著者:川崎秀明
発行元:ミルヴァ書房
目次
1 日本の近代化のなかで
2 世界の石積み堰堤の歴史
3 石積み堰堤の分類
4 「用・強・美」の「強」
5 石積み堰堤を末永く使う
6 石積み堰堤の美
7 石積み堰堤を愛でる
感想
ダムの本です。となると、紹介されるダムは黒部ダムだったり、奥只見ダムだったり、奥利根ダムだったりするのですけれど、この本にはそれらのダムは出てきません。サブタイトルは「近代化〜」なのですよ。黒部ダムや、奥只見、奥利根だと「戦後復興」になってしまいますからね。
近代化。時代は明治から対象にかけての話。いや、ほぼ明治のお話ですね。富国強兵、列強諸国に追いつけ追い越せで建築されたダムのお話がぎっしり詰まっています。20世紀初頭、まだまだ大規模なダムを枠型コンクリートで作り上げる技術はなかったので、当時建設されたダムは、中身がコンクリ、表面が石積みの堰堤ダムであった、と。
今も昔も、ダムは「作りたいから」とか「そこに水源があるから」ということで作ったりはしない。ちゃんとした目的があるわけで、それは水道であったり、治水であったり、電力であったり、軍需目的であったりするわけで。今の時代、軍需目的でダム作るは、ん日本では考えられないことですけれどね。
黒部や、奥只見、奥利根のような峡谷にダムを作り上げる技術がなかったということもあるのでしょうが、それら目的のために作られたダムのため、本書で紹介されているダムは西日本と北海道に集中しています。いや、たぶん、東日本、関東にも石積みのダムはあったんだろうけれどね。なぜ、そう思うのか?といえば、横浜という、当時の日本最大である外国人居留地があったからね。明治初期〜明治中期に語られていた水道っていうのは「ストップ!水不足」ではなく、チフスや赤痢の感染を防ぐという意味合いがあったわけですよね。水が綺麗であることが重要だから。水資源が豊富な日本にあっても、そのような感染症はあったわけですからね。
本書はダムに関する愛情が溢れかえっています。それもそのはずです。著者は旧建設省のお役人。国土技術政策総合研究所などでダムの建設に関わってきたダム屋さん。現場密着をモットーとする旧建設省技術屋タイプとしては最後のエンジニアなんだとな。
日本のダム美:近代化を支えた石積み堰堤 (シリーズ・ニッポン再発見)
- 作者: 川崎秀明
- 出版社/メーカー: ミネルヴァ書房
- 発売日: 2018/10/15
- メディア: 単行本
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