著者:村上謙三久
発行元:筑摩書房
目次
1 「マセキ里穂」はこうして生まれた―藤井青銅に聞く
2 テレビじゃ、これは伝わらない―田家秀樹に聞く
3 暴走と冷静のコサキン―鶴間政行に聞く
4 すべてはニッポン放送に教わった―石川昭人に聞く
5 とあるリスナーの数奇な運命―伊福部崇に聞く
6 「お笑い」だけが、ラジオじゃない―大村綾人に聞く
7 アニメ・声優との真剣勝負―長田宏に聞く
8 フリートークをもっと聴きたい!―奥田泰に聞く
9 構成作家はじめました。―辻村明日香・チェひろしに聞く
感想
ワタシは超ラジオっ子です。小さい頃から、家でスイッチオンになっていたのは、テレビでなく、ラジオだったのですわ。で、夜、一人で寝ていて目がさめてしまった私に元気と勇気をくれたのは、ラジオの深夜放送だった。
聞いていたのはTBSラジオ。朝や昼間に聞いていたのがTBSだからね。ラサール石井や、コサキンが夜のお友達だった。
それは10 歳ぐらいの頃。
そして、12歳、小6になった頃、ワタシはニッポン放送に引っ越した。1987年から1988年くらいの出来事ですな。
著者とワタシは同世代なので、そこから一気に話が深くなる。その頃、深夜ラジオの頂点はビートたけしだった。伊集院光は、もうすぐ、世の中にその名前が広まるような頃である。
もちろん、それ以前の話もしっかりと記載されている。永六輔さんも、ハガキ職人から放送作家になった方だ。
今につながるラジオやテレビのフォーマットを作ったのは永六輔さんに間違いはない。
その後、深夜ラジオの時代、第一次黄金期がやってくる。オールナイトニッポン、セイヤング、パックインミュージック。ラジオとハガキというクロスメディアは、パーソナリティとリスナーの双方向コミュニケーションを実現させた。
Webとラジオ、SNSとラジオの相性が良いと言うけれど、ラジオとはマスメディアに分類されるけれど、パーソナリティはラジオの前にいる「あなた一人」に向かって話しかけているというパーソナルなメディアなんだよね。だから、パーソナルなメディアであるラジオとインターネットや、SNSの相性がよいのかと。
で、本書ではそんなラジオの特性やら、歴史から、いまの流れに話が続いていく。
放送作家でいえば、藤井青銅、田家秀樹、鶴間政行が、今現在進行形のラジオを作ったと言っても良いでしょう。
ラジオパーソナリティで言えば、ビートたけし、コサキン、伊集院光。彼らが今につながるラジオパーソナリティの具体例を作ったと言っても良いでしょう。
いま、彼らの番組で育った若者が、未来のラジオを作り始めている。オワンコのメディアと言われたラジオが復活を遂げようとしている。
クラスの中ではメジャーになれない、どちらかというと陰キャラだけど、仲良くなると面白い。情報感度の良さと、地頭の良さだけが武器。
そんな不器用な人間たちが作り上げるラジオの深夜放送を、ワタシは期待しております。
そして、深夜から昼間へ、地方から中央へ。進化し続けるラジオパーソナリティについても応援しちゃいます。
やっぱり、どこの馬の骨だかわからない芸人さんや、曲を聞いたことのないアーティストがオールナイトニッポン2部に登場し、ファンの応援と共にスターダムを駆け上っていった、リアル育てゲーのようだった、あの時代が懐かしいのだよね。