅっと、頭の中に入ってきます。
非正規雇用が増えて中間層が減ったから子供の貧困かわ増えたと言う論調が主流で、著者もその考えを支持しているのですが、そこは日本三大ドヤ街でソーシャルワークをしてきた人なので、すぐにアベノセイダーズに変身しないのが良いですね。
労働改革で非正規雇用が増えて平均所得が減ったのは確かだけれど、正社員の解雇規制が撤廃されないままで、労働改革も行われなかったら、企業は雇用自体を控え、失業率が上がっていたのではないかとおもいますな。みんなが「真似しろ」とよく言うドイツでは解雇規制を緩和して、経済を復活させてるのよね。
参考になるのが、ドイツが2000年代に進めた労働市場改革だ。03年に当時のシュレーダー政権が着手した。
この改革は解雇規制の緩和や創業支援など広範囲に及んだが、柱になったのは就労の促進だ。民間の人材サービスを積極的に活用して職業紹介を拡充し、企業による実習生の受け入れ拡大など職業訓練にも力を入れた。
ま、そんな主義主張の話はさておき、てか、そんな話が些細なことと思えるような解決策がこの本には書かれているのです。誰かのせいにしても、問題を上から目線で批判しても、なにも課題は解決しないのです。
本書には、その解決作が提示されているのが素敵なのです。
その解決方法の1つ目は、これ。
ここで唐突であるが、子どもたちを貧困状態から救い出すための私の案がある。「希望する子どもはすべて保育園に入ることができる。」これが絶対に必要である。
そーなんですよ。やるべきは保育園や、幼稚園の無償化ではないのです。もっと言えば、高校や、大学の無償化でもない。もちろん、無償化になればそれは越したことがないですが、もっと重要なのは「希望すれば誰でも保育園に入れること」です。保育園入園のために行っている活動がどれだけ無駄なことか。その活動のため働く時間が削られたり、そもそも保育園に入ることができずに、仕事をやめなくてはならなかったりするのです。
そして、充実した幼児教育を行うことで、その後の人生が変わってくることは、各種研究から判明してるのですから。
みんな保育園に入れて、みんな幼児教育をうけることができて、みんな同じスタートラインに立つことができることこそ重要かと。
この他、著者は5つの対策を述べています。
子どもの貧困対策は次の5つである。
●まず一番大切なのは、「子どもの貧困」に気づくこと。そして、できることを考えること
●貧困家庭・貧困児童にかかわっていこうという気持ちを持つこと
●地域で孤立し、ひとりぼっちでいる子どもたちを放置しない取り組みをすること。
●地域での話し合いを通して、解決のための具体的対策をつくり、課題やいつ始めるかなど明確にして実践すること。
●具体的な支援対策を実践する専門員(子どもソーシャルワーカー等)や協力者を準備し、円滑に活動を継続すること。
そうなんですよ。まず、気がつくこと。そして、できることから始めること。
主義主張を振りかざして、ファミマが始めるこども食堂を批判するとか、だめなこと。偽善でも、売名目的でも、営利目的でも何でも良いので、目の前の子どもたちを救うことが何より重要です。