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宝塚戦略 小林一三の生活文化論

著者:津金澤聡廣
発行元:吉川弘文館

 

目次

序 阪急沿線への散歩
1 楽園としての宝塚
2 情報・文化空間の創出
3 実業家、小林一三
4 清く正しく美しく
5 大正文化と宝塚モダニズム

 

感想

NHKの朝ドラ「わろてんか」で高橋一生が演じた伊能栞。東京産まれでありながら、関西屈指の実業家。鉄道や、遊園地、不動産開発や、映画を手がける伊能紹介には、モデルがあった。

 

それは、阪急グループ総裁の小林一三である。

 

箕面鉄道をベースに、鉄道、百貨店、宅地&住宅開発、そして興行までも行った小林一三率いる阪急グループ。

 

彼は日本における私鉄のビジネスモデルを作り上げた人物だ。東京の東急を率いた五島慶太小林一三へのリスペクトを隠さないし、西武、東武小田急、皆、阪急のやり方を参考としている。

 

私鉄は国鉄と違い、天下国家が運営するインフラではない。投資に対してリターンがあり、そのリターンを再投資することで企業が成長していく。

 

そのベースとなっているのが情報・文化の空間である、と。

 

職場のある都市と住居のある郊外を結ぶだけではない。沿線沿いに大学を誘致し、利用者のさらなる増加を狙う。宅地や住居が足りなくなれば、自社で開発や、分譲、賃貸を始める。

世帯数が沿線に増えれば、女性や子供も、必然的に増える。そんな女性に向けてターミナル駅にお買い得商品を並べ、アミューズメントとしても機能する百貨店を作る。さらに、郊外には家族で遊べるスポットを作る。

 

それが宝塚歌劇団で、宝塚戦略。

 

そして、小林一三の凄さはこのような経済圏を作り上げ、阪急だけが儲けようとしない、共栄の思想。電車賃で毎月五円使ってくださるのなら、家賃は相場に比べて五円安くしようという思想。

 

すげーな。

 

そういえば、高校野球も、最初は甲子園球場で開催されていたのではないのよね。阪急が仕切っていたから。高校野球の人気が出すぎて、巨大な球場が必要になったため、阪神甲子園球場に場所が変わった。それから、数年後、阪急は西宮に球場を作りました、と。

 

産業の勢いを表すプロ野球球団の流れ。特に関西以西では阪急以外に、近鉄阪神、南海、西鉄が球団を持ってましたな。東では国鉄、東急、西武と。

 

沿線に住宅地を開発し、ターミナルにデパート(てか、駅ビル)を併設し、遊園地や、大学までも、誘致する。

 

東横線に残る都立大学駅や、学芸大学駅という駅名。今は多摩川駅という名称に変わった多摩川園駅。

 

小林一三が作ったビジネスモデルは、いまも残り続けているのね、と。